「精神科の看護師を辞めたい」「別の診療科に転職しようかな」と考えていませんか。
患者との意思疎通の難しさや無力感から、「頑張ろうとは思うものの、もう限界かも」と疲弊してしまう看護師さんは少なくありません。
まず前提として、限界だと感じる状態で無理をし続けるのは避けるべきです。体力・メンタル的にもう無理と思うなら、退職するのが賢明でしょう。
ただ辞めたい理由によっては、勢いのままに転職しない方が良いこともあります。きちんと辞めたいと思う理由を見極めて、それに合わせて最善の選択をしましょう。
この記事では、精神科の看護師を辞めたいと思い悩んだときにどうすれば良いのか、元転職コンサルタントの経験をもとに解説していきます。
- 精神科の看護師を辞めたいと感じる8つの理由
- 精神科の看護師を辞めたいと思った時の対処法
- 精神科の看護師を辞める際の4つの判断基準
- 精神科の看護師を辞めた場合のお金の不安・疑問を解決
- 精神科の看護師を辞めると決意した後に取るべき3つの行動
- 別の診療科に転職するなら登録しておきたい転職サイト
この記事を読めば、精神科の看護師を辞めたいと考えている皆さんにとって、これから取るべきアクションが明確になるでしょう。
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1.精神科の看護師を辞めたいと感じる8つの理由
精神科看護師・職員を対象にした複数の調査を分析すると、精神科ならではの辞めたい理由が明らかになってきました。
「精神科看護師のストレス調査(精神科看護師のストレス要因とその対処行動)」や「精神科勤務経験のある看護師さんの体験談」を分類すると、精神科ならではの辞めたい理由が明らかになってきました。
- 1-1.人手不足で負担が大きい
- 1-2.給与が少ない
- 1-3.患者さんの言動・思考に引きずられ、自分も病む
- 1-4.患者さんからの暴言や暴力
- 1-5.キャリアの幅がどんどん狭くなると感じる
- 1-6.職場の方針と自分の考え方が合わない
- 1-7.業務量が多く、身体的に疲れる
- 1-8.職場の人間関係に疲れた
それぞれ詳しく紹介します。
1-1.人手不足で負担が大きい
精神科看護師の辞めたいと思う大きな理由が、業務負担の大きさです。これは人手不足が主な原因と考えられます。
出典:Twitter
病院における看護師の配置は厳格に定められているものですが、実は精神科には特例があり、他の診療科よりも少なくて良いとされているのです。
実際、看護師の数は他の診療科の2/3ほどに抑えられてしまっていると言われています。
急速に精神病床を増加させるために政府は、「精神科特例」で医師や看護師等の配置を少なくて良いと定め、精神科病院に国庫補助規定を設けるなどで民間経営の病院建設を推進しました。
(中略)看護師・准看護師については2/3と規定されています。しかし、精神科病院は心の健康問題を扱うため、患者の視点に立った医療・看護が行える人員体制が必要であり、精神科病院は本来一般病院より多くの人手が必要な病院です。
引用:日本医療労働組合連合会 精神部会『精神科医療のあり方への提言』
日本医療労働組合連合会が、精神科病院で働く職員を対象にしたアンケート調査では、3人に1人が人手不足を課題視していました。
人手不足により「十分な看護サービスが提供できない」「休みが取れない」「残業が多い」など、副次的な問題も起こっているようです。
1-2.給与が少ない
精神科看護師の中には、給与の少なさに不満を抱いている人もいます。
精神科は他の科よりも診療報酬が低く設定されていることが、背景として考えられます。
事実、前述の日本医療労働組合連合会の調査では、看護師の4人に1人(25.9%)は給料が安いと感じているという結果が出ています。
ただ、精神科看護師が他の診療科より著しく給与が低いという調査事実は特になく、実際のところは「病棟より夜勤が減って手当分がない」「仕事内容がキツイのにそれに見合っていない」など、業務負担に対して給与が割に合わないと感じているというのが実情のようです。
1-3.患者さんの言動・思考に引きずられ、自分も病む
精神科の看護師の中には、精神疾患のある患者さんの言動思考に引きずられて、自分も病んでしまうというケースが多々あります。
精神科はこころのケアがメインなので、精神疾患を抱える患者さんと日常的にコミュニケーションを取りますが、特に共感性が強い人ほど、周囲の負の感情が伝播してしまいます。
また、仕事に対して適度な距離を保てない人は、プライベートの時間まで引きずってしまうこともあるでしょう。
実際に、精神科勤務経験者にお話を伺うと、患者さんとの関わりの中でメンタルの不調に陥ったそうです。
新卒で入ってから辞めるまでの2年間で、病んで退職する人は毎年2,3人はいました。その数字を多いととるか、少ないととるかは別ですが、病む理由が「患者さんに影響された」なので、他の科とは違う精神科看護師ならではの過酷さがあります。
私自身、周囲からは「共感力・寄り添う力がある」と言われることも多く、精神科医療が面白かったのですが、不眠・躁鬱などの症状を自覚し、自ら退職しました。その後は違う病院の整形外科に転職し、今は普通に働けています。
この方は、不眠症状が出るようになり、以下のような行動を取ってしまったそうです。
- はじめは「寝付けない日が続く」と感じて、病棟で廃棄される睡眠薬をもらい、自分で飲み始めた
- 軽い薬でもぐっすり眠れたが、夜勤などが続くと、また眠れなくなってしまい、どんどん強い薬にも手を出すようになった
- ある日、職場で嫌なことがあった時に、家に帰って睡眠薬とアルコールを一緒に飲んでしまい、「このままだと私死ぬかも」と思い退職を決めた
睡眠薬とアルコールは一緒に飲むと作用増強するので、併用禁忌です。これは看護師の常識ですが、この方は、「分かっていつつもすべてがどうでもよくなって飲んでしまった」とおっしゃっていました。
このように、「併用禁忌と分かっていながらも、アルコールや薬に頼ってしまう」など、平常ではいられなくなる人もいる過酷な現場であることが伺えます。
1-4.患者さんからの暴言や暴力
精神科ならではの辞めたい理由として、患者さんからの暴言や暴力が日常茶飯事に起こることが挙げられます。
感情のコントロールが難しい
特殊な例ですが、2013年、精神科外来で医師が患者を診察中に患者に刺されて亡くなったという事件も発生しました。(参考:診察室で医師刺殺の疑い 北海道・三笠、患者を逮捕)
ここまで発展するケースはなくても、暴力や暴言は日常的で、その頻度は他の診療科と明らかに異なります。
1-5.キャリアの幅がどんどん狭くなると感じる
精神科の仕事で、他の診療科で行うような看護業務を行う機会は、相対的に少ないです。
もちろん拒食患者への点滴や鎮静注射などの機会はありますが、一般科の看護師ほどありません。
そのため、長期的なキャリアを考えたときに、「他の病院に転職しにくくなるのではないか」「辞めるなら早いうちの方がいいのではないか」と考える方もいるようでした。
出典:Twitter
また、以下のような「精神科看護師は使えない」という厳しい意見もありました。
出典:Twitter
1-6.職場の方針と自分の考え方が合わない
職場の方針と、自分の倫理観が合わない場合に、辞めたいと感じる人は多々いらっしゃいます。
病院の方針や理念に賛同できるかは非常に大切です。ただ就職や転職の際は意外と目を向けることがないため、実際に働き始めてから考えに気づくことが多いようです。
フリーランスで自由にやる方が 自分に合ってるなって思うw 髪の毛もピアスも自由にできないのがストレスなだけって説もあるけどなw
出典:Twitter
自分の理想とする医療倫理と病院の方針の差が、辞めたいという気持ちに繋がることもあります。
ちなみに精神疾患を抱える患者さんを専用のベルトで拘束するといった対処を行う日本の病院は、諸外国の数百~数千倍ともいわれています。(参考:『「身体拘束」に「幽閉」…日本の精神科病院の“深すぎる闇” 元患者や遺族が語る残虐性』)
1-7.業務量が多く、身体的に疲れる
精神科は一般科より身体的に楽だと思われがちですが、それは職場での担当業務次第です。
患者さんとコミュニケーションを取りながらきちんと服薬管理まで行うのは骨が折れますし、暴れる患者さんを抑えるような力仕事もあります。
精神科の看護師のストレス要因について書かれた論文では、精神科の看護師が身体的に疲れる理由として以下の様に綴られています。
『入院中の精神疾患を持つ高齢者にも、移動や排泄などの日常的生活援助が必要であり、これらの援助を必要とする患者が増加している現状から、精神科の看護師も身体的負荷がストレス要因となっている』
このような背景から、精神科看護師は他の診療科よりも男性の数が多いと言われています。
このように、精神科の看護師は、一般病棟の看護師と同じか、それ以上の業務も行っているため、身体的にも疲れるのは当然です。
1-8.職場の人間関係に疲れた
どの診療科でもそうですが、看護師が辞めたいと思う理由でよくあるのが「人間関係の悩み」です。
精神科でも、一定数職場の人間関係で悩んでいるという人はいます。
苦手な人、怖い人などと一緒に仕事をしないといけない
ただし、他の診療科と比べて、精神科の看護師は人間関係の悩みを持ちづらいです。
これは精神疾患を抱える患者さんとやり取りをするという仕事柄、他の科よりも人当たりが良い人が多いからです。また男性が多い職場なので、女性だらけの空間になりにくいのも要因の一つと考えられます。
2.精神科の看護師を辞めたいと思った時の対処法
精神科看護師を辞めたいと思った場合は、以下の方法を試してみてください。
- 2-1.『患者さんのネガティブな思考が伝染する』と思ったら感情のコントロールを試みる
- 2-2.『職場の方針と自分の考え方が合わない』と思ったら転職を検討する
- 2-3.疲労回復を試みる
- 2-4.『職場の人間関係に疲れた』と思ったら考え方を変えてみる
自分に当てはまる箇所をタップしてみてください。
順番に説明していきます。
2-1.『患者さんのネガティブな思考が伝染する』と思ったら感情のコントロールを試みる
患者さんの気持ちに寄り添う際にいくつかのポイントに注意することで、自分の思考までネガティブになることを避けることができます。
以下は、このケースへの対処法に関する滋賀県立大学人間看護学部の牧野 耕次さんの論文の要約です。
精神科看護には、患者さんと関わりにより「巻き込まれ」という現象が起こる。巻き込まれには二つの種類がある。「意図せぬ巻き込まれ」と「主体的巻き込まれ」である。
両者の違いは、患者との距離感を考えながら行動できることで、自身の行動が患者へどのような影響を与えるか、看護師の範疇を超えた関わりをしていないか、などを経験的に判断して行動している点である。
主体的巻き込まれは、患者と関係を作る上で重要であり、それにより危機の時に有意味にコミュニケーションをし、その人を支えることができる。
引用:精神科看護における看護師の「巻き込まれ」体験の構成要素とその関連要因
このように、巻き込まれは悪いことではなく、むしろコントロールできればより良い看護ができるとのことでした。
上記の記事をまとめると、主体的巻き込まれができるようになるには、以下の8つポイントが必要であるとわかりました。
主体的巻き込まれができるようになる8つの方法 |
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また、児童精神科で働いた経験のある看護師さんに話を伺ったところ、「患者さんの感情はしっかり受け止めるが、最終的に看護記録などに書き出すことで”受け流す”」というスタンスお仕事をされていたそうです。
なので、一生懸命話しを聞きます。担当の勤務時間内で、可能な限り時間を割きます。(5分でも10分でも、時には時間外でも)
声かけは「そうだったんだね」「そんなことがあったんだね」等の受け止めを行いますが、それ以上は何も言いません。
ですが、話してくれた内容は、そのまま看護記録に書き、書きながら脳内から排出するイメージで、受け流してました。そうしないと、患者さんの感情にのまれてしまい、こちらがメンタルの調子を崩してしまうからです。
なお、看護師が抱えるストレスの対処法についての記事もございますので、以下も参考にしてください。
関連記事
≫看護師の仕事はストレスだらけ!プレッシャーの原因とストレス解消法
2-2.『職場の方針と自分の考え方が合わない』と思ったら転職を検討する
病院の方針と自身の持つ医療倫理にギャップがあり、心理的に働くことがきついと感じた場合には、病院を変えるほか、選択肢がありません。
病院側の考えも、皆様の考えも、どちらも多面的に見れば間違いではなかったりするためです。
あなたの倫理観と同じ倫理観の病院は、探せば必ず見つかりますので、この場合は、共感できる方針を定めている病院を探すことが一番の最善策です。
2-3.疲労回復を試みる
体の疲れ回復に一番おすすめなのが、軽く汗を流す程度の運動です。
これはアクティブレスト(積極的な休養)と呼ばれており、あえて体を動かす疲労回復法です。
体を動かすと血流が改善し、老廃物を排出しやすくなります。
疲労回復メカニズム
老廃物を運び出す役割は血管の静脈が担うが、筋肉の動きが悪くなると、静脈の流れが悪化(静脈は筋肉のポンプ機能で動く)。むくみの原因にもなる。
→筋肉をあえて動かし静脈の血流を促すと、老廃物が排出されやすくなる
また、無理のない運動を続けると、精神の安定や平常心の保持、頭の回転の速さなど、脳内を活発化する脳内物質であるセロトニンの量が増えます。
セロトニンは精神安定剤と似た分子構造をしており、セロトニンの分泌は女性ホルモンとも連動しているため、身体的疲労の回復に加え、精神的な安定も得やすくなります。
また『看護師はもう疲れた!限界寸前な毎日を今すぐ抜け出す科学的な対処法』では、科学的に実証された疲労回復方法を紹介しているので、参考にしてください。
2-4.『職場の人間関係に疲れた』と思ったら考え方を変えてみる
対処法の一つとなりますが、苦手な相手とも良好な関係を築く方法は心理学で確立されていますので、明日からすぐに実践できる工夫を以下にまとめます。
円満な人間関係を築く心理学的テクニック
1.相手との共通点を見つける
人は共通点を持つ相手に親近感を覚えます(類似性の法則)。
相手の話に耳を傾けて、自分と共通する部分があれば、積極的に自己開示してみると良いでしょう。
2.周囲に自分から話しかける
人は好意を示してもらった相手に好意を持つと言われています(好意の返報性)。
良好な関係を築きたいという意思を示す意味でも、積極的に自分から話しかけてみると良いでしょう。
3.ポジティブな感情を表情に出す
自分は好意的に接しているつもりでも、表情に出ていなければうまく伝わらず、良好な関係が築けないケースもあります。
例えば「嬉しい」と言っているのに表情が曇っている場合、受け手は視覚情報=表情を重視して「嬉しくないのでは」と捉えてしまいます(メラビアンの法則)
4.人間関係はある程度のところで割り切る
必要以上に周囲と仲良くしようと考えず、「仕事上で必要不可欠なやり取りができればOK」くらい割り切って考えるのも大切です。「自分ではコントロールできないものに一喜一憂しない」という考え方で、アドラー心理学では課題の分離と言われています。
苦手な人が居たとしても、他人の行動は変えられません。無理になんとかしようとせず、自分のペースを乱されないようにある程度距離を取って、最低限のやり取りで仕事に集中してみましょう。
まずは自分でできる工夫を試みて、それでも職場環境に改善が見られないようであれば、素直に転職を検討するのがおすすめです。
また『看護師の人間関係の悩みに効果抜群!心理学にもとづく6つの改善策』の記事も参考になりますので、ぜひ読んでみてください。
3.精神科の看護師を辞める際の4つの判断基準
ここまで、辞めたいと感じた時の対処法について紹介してきましたが、いくらストレスコーピングをしても、辞めたいという感情がなくならない方はいると思います。
「でも、今辞めていいのかわからない」という方に向けて、この章では、辞める際に気を付けたい4つの判断基準を紹介します。
以下の4つの項目のどれか一つでも満たしている方は、現在の職場の退職を考えても良いでしょう。
自分に当てはまる箇所をタップしてみてください。
順番に説明していきます。
3-1.現在の職場の労働環境が悪い
職場環境が客観的に見て著しく悪い場合も、改善されることはほとんどないので、辞めるべきであると言えます。
客観的に職場環境が悪いと言えるケース
- 残業
- 残業代が支給されない
- 30時間以上の残業が毎月ある
- 夜勤
- 三交代制で月9回以上ある
残業
残業や夜勤は看護師が辞めたいと思う要因です。残業代が支給されない(申請できない空気がある)はもちろん、残業が常態化している場合も、かなり悪い環境と言えます。
事実、看護師の87 %は月残業30時間未満のようです。これを超える看護師はかなり少数であり、客観的に見てもかなり残業が多い職場と言えるでしょう。(参考:メディカルサポネット『看護師白書2020年度版』)
夜勤
夜勤回数も三交代制で月9回以上が続くようなら、体力的にキツイ職場と言えます。
「看護職の夜勤・交代制勤務ガイドライン」では、夜勤回数は、3 交代制勤務の場合月 8 回以内を基本とすると定められており、9回夜勤を行った人は全体の2%です。(参考:「安全,健康,生活を念頭においた看護師の 1ヶ月72時間夜勤規制に関する研究報告書」)
3-2.現在の職場が原因で体調に支障をきたしている
体調やメンタルに異変が生じている場合は、辞職を検討するのがおすすめです。
要注意なストレス症状
- 気分が沈む、憂うつ
- 何をするのにも元気が出ない
- イライラする、怒りっぽい
- 理由もないのに、不安な気持ちになる
- 気持ちが落ち着かない
- 胸がどきどきする、息苦しい
- 何度も確かめないと気がすまない
- 周りに誰もいないのに、人の声が聞こえてくる
- 誰かが自分の悪口を言っている
- 何も食べたくない、食事がおいしくない
- なかなか寝つけない、熟睡できない
- 夜中に何度も目が覚める
実はこれは、心の病気の初期症状と言われている症状です。(参考:厚生労働省『こころの病気の初期サインに気づく』)
この状態を放置し、無理をして働き続けるのは非常に危険です。心身の状態が悪化してしまえば、身体を壊して病院を辞めることになったり、再就職が難しくなったりと、あなたの人生・キャリアにマイナスな影響を与えます。
特に精神科の仕事は、患者さんの感情にのまれて自身もメンタルの調子を崩しやすいので、こういった場合はためらわず退職をした方が賢明です。
3-3.他にチャレンジしてみたい仕事がある
他にチャレンジしてみたい仕事が明確なら、退職に踏み切ってみても良いでしょう。その場合は、すぐに退職するのではなく、今の病院に勤務しながら転職活動をするのがおすすめです。
他の環境・仕事へチャレンジ
- 看護師として働く場を変える
精神科から、一般病棟や訪問看護、介護施設に転職 - 全く別の仕事をする
看護師資格を活かして一般企業で働く
いずれの場合でも、原則的には「今の病院に勤めながら、次の職場を探す」ことを推奨します。
3-4.現在の職場にやりがいを感じない
現在の職場にやりがいを感じない方に退職を勧める理由は、以下の2つです
- 患者さんを命の危機に晒すミスをする可能性があるから
- やりがいを感じる職を探した方が時間を有意義に使えるから
やる気が出ないときは、集中力も低下するため、ミスが多くなります。特に精神科では、同じ薬でも一般科より多量の服薬をすることも多々あるため、その様なミスが、直接命に係ることもあります。
患者さんを危険に晒さないため・自分が医療事故の当事者にならないためにも、「全くやりがいを感じず、集中できない」なら職場を離れることをおすすめします。
4.精神科看護師を辞めた場合のお金の不安・疑問を解決
「精神科看護師をできることならすぐ辞めたいけど、生活のことを考えるとそう簡単には退職できない」と悩みますよね。
次の職場を決めてから退職すれば、収入が途絶えることはありませんが、「次の仕事のことは今すぐに考えられない」「いったん充電期間を設けたい」という方も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、以下の2点を満たす方なら、最低限の生活費(3~5カ月)は工面できます。
- 失業手当の受給資格がある(離職日以前の2年間に「被保険者期間」が12ヶ月以上ある)
- 最低でも3ヶ月分の生活費がある
退職金の支給があれば、更に離職期間を延ばせます。
ただ失業手当の受給要件・期間は人によって違い、更に退職後に思ったより支出が必要なこともあるので、「もし辞めたら、自分の生活はどう変化するのか」を金銭的な観点で入念に確認しておきましょう。
本章では、退職後のお金の不安・疑問について詳しく解説していきます。
できる限り、在職中に転職活動をして、転職先が決まってから辞めることをおすすめしています。なかなか次の仕事が決まらないと焦ってしまい、妥協せざるを得なくなる可能性があるからです。ブランクが長くなると採用に不利になります。
転職活動のことまでは考えられないという方は、まずは仕事探しの準備(転職サイト・エージェントに登録など)だけでもしておくことをおすすめします。
4-1.辞めたいと思ったら、まず「退職金」「賞与の支給日」を再確認
精神科看護師を辞めたいと思ったら、まず「退職金」「賞与の支給日」を再確認してみてください。いずれも就業規則に記載されているはずです。
退職金は一度にまとまったお金を受け取れるので、辞めた後の生活にゆとりを持てます。退職金の支給条件を一度確認し、「もう少し働けば受け取れる」という場合は、待ってみるのがおすすめです。
退職金の支給条件は職場によって異なりますがが、自己都合退職の場合、最低3年勤続していれば支給されるケースが多いようです。事実、東京都産業労働局の調査では、中小企業の約半数が退職一時金の最低勤続年数を3年と定めています。(参考:中小企業の賃金・退職金事情 令和二年度版)
また、賞与支給のタイミングが近いなら、「ボーナスを受け取ってから辞める」方が金銭的なメリットが大きいです。注意点として、賞与額決定の前に退職の意思表示をしてしまうと、減額されたり受け取れなくなったりする可能性があるので気を付けてください。
4-2.「失業手当の申請」をすれば最低限の生活費は工面できる
「失業手当の申請」をすれば、最低限の生活費は工面できます。
失業手当は、仕事を辞めた人に対して国から支払われるお金で、以下の条件を満たせば誰でもハローワークで申請できます。
失業手当を受け取れる条件
- 再就職しようという意思があること
- 離職の日以前2年間に、「被保険者期間(雇用保険に入っていた期間)」が通算して12か月以上あること
月々の給料から引かれるお金の中に「雇用保険」がありますが、これが引かれていた月が過去2年で12カ月以上あれば、申請可能です。(同じ職場でなくてもOK)
いくら受け取れる?
失業手当額は、離職前の給与の50~80%ほどです。
参考までに、離職前の給与と失業手当の目安金額をまとめました。(離職時の年齢や給付率によって変動します)
離職前の給与 (月収) | 月々受け取れる失業手当 (目安) |
15万円 | 11万9,000円 |
20万円 | 14万5,000円 |
25万円 | 16万5,000円 |
30万円 | 17万7,000円 |
35万円 | 18万3,000円 |
40万円 | 19万9,000円 |
※CASIO『生活や実務に役立つ計算サイト』にて25~30歳、被保険者期間5~10年で試算
何か月支給される?
失業手当の給付期間は、雇用保険の加入期間によって、90~150日の間で変動します。
雇用保険加入期間 | 1年未満 | 1年以上、10年未満 | 10年以上、20年未満 | 20年以上 |
給付日数 | なし | 90日 | 120日 | 150日 |
端的に言うと、勤めていた期間が長い人ほど、より長い期間、失業給付金を受け取れます。
ただ、退職後すぐに給付金を受け取れるわけではありません。
失業手当の受給には、まず申請後7日間の待期期間があり、自己都合退職の場合は、その後さらに給付制限期間(自己都合退職なら2カ月)が設けられます。そのため、その間の生活費は自分で工面しなければなりません。
4-3. すぐに辞めたいなら3ヶ月分の生活費は必須
精神科看護師をすぐに辞めたいなら、最低でも3ヶ月分の生活費が必須です。というのも前述の通り、失業手当の受給には早くても3ヶ月かかるからです。
失業手当は早くても3か月後の支給になる
- 申請に必要な書類が届くまで:2週間程度
- 待期期間:7日間
- 給付制限期間:2カ月(自己都合退職の場合、すぐには受け取れない)
ただ3ヶ月分というのはあくまで最低ラインで、理想は半年~1年分です。次の仕事がすぐ決まれば問題ありませんが、半年以上かかることも珍しくないからです。
特に若年層(20代前半)や、ミドル層(40代後半以降)は、長引く傾向にあるので、生活費の準備は余裕を持っておくべきでしょう。
失業保険について詳しくは『自己都合退職で失業保険受給をするための全知識』の記事を参考にしてください。
4-4.年金の支払いは免除申請できる
退職後は厚生年金から国民年金に切り替わり、年金の支払いは続きますが、特例として失業者は免除できる仕組みがあります。
一般的に年金支払いの免除は前年所得を基準にした審査がありますが、仕事を辞めた場合は「所得を考慮せず」に審査されます。退職理由なども問われないので、比較的スムーズに免除してもらえるでしょう。
更に免除申請により、保険料は全額免除になりますが、満額の納付と比較して1/2を納付したのと同じ扱いをしてもらえるのでお得です。(※満額を払い続けていた人と比較すると、若干将来受け取れる年金額は目減りします)
詳しくは『誰でも使える退職時の年金の全知識』の記事を参考にしてください。
なお、退職時は健康保険の切り替え手続きも必要です。どんな手続きをするのかについては、『5分でわかる退職時の健康保険全知識』で解説しています。
補足:一度退職してから、次の仕事を決めるまでの流れ
精神科看護師を辞めて、ゆっくり仕事を探したいという方は、以下の流れであれば経済的な懸念を最小限に再就職できます。
なお、失業手当受給期間中に再就職が決まった場合、失業手当はストップとなりますが、条件を満たせば代わりに再就職手当を受け取れます。(早く転職が決まるほどお得)
詳しくは厚生労働省ホームページを参考にしてください。
5.精神科の看護師を辞めると決意した後に取るべき3つの行動
ここまでで、皆さんが今の職場をやめるべきなのかがわかったと思います。
また、辞めることを決意した方の大多数が、次の仕事を見つけなければならないと考えるでしょう。
そのような方々には、以下の3つの選択肢があります。
それぞれのメリットについて、順番に紹介します。
5-1.異動の相談をして、無理なら別の病院に転職する
辞めたいと思ったときは、いきなり退職届を出すのではなく、まずは「異動できないかどうか相談してみること」をおすすめします。
一般科では、精神科に比べてメンタルの安定している患者さんが多く入院しているため、患者さんに巻き込まれて精神を病んでしまう事態が減ります。また違う科に行くことで感じ方が変わったり、気持ちを切り替えられることもあるでしょう。
異動の相談をした際、柔軟に調整してもらえるケースは実は意外と多いです。
なぜなら、病院側としても、すぐに退職されるよりは部署異動などで調整して勤務を継続してもらった方が助かるからです。(看護師の採用はかなりコストがかかるので、多少調整が難しくても辞められるよりマシ、というのが病院側の本音です)
異動については、まずは直属の上司に打診しましょう。そうすると上司からさらに看護部長に話が進み、人員の状況などを鑑みて問題なければ対応してもらえます。
ちなみに、辞めたいと思ったときは「いまの環境が辛いです」「しんどくてご飯も食べられなくて」のようなニュアンスで相談するのがおすすめです。いきなり退職をほのめかさない方が賢明です。
異動が難しい場合は、他の病院に転職し、一般病棟で働くという選択を取ると良いでしょう。
5-2.病院以外の職場を検討する
前述した看護師さんの悩みの中で、病院以外に転職することで解決できるものもあります。
例えば患者さんとの密接な関わりなどは、病院以外であれば悩むことも少なくなるでしょう。
病院以外の職場一覧
- 一般のクリニック
- 健診センター(労働衛生機関)
- 保育園
- 児童養護施設
- 大学の保健室
- 治験医療機関
- 企業(産業看護師)
- 訪問看護ステーション
- 介護施設
病院以外であれば夜勤や命に関わるような業務もなく、ストレスがかかりにくいです。
病院以外の職場については『病院以外に転職したい看護師に人気の職場一覧【夜勤なし&高収入も可】』を参考にしてください。
5-3.他職種へ挑戦する
看護師という職種そのものにモチベーションがないという方は、全く違う仕事に転職するのも一つの方法です。
看護師からの転職に多い職種
- 営業職
- 事務職
- 美容関連職種
- 販売・サービススタッフ
- 医療事務
- 治験コーディネーター
- 看護専任教員
働くモチベーションが低下した場合には、全く別の仕事も考えてみてください。
その他おすすめの転職先と、職種別転職サイトに関しては「看護師から転職できる他職種って?おすすめの転職先や転職サイトを紹介」をお読みください。
6.別の診療科に転職するなら登録しておきたい転職サイト
数ある転職サイトのなかから、以下を基準に、「利用者からの満足度の高い看護師向け転職サイト」をピックアップしました。
転職サイト選定基準
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この記事では3サイトに厳選しています。より詳しく知りたい方は、『看護師723人が選ぶ転職サイトおすすめランキング』を参考にしてください。
1位.看護roo! | 看護師さん利用者満足度No.1
『看護roo!』は、転職経験のある看護師さんから最も選ばれている、人気No1の看護師転職サイトです。
登録者のみが閲覧・応募できる非公開求人も多数保有しています。
看護roo!の特徴
- 利用者満足度96.3%
- 公開求人55,907件+非公開求人も多数
- 面接同行や選考対策など手厚いサポート
さらに、細かい条件を組み合わせて仕事探しができるため、希望にぴったりの求人を見つけやすくなるでしょう。
『看護roo!』は、30年以上に渡る転職支援実績のある株式会社クイック(東証一部上場企業)が運営するサービスです。
信頼と実績も十分で、面接時に希望者には専任の女性スタッフが同行してくれるなど、きめ細かいサポートが魅力といえます。
こんな看護師さんにおすすめ
- みんなが使っていて、実績豊富な人気のサイトを利用したい
- 給与や条件、人間関係などが良い職場情報を知りたい
- はじめての転職で不安なのでプロに相談したい
2位.レバウェル看護(旧 看護のお仕事) | 求人多数で選択肢の幅が広い!
『レバウェル看護(旧 看護のお仕事)』は、求人数がトップレベルの転職サイトです。キャリアアドバイザーが、病院や施設を訪問して直接取材を行っており、現場のリアルな情報を提供しています。レバウェル看護(旧 看護のお仕事)の特徴
- 累計利用者数40万人以上
- 友だちに勧めたい転職サイトランキングNo.1
- 総求人数は135,763件と転職サイトトップレベル
「人間関係や施設の雰囲気はどうか」「子育て中の看護師が働きやすい環境か」などの情報を踏まえて、最適な提案をしてもらえるのもポイントです。
また、LINEで「新着求人情報が届く」「担当のキャリアアドバイザーに相談できる」など、気軽に転職活動ができる点も魅力的といえます。
こんな看護師さんにおすすめ
- できるだけたくさん求人が見たい
- 職場の雰囲気や内部情報を知りたい
- 気軽に求人探しがしたい
3位.マイナビ看護師|ペースに合わせて転職できる
『マイナビ看護師』は、大手人材企業マイナビが運営する定番の転職サイトです。数週間で内定を目指す「スピード転職」や、数ヶ月に渡ってゆっくりと職場を探す「じっくり転職」など、求職者の都合に合わせたスピード感でのサポートをしてくれます。
マイナビ看護師の特徴
- 看護師認知度5年連続No1の定番転職サイト
- 求人数は6万件以上
- 大手マイナビならではの情報ネットワークも強み
加えて、面接の日程調整なども、キャリアアドバイザーが代行してくれるサービスも提供しています。自分のペースで転職活動を進めるのに最適な転職サイトといえるでしょう。
こんな看護師さんにおすすめ
- なるべく早く次の仕事を見つけたい
- 数ヶ月かけて余裕を持って転職活動したい
さいごに
いかがでしたでしょうか。
精神科という独特の領域で働く以上は、同じ看護師の知り合いにも、なかなか理解してもらえない悩みもあるでしょう。一度じっくり見つめなおし、今後のキャリアを考えてみてください。
必要があれば職場を変えるのもおすすめです。看護師の転職のやり方については、『【決定版】看護師転職の方法・手順と求人を自分で探すやり方』を参考にしてください。
皆さんの今後の健闘を心から願っております。