「看護師の仕事はストレスだらけ」
「辛くてどうしていいかわからない」
とお悩みですね。
看護師は、医師の指示通りに動くだけではなく、患者さんひとりひとりに寄り添い献身的なケアを提供します。患者さんの生命と向き合いながら仕事をしているので、強い緊張感からストレスを感じてしまいますよね。
しかし、治療やケアが必要な患者さんの前では弱音を見せることは許されず、ご自身の感情をコントロールしながら働くことに限界を感じている方もいるでしょう。
厚生労働省の調査によれば、看護師はストレス強度が高くメンタルヘルスケアが欠かせない職種であるといわれています。(参考:厚生労働省|令和2年度 過労死等の労災補償状況)
しかし、現場の看護師への配慮は不十分であり、過酷な労働環境で働く方も多いのが現実です。
患者さんに尽くす職業だからこそご自身を労わることは重要ですが、日々の業務に追われてしまい、セルフケアまで気が回らない方がほとんどでしょう。
そこでこの記事では、多くの看護師の相談に乗ってきた私が、看護師のストレスの原因や効果的なストレスの解消方法について、以下の流れで解説します。
- 看護師がストレスを感じる8つの原因
- ストレスのメカニズムと3つのストレスコーピング
- ストレスへの捉え方を変える|感情面へのアプローチ5選
- ストレスを解消する|行動面へのアプローチ6選
- やって後悔…ストレスを感じても止めておきたい4つの行動
- 根本的な解決を求めるなら転職も考える
この記事を読めば、仕事のストレスとの付き合い方や対処法がわかり、あなたに合ったストレスの解消法が見つかるでしょう。
[simple-author-box]1.看護師がストレスを感じる8つの原因
仕事をしていると、どうしてもストレスを感じてしまう場面は多くありますよね。
とくに看護師は求められるスキルが多く、仕事の質が患者さんの生命に直結することもあるので気が抜けません。そのため、仕事が終わる頃にはドッと疲れてしまう方もいるでしょう。
この章では、そんな看護師がストレスを感じる8つの原因をご紹介します。
- 1-1. 人間関係
- 1-2. 夜勤や残業などの労働環境
- 1-3. 患者さんの対応
- 1-4. 責任の重さ
- 1-5. リリーフやオンコールなどの勤務体制
- 1-6. 給料の低さ
- 1-7. 仕事量の多さ
- 1-8. 感染症への対策・対応
順を追って見ていきましょう。
1-1. 人間関係
看護の現場では、人間関係のストレスを感じる場面が多くありますよね。
どの職場にも必ずといっていいほど、嫌な上司やトラブルメーカーの同僚など、悩みの種になる人がいるものです。
先輩に怒られストレスに
仕事を習得するにはある程度の時間が必要ですが、必要以上に怒られたりプレッシャーをかけられたりすると、強いストレスを感じてしまいますよね。
ほかにも、医師との意見が食い違い悩んでいる方もいます。
医師との意見の食い違いに悩む
とある患者さんの治療方針で、医師と対立した経験があります。
その方は先天性の心臓疾患で、小さい頃からA先生と共に治療に励んできており、本人も家族もA先生を信頼していました。
ある時、体調悪化により入院することになり、心臓に負担をかけないように厳しい水分制限が決められました。最初は患者さんも治療に協力的でしたが、体調が悪くなるにつれ「思いっきり水が飲みたい」と訴える日が増えました。
しかし、A先生は「まだ治療の余地はある。〇〇さんの命を諦めるのか?」と言い、薬剤の投与を続けて…。看護師がどれだけ患者さんの気持ちを代弁しても、A先生は機嫌が悪くなるだけ。関わるだけで、ストレスでした。
結局、入院から1カ月も経たず患者さんは亡くなり…無力感や後悔が残りました。。
看護師が仕事をする上でコミュニケーションは欠かせませんが、思いがけない対立に巻き込まれると、ストレスを感じずにはいられませんよね。
1-2. 夜勤や残業などの労働環境
労働環境が良くない職場で、ストレスを感じながら働いている方もいますよね。
とくに、看護師の場合は夜勤や残業の多さが問題視されており、悩まれている方も多いでしょう。
夜勤がストレス
残業しないと陰で言われる
世間一般では働き方改革やワークライフバランスが叫ばれていますが、医療の現場では過酷な労働環境で働く方も多くいます。
こうした労働環境を改善するためには、個人の努力ではどうにもならないことも多く、頭を悩ませてしまいます。
関連記事:看護師の辛い・キツイ夜勤の乗り越え方|どうしても限界な時の夜勤のない働き方
1-3. 患者さんの対応
患者さんへの対応でストレスを感じることもありますよね。
看護の現場では献身的な姿勢が求められますが、暴言や暴力を振るったり、ハラスメントをする患者さんの対応に苦慮している方もいます。
暴力は個人で対策するしかない
認知症の利用者さんが多い介護施設で、利用者さんに思いっきり頭を叩かれてビックリしました。
その方は認知症のせいで暴力が絶えず、他の職員や利用者さんも被害にあってました。
先輩に相談しても「あの人、手が出やすいよね。こっちが気を付けるしかないんだよね。」と言われ、職場は守ってくれないという現実に、さらにショックを受けました。
患者さんや家族から標的にされた
精神科領域の患者から「あなたは私をいつも睨んでくる」「夜道に気を付けたほうが良いですよ」と言われたことがあります。
なにかをした覚えもなく、不安と恐怖でストレスがやばかったです。
結局、担当医や師長さんが間に入ってくれて、その患者さんは退院し外来で継続治療をすることにしたようですが…。あんな体験は2度とご免ですね。
看護師は患者さんにとって1番近い存在ですが、それゆえやり場のない気持ちをぶつけられやすく、戸惑った経験のある方も多いようです。
1-4. 責任の重さ
責任の重さがのしかかり、ストレスを感じた経験もありますよね。
「小さなミスが命に関わるかもしれない」というプレッシャーは、想像以上のストレスに繋がっています。
救急外来の初療対応は責任重大
普通に歩いてきたりとか、車いすで外来の入り口から来た人が SAH(クモ膜下出血)だったりとか。
症状がそこで進行したりはなかったんだけど、なんか怖いなっていつも思ったり。責任という意味ではやっぱり一番最初に出会って、話聞いたのが自分だなっていうので、思ったりします
引用:松江市立病院医学雑誌|救急外来における看護師のストレスの実態
急患や急変対応の多い診療科では患者さんの命に直面する場面も多く、その責任は重大です。
また、看取りケアを行う看護師のなかにはストレスのあまり患者さんを避けてしまったと話す方もいます。
看取りケアを避けてしまうことも
人の死をそんなに間近で見たことがなかったからちょっと無意識,意識的,無意識かわかんないんですけど,ちょっとずつ避けてた部分があって
引用:南九州看護研究誌|一般病棟で終末期がん患者の看取りにかかわる
看護師には患者さんの生命を守る役割がありますが、医療のプロである前に一人の人間です。
責任の重さがストレスに変わると、仕事を続けるのが難しくなってくるかもしれません。
1-5. リリーフやオンコールなどの勤務体制
リリーフやオンコールなど、日によって勤務体制が変わるのはストレスですよね。
慣れない場所で仕事することや、常に緊急対応の準備をしなくてはならない状況が続くことで、ストレスを感じている方もいます。
急なリリーフに戸惑ってしまう
以前勤めていた病院では、4年目以上の看護師を対象に院内留学(リリーフ)が行われていました。
5年目だった私も当然対象だったのですが、朝出勤したら急に「10時から胸部外科に行ってきて」「午後から消化器内科のヘルプお願いね」と声かけられることが多く、正直戸惑いました。
せめて数日前に言ってくれたら、心の準備ができるのに…と何度思ったかわかりません。
人手不足のなかでのオンコール対応はつらい
リリーフやオンコールなどの業務では、臨機応変さ、要領の良さなどが求められることも多く、対応に一苦労することも多いでしょう。
1-6. 給料の低さ
業務量に見合った給料がもらえないと、不満が募りますよね。
看護師の給料は給与規定で決められている職場がほとんどで、頑張った分給料が増える訳ではありません。
そのことは理解できていても、業務量と給料のバランスが取れていないと「正当に評価してもらえない」と感じる方もいるのです。
どれだけ頑張っても給料に反映されない
通常業務はもちろん、残業、後輩指導、リーダー業務、看護研究、休日の勉強会…。
これだけやっても、ここ数年の昇給は年間数千円程度。
ストレスからネットショッピングで衝動買いが止まりません。
日本労働調査組合が行った調査では、看護師が仕事を辞めたくなった理由の第1位が給与や待遇への不満だという結果が出ています。(参考:日本労働調査組合|看護師の退職動機に関するアンケート)
看護師の仕事は数字だけで評価できるものではありませんが、やはり給料が低いとモチベーションが下がり、結果的に離職に繋がってしまうケースもあるようです。
1-7. 仕事量の多さ
仕事量が多く、負担が大きいとストレスを感じますよね。
とくに人手不足の職場で働く看護師は、一人では到底こなせない業務量を抱えており、苦労が絶えないようです。
リーダーしながらの後輩指導はキャパオーバー
後輩指導をしながらリーダー業務もこなすのは無理です。やることが多すぎて、ストレスがやばいです。
本当なら、後輩にも優しく接したいのに、余裕がなくてついキツイ言い方をしてしまいます。
中途採用なのに、即戦力を期待されて辛い
人手不足なのはわかるけど、中途採用は即戦力としてカウントしないでほしい。
たしかに経験が豊富な人もいるけど、場所が違えば誰だって戸惑うし、慣れるのに時間が必要です。
勝手に期待されて「○○できないの?」とか言われると、落ち込みます。転職してまだ日が浅いけど、早くもストレスが溜まってきています…。
やるべきことが多く忙しいと、仕事の質にも影響が出てしまいます。
仕事量の多さは個人でコントロールするのは難しく、疲弊しながら働いている方も多くいるでしょう。
1-8. 感染症への対策・対応
昨今の感染症流行で対策や対応に追われ、ストレスを感じている方も多くいますよね。
2020年の新型コロナウイルスの発生から、仕事内容や生活が一変したと話す看護師は多いです。
見通しの立たない不安がある
新型コロナウイルスが流行してから、仕事のストレスが増えましたね。
私たちがどれだけ感染予防を徹底していても、変異株が出たり、大きなイベントがあったりして感染拡大が何度も繰り返されているのを見ていると、終わりのない不安に疲れてしまいます。
ある調査では、コロナ患者に直接関わる業務に従事する看護師の9割以上がストレスを抱えながら仕事しており、とくに感染の恐れや業務量や業務内容の変化などにストレスを感じているという結果が出ています。(参考:レバレジーズメディカルケア株式会社|看護師実態レポート 2021年 ~新型コロナウイルス感染症拡大の影響~)
感染状況や変異株の出現、それらによって変化する政策や世論に柔軟に対応せねばならず、疲弊しきっている方もいますよね。
新型コロナウイルスは未だ収束の目途が立っておらず、今後も感染予防対策や陽性者対応は必要です。こうした見通しの立たない状況が、ストレスを増長させているようです。
ここまで、看護師のストレスの原因を8つご紹介しました。
しかし、原因がハッキリしていても、具体的な解決策がわからないとストレスは溜まる一方です。
そこで、次の章では「そもそもストレスとはなにか?」「ストレスに対処するにはどうしたら良いか」をご紹介していきます。
2.ストレスのメカニズムと3つのストレスコーピング
この章では、ストレスのメカニズムとストレスコーピング(ストレス対処行動)についてご紹介します。
ストレスとは外部からの刺激に対する心や身体の反応のことで、以下の3つの要素で構成されています。
引用:CANVAS|5分で理解!ストレスコーピングとは?
- (1)ストレッサー…ストレスのきっかけとなる出来事のこと。
例)上司に注意される、人間関係の悪化 - (2)認知…ストレスの捉え方のこと。評価や解釈などとも呼ばれる。
例)上司に怒られて辛い、人間関係が悪くてしんどい - (3)ストレス反応…ストレスを認知したことで起こる反応。
例)心の症状…気分が落ち込む、漠然とした不安がある、やる気が出ない、イライラする など
体の症状…食欲低下、体重の変動、夜眠れない、動悸、血圧上昇 など
行動の変化…周囲とコミュニケーションを避けたくなる、飲酒や喫煙が増える、落ち着きがない、身だしなみに興味がなくなる など
ストレスを放置しておくと、心身にさまざまな症状が現れ社会生活にも影響が出てしまいます。
こうした状況を打開するために大切なのはストレスコーピングです。
<ストレスコーピングとは>
ストレスに対処するための対処行動のこと。うまく活用できればストレスを軽減することができる。
ご自身に合ったストレスコーピングを行うことで、ストレスとうまく付き合えるようになるでしょう。
ただ、ストレスコーピングのご紹介をする前に、現時点でストレスにより心が傷つき、消耗し、限界を感じている方はストレスの原因から距離を置くことを優先すべきです。
ご存じのとおり、ストレスの感じ方は人それぞれで、同じストレスに遭遇しても「辛い」と感じる方もいれば、「挑戦しがいがある」「楽しい」と感じる方もいます。
「同期が頑張ってるし、私も頑張らなくちゃ」と気負いすぎた結果、ご自身の健康を犠牲にしてしまう看護師は多くいます。そうならないためにも、今感じているストレスを客観的に捉え、どうするのが最善な方法かをしっかり考えることが大切です。
何度も言いますが、ストレスの感じ方には個人差があり、他人と比べる必要はありません。
これから紹介するストレスコーピングをいくつか試しながら、ご自身に合ったストレス対処法を見つけていきましょう。
ストレス解消アプローチ | 小分類 | 方法 |
(1)問題焦点型 (ストレス原因をなくす) | 問題焦点型 | ストレスの原因を根本的に解決 (職場制度の改善、転職) |
社会的支援探索型 | 周囲の支援やサポートで解決 (上司・先輩への相談、外部機関のサポート) | |
(2)情動焦点型 (考え方をコントロールする) | 情動焦点型 | 感情を発散させる (同期に話を聞いてもらう、専門家のカウンセリングを受ける) |
認知的再評価型 | 無意識に生じている認知のゆがみを修正する (後輩指導が大変→指導を通して勉強できる など) | |
(3)ストレス解消型 (既にあるストレスを取り除く) | 気晴らし型 | リフレッシュできるような気晴らし (遊ぶ、美味しいものを食べる) |
リラクゼーション型 | リラックスできる行動を取る (ヨガ、瞑想、アロマテラピー) |
これら3つのストレスコーピングの中で、問題解決に最も有効なのは問題焦点型ですが、実現には時間やエネルギーが必要で取り組みにくいのが難点といえます。
そこで、次章からはセルフケアとして取り入れやすい「情動焦点型」と「ストレス解消型」の具体的なアプローチをご紹介していきます。
3.ストレスへの捉え方を変える|感情面へのアプローチ5選
まずは、情動焦点型のストレスコーピングを活用したアプローチ方法を5つ紹介します。
- 3-1. 家族や友人に思いを打ち明ける
- 3-2. 専門家のカウンセリングを受ける
- 3-3. 1日1分の瞑想を習慣化する
- 3-4. ネガティブな出来事をポジティブに捉えてみる
- 3-5. ストレスを感じたら「まあいいや」と言ってみる(オーウェル思考)
詳しく見ていきましょう。
3-1. 家族や友人に思いを打ち明ける
家族や友人に思いを打ち明けることで、ストレスや不安の軽減ができます。
「話しても解決するわけじゃないし…」と消極的な考えをお持ちの方もいるかもしれませんが、打ち明けることには様々なメリットがあるといわれています。
思いを打ち明けるメリット
- 気持ちの整理ができる
- 言葉にするだけで不安や苦しみが軽減する(カタルシス効果)
- 思いがけない発見が得られる
- 視点を変えて考えられる
- 視野が広がり、俯瞰できる
- 問題解決の糸口が見つかる可能性がある
このように、思いを打ち明けることはご自身の悲しみや苦しみを吐き出すことができるだけでなく、自分だけでは考えつかない知見を得られたり、気持ちの整理に繋がったりします。
ただ、思いを打ち明けることは自己開示にあたるので、億劫に感じる方もいるでしょう。
そうした方には、次に紹介する専門家のカウンセリングをおすすめします。
3-2. 専門家のカウンセリングを受ける
家族や友人に相談することに抵抗感がある方は、専門家のカウンセリングを受けてみるのも一つの手です。
前述の通り、思いを打ち明けることには様々なメリットがあるので、「家族や友人には話したくない」という方はプロの専門家に相談してみると、思いがけない結果が得られるかもしれません。
また、専門家はカウンセリングの専門知識をもとにアドバイスをしてくれるので、問題の解決に近付きやすくなるでしょう。
カウンセリングを希望する場合、精神科や心療内科などがおすすめですが、心理的ハードルが高く受診まで一歩踏み出せないという方もいらっしゃるかもしれません。
そんな時は、厚生労働省が運営する相談窓口案内を利用するのがおすすめです。
たとえば、SNS相談ではLINEで相談に乗ってもらうことができます。自動送信ではなく、担当者が一人一人の悩みに合わせて相談に乗ってくれるので、気になる方は一度試してみると良いでしょう。(参考:厚生労働省|こころの耳)
また、どんなに有名な専門家でも、治療やカウンセリングがあなたにピッタリとは限りません。
話してみて違和感や相性の悪さを感じたら、迷わずセカンドオピニオンをしましょう。
悪徳商法や詐欺に注意
専門家を名乗る人のなかには、弱みにつけこんで悪徳商法や詐欺行為をはたらこうとする人もいるので注意しなくてはなりません。
たとえば、金銭の要求をされたり、親しい家族や友人との交流を断つように言われたりした場合は、深く関わらないほうが身のためです。対応に困った時は、家族や友人、警察に相談することも検討しましょう。
3-3. 1日1分の瞑想を習慣化する
1日1分の瞑想を習慣にすることで、ストレス解消に繋がります。
ご存じの方もいるでしょうが、瞑想はマインドフルネス(今現在に意識を向けること)の実践に有効な手段なのです。
看護師として働いていると、失敗を引きずってしまったり、明日のシフトが苦手な上司と一緒で憂鬱になったりと、過去や未来のことを考えてストレスを増幅させてしまうことが多々あります。
そこで、過去・未来のことを考えすぎないようにする手軽な手段として、呼吸に意識を向けて心の状態を整える「呼吸瞑想」をおすすめします。
<呼吸瞑想のやり方>
- 背筋を伸ばして座る
- 4秒間かけて息をゆっくり吸い込む(おなかを膨らませながら)
- 8秒間かけて息をゆっくりと吐き出す(おなかをへこませながら)
- 何か別のことを考えそうになったら即座に呼吸に意識を戻す
- これを1~5分間繰り返す
まずは1日1分から始めて、習慣化させてみましょう。
3-4. ネガティブな出来事をポジティブに捉えてみる
ネガティブな出来事をあえてポジティブに捉えてみるのも効果的な方法です。
一見、強引な方法に思えるかもしれませんが、最近の研究でポジティブ感情はネガティブ感情から脱却するきっかけに繋がるかもしれないということがわかっています。
ポジティブ感情はある特定の行動と結びついているものではなく,ポジティブ感情を経験することが創造的な思考活動や学習機会を増加させるといったように,人々の思考─行動レパートリーを広げ,さまざまなコーピングを可能にするという可能性が指摘されだしました。また,ポジティブ感情には,ネガティブ感情によって高められた,嫌な気分や心拍率,血圧などの自律神経系の亢進を,素早く元に戻す元通り効果(undoing effect, Fredrickson & Levenson, 1998)といった機能があることも示されています。(中略)結果としてウェル・ビーイングや健康の増進をもたらす(Fredrickson & Joiner, 2002)と考えられます。
引用:日本心理学会|ポジティブ感情はなぜ必要か?
このように、ポジティブ感情の効果をうまく利用することで、学習意欲を高めたり、健康増進に繋がったりできるのです。
ただ、看護師は日頃から感情をコントロールしながら仕事をしているため、必要以上にポジティブに切り替えると、ご自身の感情を抑圧してしまう可能性があり、注意が必要です。
ネガティブな出来事(事実)はポジティブに捉えつつ、その時感じた悲しみや怒りなどの感情をそのまま認めてあげるようにしましょう。
どうしてもネガティブに考えてしまうなら
ネガティブ思考は直さず、あえて活かしてみることをおすすめします。以下に具体例をあげます。
例)
- 過去の失敗体験を引きずり、つい悪い方向に考えがち
→どんな失敗が起こるかを具体的に想像し、あらかじめ対処法をいくつか考えておく。 - ネガティブなせいで人間関係がうまくいってない気がする。
→対話スキルよりも、傾聴や共感スキルを磨く。 - 他人と比べて落ち込む。
→ネガティブな自分を認める。他人も見えないところで悩んでいるかもしれないという想像をする。
このように、考え方の癖を利用することで、仕事のミスを減らしたり、人間関係を円滑に築いたりすることができるのです。
なにより、ネガティブ思考やポジティブ思考については善悪で考える必要はありません。ありのままの自分を認めてあげることも大切です。どうしても物事を悲観的に捉えてしまう方は、次章で紹介するリラックス法やリフレッシュ法にチャレンジし、視点を変えてみると良いでしょう。
3-5. ストレスを感じたら「まあいいや」と言ってみる(オーウェル思考)
ストレスを感じたら「まあいいや」「まあいいか」と口に出すことも、ストレス緩和に役立ちます。
これはオーウェル思考と呼ばれるもので、無意識に「〇〇すべき」と決めているルールの許容範囲を広げることにより、余計なストレスを軽減することができるのです。
例)
- 朝のラウンド前に点滴薬を調剤すべき
→急ぎの点滴がなければ、ラウンドを先にしていい。患者さんの状態を先に確認しに行こう。 - わからないことがあると恥ずかしいので、勉強は自主的にやるべき
→ある程度の勉強は自分でやるけど、完璧じゃなくていい。わからないことは周囲に聞こう。 - 夜勤の仮眠が苦手だけど、朝に備えて寝るべき(でも結局眠れない…)
→仮眠は苦手だから、眠れなくてもいい。でもアイマスクして少しでも体を休めよう。
仕事に正確性が求められる看護師にとっては、このオーウェル思考は万能ではありませんが、状況に応じて取り入れることでメリハリのある仕事ができるようになるはずです。ぜひ参考になさってください。
4.ストレスを解消する|行動面へのアプローチ6選
次に、ストレス解消型のストレスコーピングを活用したアプローチ方法を6つ紹介します。
一つでも実践できそうなアプローチがあれば、ぜひ試してみてください。
- 4-1. しっかりと休養を取る
- 4-2. 健康的な食習慣を心がける
- 4-3. 趣味に没頭する
- 4-4. スマホやパソコンを使わない時間を作る
- 4-5. 嫌なことをノートに書いてビリビリに破く
- 4-6. 温泉や旅行などに出かける
順を追って見ていきましょう。
4-1. しっかりと休養を取る
看護師の仕事にストレスを感じたら、まずはしっかりと休養を取りましょう。
ストレスを感じたまま活動していると、後に心身ともに疲弊してしまい、ストレスをより感じやすくなってしまいます。
もしすでに大きなストレスを感じているのであれば、心身の疲れが溜まっている可能性があるでしょう。
疲労を回復し自律神経を整えるためにも、睡眠時間を確保するなどして意識的に疲れを取ることは欠かせません。
4-2. 健康的な食習慣を心がける
ストレスが溜まると暴飲暴食をしてしまうという方も多いかもしれませんが、ストレスを感じたときこそ、健康的な食習慣を心がけてください。
偏食による栄養バランスの崩れや、消化器官の不調が、さらにストレスを増大させる可能性があるからです。
ストレス解消に効果のある栄養素と、それを含む食べ物を以下にまとめしたので参考にしてみてください。
<ストレス解消におすすめの食べ物> | |
トリプトファンとビタミンB6 (セロトニン=幸せホルモン) | ・乳製品(牛乳、チーズ、ヨーグルト) ・大豆製品(豆腐、味噌、納豆) ・赤みの魚 ・バナナ ・卵 |
ビタミンC | ・果物(キウイ、イチゴ) |
ポリフェノール | ・チョコレート ・赤ワイン(適量) ・コーヒー(適量) |
カルシウム | ・牛乳、チーズ ・魚介類(エビ、イワシ) |
4-3. 趣味に没頭する
休息と食事で体力の回復ができたら、趣味や娯楽に時間を費やしましょう。
忙しいと、つい仕事に関係ないことは後回しにしがちですが、趣味や娯楽は心の栄養です。
映画・読書・音楽・演劇・ゲーム・カラオケなど、好きなものに触れることでQOLの向上に繋がっていきます。
ぜひ先送りはせず、ご自身の心を満たす時間を作ってみてください。
趣味がないなら、運動やリラクゼーションがおすすめ
「趣味がない」と感じている方には、運動やリラクゼーションをおすすめします。
忙しいと、運動が億劫だと感じる方もいるかもしれませんが、運動にはさまざまな効果があります。
運動には、ネガティブな気分を発散させたり、こころと体をリラックスさせ、睡眠リズムを整える作用があります。(中略)ハードルが高いなと思ったら、近所を散歩したり、緑の多い公園などで、ちょっとアクティブにすごしたりするだけでも効果があります。1日20分を目安に、体がぽかぽかして、汗ばむくらい続けてみましょう。
頑張りすぎると、かえって疲れてしまうので、「ああ、スッキリした!」と思えるくらいの軽さを目標に。1日にたくさんやるより、継続することが大切です。
引用:厚生労働省|こころもメンテしよう ~若者を支えるメンタルヘルスサイト~
また、リラクゼーション効果のあるマッサージ、アロマテラピー、ヨガ、サウナなどもおすすめです。興味のあるものがあれば、ぜひ試してみてください。
4-4. スマホやパソコンを使わない時間を作る
スマホやパソコンを使わない時間を作り、情報を遮断してストレスを減らしましょう。
ご存じの方もいるかと思いますが、スマホやパソコンなどのデジタルデバイスを長時間使い続けると疲労感やストレスが増大することがわかっています。
これらのデジタルデバイスには多様な用途があり、今や生活する上で無くてはならない必需品です。
しかし、適切な距離感をもって使用しないと眼精疲労・不眠症・うつなどの健康被害や、遅刻や欠勤などの社会的トラブルに発展することもあるので注意が必要です。(参考:新宿ストレスクリニック|スマホ依存とうつ)
スマホやパソコンを完全に手放すのではなく、意図的にスマホやパソコンと使わない時間を作るよう心がけてみましょう。
4-5. 嫌なことをノートに書いてビリビリに破く
その日にあった嫌なことをノートに書いて、思いっきりビリビリ破くのもおすすめの方法です。
手書きで書くことで、スマホのフリック入力やパソコンのタイピングよりも時間をかけて深く考えることができるので、ご自身の気持ちの整理に役立ちます。
また、書いたことをビリビリに破ることでスッキリした感覚が得られるでしょう。
ストレスが溜まると人や物に八つ当たりしたくなる方は、ぜひ一度試してみてください。
4-6. 温泉や旅行などに出かける
温泉や旅行などに出かけ、非日常感を味わうのもおすすめです。
普段過ごしている環境から離れた場所で過ごすことで、思いがけない出会いや発見に巡り合える可能性があるでしょう。
ただ、新型コロナウイルス感染症の影響で、以前のように気軽に出かけることが難しいと感じている方もいますよね。
そんな方には、下記のリフレッシュ方法をご提案いたします。
<自宅で出来る非日常体験の例>
- 旅先の美味しいグルメのお取り寄せをする
- デトックス効果のある入浴剤を入れて入浴する
- オンラインツアーを利用し格安で旅行体験をしてみる
<感染症の流行が落ち着いている時期に試してほしい非日常体験の例>
- 日帰りで行ける温泉に行く
- 個室対応してくれる旅館に宿泊する
- 近場のホテルに宿泊する
- キャンプやグランピングなどのアウトドアを楽しむ
興味があるものがあれば、ぜひ体験してみてください。
5. やって後悔…ストレスを感じても止めておきたい4つの行動
ストレス解消にはご自身に合った対処法を行うのが一番です。
しかし、ストレス解消のつもりでやった行動で「こんなつもりじゃなかったのに…」と後悔した経験のある方もいますよね。
ここでは、ストレスを感じても止めておきたい4つの行動を解説いたします。
順番にご説明していきます。
5-1. 暴飲暴食
ストレスが溜まるとやりがちな暴飲暴食ですが、言うまでもなく止めたほうが良いです。
食べすぎ・飲みすぎが続くと、胃腸に負担がかかり体調不良に繋がってしまいますし、体重増加や肌荒れなどの外見の変化を招きかねません。
また、暴飲暴食が睡眠の質の低下や自律神経の乱れを引き起こし、仕事に支障が出ることだってあるのです。
過食が原因で15kgの体重増加
ストレスのせいか、帰りもただでさえ遅いのにコンビニによってお酒とおつまみを買ってきて飲んでしまったり、友達との飲みの時にもいっぱい飲んでいっぱい食べてしまいます。
それもあって、入職時と比べて15キロも太ってしまいました。
頑張った自分へのご褒美として、美味しい食事や甘いスイーツ、ビールや酎ハイなどを楽しむことは大切ですが、際限のない過食や深酒はおすすめできません。
食べすぎや飲みすぎを防ぐ仕組みを作り、ご自身の健康を守ることが大切です。
暴飲暴食を防ぐ方法の例)
- 家にあるお酒やお菓子は、目につかない場所に隠す
- 買いだめを避ける
- 全身がうつる鏡を置く
- 食事は、GI値の低い野菜→たんぱく質→炭水化物の順に食べる
- 食べ終わったらすぐ歯を磨く
- お酒は、休肝日を作る
また、必要な栄養素が足りていないことで暴飲暴食を繰り返してしまうケースもあります。
適切な栄養バランスの目安が知りたい方は、食品大手のmeijiが紹介する食の栄養バランスチェックを参考にしてみると良いでしょう。
お酒の適量が知りたい方には、アルコール販売の大手SUNTORYが紹介するお酒の正しい付き合い方をおすすめします。ぜひ、参考になさってください。
5-2. 散財
看護師がついしがちな散財も、ストレスが溜まっている時にはおすすめしません。
ストレスにより判断力が低下している時は、予算オーバーの買い物をしたり、欲しくないものまで買ってしまうこともあるからです。
たとえば、夜勤や残業帰りに買い物に行って着る予定のない服を購入したり、ネットショッピングをくり返し翌月の請求額に驚いたりした経験がある方もいますよね。
頑張って働いたお金は、心から欲しいと思える物や体験に使うべきです。
余計な散財を防ぎ、必要な時にお金が使えるように、買い物の前はしっかり休息してから出かける、ネットショッピングは欲しいものを一度カートに入れたまま時間を置いてから再度検討するなどの対策をしましょう。
5-3. 人や物に当たる
ストレスが原因で人や物に当たってしまう方は、代わりとなるストレス解消法を見つけましょう。
当然のことですが、人や物に当たってばかりいると、いつか大切な人や物を失うことになってしまいます。
これは筆者の体験談ですが、看護師1年目の時に仕事量の多さや人間関係にストレスを感じて、ささいなことで友人を怒らせてしまったことがあります。
筆者の余計な一言が原因の喧嘩だったので、すぐに謝罪し仲直りできましたが、友人への申し訳なさからしばらく自己嫌悪に陥ってしまった経験があります。
このように、ストレスを人や物にぶつけてしまうのは健全なストレス解消法とはいえません。
既にご紹介したストレスコーピングを参考に、ご自身に合ったストレス解消法を試していきましょう。
5-4. 過度のストレスを放置する
ストレスを我慢したり、放置したりするのは今すぐ止めましょう。
心身へのダメージが大きく、仕事が続けられなくなるだけでなく、日常生活を送ることさえ難しくなってしまいます。
ストレスを我慢した結果、夢だった看護師の道を諦めることに
小さい頃入院したことをきっかけに看護師に憧れ、国家試験に合格した時はとても嬉しかったです。
でも実際の現場は壮絶で、覚えることがたくさん…。僕が男だったせいか、先輩にイジられることも多く、そうしたコミュニケーションにストレスが溜まっていきました。
だんだん食事がとれなくなり、夜も眠れず、結局2年目の途中で離職し1年近く仕事ができない状態が続きました。看護師に復職するのが怖く、今は一般職で働いています。
忙しい看護師ほど、ご自身のストレスを軽く考えがちです。しかし、その結果仕事を辞めるまで追い込まれる方がいるのも事実なのです。
忙しくご自身のことを後回しにするお気持ちはわかりますが、日頃から意識してご自身を労うことを忘れないようにしましょう。
6.根本的な解決を求めるなら転職も考える
どんなに効果的なストレス対処法を試しても、原因の根本的な解決ができないとストレスが消えることは無いですよね。
しかし、現職で感じているストレスを根本的に解決するためには、多くの時間とエネルギーが必要です。
職場の環境を改善するために問題解決に取り組むのは大切ですが、ストレスを抱えた状態で取り組んでも疲弊してしまい、さらなるストレスを抱えてしまっては元も子もありません。
根本的な解決を求めるのであれば、転職して新しい環境に身を置くことも一つの手です。
現職のストレス解決のために転職する場合、慌てて次の職場を決めるのではなく、しっかりと余裕を持って行動することが大切です。
そこでこの章では、ストレスを抱えた看護師が転職する時に押さえておきたいポイントを紹介します。
- 6-1. 転職する前にストレスの原因を明確にする
- 6-2. 情報収集をしっかり行う
6-1. 転職する前にストレスの原因を明確にする
まずは、ストレスの原因をはっきり言葉にすることから始めましょう。
「今の職場のどこに不満を感じているか」を明確にすることで、転職先を選ぶ基準ができ失敗を避けられます。
→ストレスの原因:人間関係、夜勤や残業などの労働環境
→転職先を選ぶ基準:人間関係と労働環境が整っている職場、結婚しても続けやすい職場
このように、職場の不満を言葉にすることでストレスの原因が明らかになり、同じような職場に転職してしまうリスクを減らすことができます。
関連記事:転職で後悔する看護師に共通する特徴|失敗しない転職活動のコツ
6-2. 情報収集をしっかり行う
ストレスの原因を洗い出したら、転職先を選ぶ基準をもとに情報収集をしましょう。
ストレスが原因で転職をする場合、情報不足の状態で転職をすると、新しい職場でも同じストレスに悩まされるかもしれません。
情報収集には「ナスコミ」「ナース専科」「medico」などの口コミサイトをチェックしたり、後述する転職サイトの担当者に職場の人間関係について尋ねたりと、多くの方法を活用しましょう。
とにかく早く転職して、今のストレスから逃れたいという気持ちは理解しますが、ここは一度落ち着いて、転職先候補の情報収集をしっかりと行うことが大切です。
ストレスのない職場はある!看護師におすすめの病院以外の職場
ストレスの多い看護師には、基本的に夜勤がなく、病棟のような慌ただしい看護業務がない職場をおすすめします。
ストレスの多い看護師におすすめの職場の例)
- 一般のクリニック
- 健診センター(労働衛生機関)
- 保育園
- 児童養護施設
- 大学の保健室
- 治験医療機関
- 企業(産業看護師)
気になる職場があれば、ぜひチェックしてみるとよいでしょう。
関連記事:病院以外に転職したい看護師におすすめの職場15選【夜勤なし&高収入も可】
転職を視野に入れて検討している方は、転職サイトに登録し、キャリアアドバイザーに相談するのもおすすめです。
キャリアアドバイザーは看護師転職支援のプロで、あなたの希望条件をヒアリングしたうえで最適な職場・求人を紹介してくれます。
人気が高い良質な求人ほど、非公開求人として転職サイト利用者だけに限定公開されているので、登録しておくだけで選択肢をグッと増やせますよ。
大手サイトだと『看護roo!』や『レバウェル看護(旧 看護のお仕事)』などが有名です。評判の良いサイトを詳しく知りたい方は、『看護師723人が選ぶ転職サイトおすすめランキング』を参考にしてください。
さいごに
看護師がストレスを感じやすい原因と効果的な対処法をご紹介しました。
適度なストレスは成長のきっかけになることもあるので、ご自身に合った方法でストレスとうまく付き合う方法を探すことが大切です。
また、ストレスを感じる機会が多い看護師だからこそ、真っ向からストレスに立ち向かうのではなく、受け流すことも覚えておくと良いでしょう。
ストレスは自覚しにくいものなので、客観的に捉えるために厚生労働省のストレスチェックを活用することもおすすめです。(参考:厚生労働省|こころの耳)
あなたがストレスとうまく付き合い、楽しく仕事ができるよう願っております。
先輩に怒られながらの毎日がストレスです。プリセプターさんには「1年目でも、患者さんから見たらプロの看護師なんだからしっかりしないと!」と言われるのですが、それがプレッシャーでさらにストレスを感じます。
早く仕事ができるようになりたいのにうまくいかず、最近は出勤するだけで胃が痛いです。