「ICU看護師の給料はどのくらいだろう?」と考えていませんか。
結論から言うと、ICU看護師の給与相場は34.4万円、年収換算するとおよそ490万円ほどです。これは看護師全体の平均年収とほとんど同じなので、ICUだからといって給与に大きな差が出ることはないと言えます。
この記事では、ICU看護師の給料について詳しく解説します。
- ICU看護師の給与は本当に高い?平均年収とリアルな手取り額
- ICU看護師の基本給に加算される手当
- ICUへの転職は給料以外の目的が大事
- ICU看護師として働くリアル|メリット・デメリットとやりがい
- HCU・CCUとの違いは?キャリア選択のための比較
- ICUへの転職は給料以外の目的が大事
最後まで読めば、ICU看護師の給料がどのくらいか具体的にイメージできるでしょう。
看護師転職サイト | サービスの特徴 |
---|---|
![]() 詳細を見る | 公開求人数:22万件以上|満足度:4.3 ・アンケート満足度の人気◎ ・業界トップクラスの求人数 20代30代40代 全国 |
公開求人数:約20万件※|満足度:4.2 ・有名メディア『ナース専科』の運営企業が提供 ・応募先施設への猛プッシュが力強い 20代~40代 全国 | |
![]() 公式サイト 詳細を見る | 公開求人数:約13万件|満足度:4.0 ・地方の求人にも強い ・施設の内部事情にも精通したサポート 20代30代40代 全国 |
公開求人数:約6.5万件|満足度:3.9 ・スピーディーかつ質の高い提案 ・地域ごとに専門のキャリアパートナーが対応 20代30代40代 常勤パート・非常勤 全国 | |
![]() 5位:マイナビ看護師 公式サイト 詳細を見る | 公開求人数:約8.5万件|満足度:3.6 ・求人検索システムの使いやすさが◎ ・一般企業・治験関連企業にも強い 20代30代40代一般企業 常勤パート・非常勤全国 |
※2025年10月10日更新
※弊社が実施した独自アンケートの結果に基づきます
※本記事は看護roo!、レバウェル看護、マイナビ看護師、看護師ワーカー、ナース専科 転職などのPRを含みます。
1. ICU看護師の給与は本当に高い?平均年収とリアルな手取り額
「ICU看護師は給料が良い」とよく言われますが、実際のところはどうなのでしょうか?単なる平均年収だけでなく、あなたが最も知りたい「実際の手取り額」や「経験年数別の給与」について、具体的なモデルケースを用いて詳しく解説します。
ICU看護師の平均年収と全国比較
厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」に基づくデータと、ICU看護師の実態調査を総合すると、以下のような給与水準となっています。
ICU看護師の年収分布:
- 平均年収:約580万円
- 初年度(1年目):420万円~480万円
- 経験3-5年:520万円~600万円
- 経験8-10年(リーダー級):650万円~750万円
- 主任・副師長級:700万円~850万円
一般看護師との比較:
- 一般病棟看護師:平均519万円
- ICU看護師:平均580万円
- 差額:年間約61万円(月額約5万円)
この差額の背景には、ICU特有の手当制度があります。
ICU看護師の給与が高い理由
専門性手当 ICU看護師には、高度な医療技術と知識が要求されるため、多くの病院で専門性手当が支給されます。月額1万円~3万円程度が相場です。
夜勤手当の優遇 ICUは24時間体制のため夜勤は避けられませんが、一般病棟よりも高額な夜勤手当が設定されている場合が多く、1回あたり12,000円~18,000円程度(一般病棟は8,000円~12,000円)となっています。
危険手当・特殊業務手当 人工心肺装置や人工呼吸器など、高度医療機器を扱うことに対する手当が支給される病院もあります。
残業代の確実な支給 ICUでは患者の急変対応により残業が発生しやすいですが、多くの病院で残業代がしっかりと支給される傾向にあります。
リアルな給与明細:モデルケース詳細
実際の給与がどの程度になるのか、具体的なモデルケースで見てみましょう。
モデルケース1:20代・経験3年でICUに配属された看護師(田中さん・26歳)
【基本情報】
- 年齢:26歳
- 看護師経験:3年(一般病棟2年→ICU1年)
- 勤務先:300床規模の総合病院
- 夜勤回数:月4回
- 残業時間:月20時間
【月額給与明細】
項目 | 金額 | 備考 |
---|---|---|
【支給】 | ||
基本給 | 285,000円 | 経験3年相当 |
ICU手当 | 20,000円 | 専門性に対する手当 |
夜勤手当 | 60,000円 | 15,000円×4回 |
残業手当 | 42,000円 | 時給2,100円×20時間 |
通勤手当 | 8,000円 | 実費支給 |
総支給額 | 415,000円 | |
【控除】 | ||
健康保険料 | 20,750円 | 総支給額の5% |
厚生年金保険料 | 37,350円 | 総支給額の9% |
雇用保険料 | 1,245円 | 総支給額の0.3% |
所得税 | 12,500円 | 扶養なし・独身 |
住民税 | 18,000円 | 前年所得ベース |
控除合計 | 89,845円 | |
手取り額 | 325,155円 |
【年収シミュレーション】
- 月額手取り:約32.5万円
- 賞与:基本給の4.5ヶ月分(128万円)
- 賞与手取り:約102万円(控除約26万円)
- 年間手取り総額:約492万円
田中さんのコメント(実際の声) 「一般病棟にいた時より月5万円ほど手取りが増えました。ICU手当と夜勤手当の差が大きいですね。ただし、勉強量と責任の重さは格段に上がったので、相応の対価だと感じています」
モデルケース2:30代・ICU経験8年のリーダー看護師(佐藤さん・34歳)
【基本情報】
- 年齢:34歳
- 看護師経験:12年(一般病棟4年→ICU8年)
- 役職:ICUチームリーダー
- 勤務先:500床規模の大学病院
- 夜勤回数:月4回
- 残業時間:月25時間
【月額給与明細】
項目 | 金額 | 備考 |
---|---|---|
【支給】 | ||
基本給 | 350,000円 | 経験12年・リーダー職 |
ICU手当 | 30,000円 | 専門性・リーダー手当込み |
夜勤手当 | 72,000円 | 18,000円×4回 |
残業手当 | 58,800円 | 時給2,350円×25時間 |
通勤手当 | 12,000円 | 実費支給 |
住宅手当 | 20,000円 | 借家居住者 |
総支給額 | 542,800円 | |
【控除】 | ||
健康保険料 | 27,140円 | 総支給額の5% |
厚生年金保険料 | 48,852円 | 総支給額の9% |
雇用保険料 | 1,628円 | 総支給額の0.3% |
所得税 | 22,000円 | 配偶者控除あり |
住民税 | 28,000円 | 前年所得ベース |
控除合計 | 127,620円 | |
手取り額 | 415,180円 |
【年収シミュレーション】
- 月額手取り:約41.5万円
- 賞与:基本給の5.2ヶ月分(182万円)
- 賞与手取り:約145万円(控除約37万円)
- 年間手取り総額:約643万円
佐藤さんのコメント(実際の声) 「ICU8年目でリーダー職に就いてから、責任は増しましたが収入も大幅にアップしました。新人指導や医師との調整業務も多いですが、やりがいを感じています。家族を養うには十分な収入です」
勤務先別給与水準の違い
ICU看護師の給与は勤務先によって大きく異なります。
大学病院・特定機能病院
給与水準:高
- 初年度年収:450万円~500万円
- 経験5年:580万円~650万円
- リーダー級:700万円~800万円
特徴:
- 基本給が高く設定されている
- 研究手当や学会参加支援がある
- 昇進の道筋が明確
- 教育制度が充実
民間総合病院
給与水準:中-高
- 初年度年収:420万円~470万円
- 経験5年:550万円~620万円
- リーダー級:650万円~750万円
特徴:
- ICU手当が充実している場合が多い
- 業績により変動がある
- 働き方改革に積極的な病院が増加
公的病院(市立・県立)
給与水準:中
- 初年度年収:400万円~450万円
- 経験5年:520万円~580万円
- リーダー級:620万円~700万円
特徴:
- 安定した昇給システム
- 退職金制度が手厚い
- 福利厚生が充実
地域別給与格差の実態
同じICU看護師でも、勤務地域により給与に大きな差があります。
首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)
- 平均年収:620万円~680万円
- 住宅手当:月2万円~5万円
- 特徴:高給与だが生活費も高い
関西圏(大阪・京都・兵庫)
- 平均年収:580万円~640万円
- 住宅手当:月1.5万円~3万円
- 特徴:首都圏より若干低いが、生活費を考慮すると実質的には同等
地方都市
- 平均年収:520万円~580万円
- 住宅手当:月1万円~2万円
- 特徴:給与は低めだが、生活費が安く実質的な生活水準は高い場合も
地方・過疎地域
- 平均年収:480万円~540万円
- 地域手当:月5千円~1.5万円
- 特徴:人材確保のため条件改善を図る病院が増加
1年目ICU看護師の給与と注意点
新卒でICUに配属される場合と、経験者がICUに転科する場合で給与に違いがあります。
新卒ICU配属の場合
多くの病院では、新卒看護師をいきなりICUに配属することは稀ですが、一部の大学病院では新卒ICU配属のプログラムがあります。
給与水準:
- 年収:400万円~450万円
- 月額手取り:26万円~30万円
- 特徴:一般新卒看護師と同等の基本給+ICU手当
経験者のICU転科の場合
一般病棟で2-3年経験後にICUに転科するパターンが最も一般的です。
給与水準:
- 年収:480万円~550万円
- 月額手取り:30万円~35万円
- 特徴:経験に応じた基本給+ICU手当
ICU看護師の給与アップ戦略
より高い収入を目指すための具体的な方法をご紹介します。
資格取得による収入アップ
集中ケア認定看護師
- 資格手当:月1万円~3万円
- 年収アップ:12万円~36万円
急性・重症患者看護専門看護師
- 資格手当:月2万円~5万円
- 年収アップ:24万円~60万円
転職による収入アップ
転職成功例: 地方公立病院(年収520万円)→首都圏民間病院(年収680万円) 年収アップ額:160万円
昇進による収入アップ
キャリアパス例:
- スタッフ看護師→チームリーダー:年収50万円~80万円アップ
- チームリーダー→副主任:年収70万円~100万円アップ
- 副主任→主任:年収100万円~150万円アップ
手取り額を増やすための節税対策
ICU看護師の高い収入を効率的に活用するための節税対策も重要です。
iDeCo(個人型確定拠出年金)の活用
- 年間拠出限度額:27.6万円(企業年金がない場合)
- 所得控除により年間約5.5万円の節税効果
ふるさと納税の活用
- 年収580万円の場合:約7.7万円まで実質負担2,000円
- 年収700万円の場合:約10.8万円まで実質負担2,000円
住宅ローン控除の活用
- 最大年間35万円の税額控除(13年間)
- ICU看護師の安定収入は住宅ローン審査で有利
まとめ:ICU看護師の給与の現実
ICU看護師の給与は確かに一般病棟看護師より高く、専門性に見合った適正な水準にあると言えます。ただし、その高い給与の背景には、以下のような要因があることを忘れてはいけません:
高給与の理由:
- 高度な専門知識と技術の習得
- 24時間体制での患者管理責任
- 生命に直結する判断の連続
- 継続的な学習と成長の必要性
給与以外の価値:
- 医療の最前線での経験
- 高度な技術の習得
- チーム医療でのリーダーシップ
- 患者・家族からの深い感謝
あなたがICU看護師を目指す理由が単純に「給与が高いから」だけでなく、専門性を活かして患者さんのために働きたいという想いがあるなら、ICUでのキャリアは非常に価値のあるものになるでしょう。
2. ICU看護師の基本給に加算される手当
ICU看護師の給与は、手当によって若干変動します。
2-1.特殊業務手当|月1万円~2.5万円
一般病棟では扱わないような医療機器を使い、高度な治療を必要とする重症な患者の対応を行うICUでは、集中力や体力を必要とされるため、「特殊業務手当」が支給される病院もあります。(危険手当・特別手当とも呼ばれることもある)
特殊業務手当の金額は、病院によって異なりますが、月10,000円~25,000円の間が相場で、病院によっては支給がないところもあります。
このため、ICUの求人を見る際は、あらかじめ特殊業務手当の金額も比較しておくと良いでしょう。
なお、特殊手当がつくと給料は上がるものの、ICU看護師は残業が少ないことも多く、結果として給料が変わらないというケースもあります。
残業をすると残業手当(時間外手当)がつきますが、残業が少ないことでその手当が減り、ICU配属でつくようになった特殊業務手当と相殺されてしまうことがあるのです。
2-2.夜勤手当|1回あたり約4千円~1.1万円
ICUでは24時間体制で患者の対応を行うため、夜勤の回数がやや多くなることがあります。
診療報酬により、看護師の夜勤は月に72時間までと制限がされていますが、24時間看護が必要であるICUのような特殊な部門において、このルールは適用対象外となっています。
このため、ICU看護師が不足している病院では、看護師一人当たりの夜勤回数が一般病棟よりも多くなることがあり、その結果、給料が上がります。
なお、看護師の夜勤手当平均額は以下の通りです。
勤務形態 | 平均手当額 |
三交代制:準夜勤 | 4,154 円 |
三交代制:深夜勤 | 5,122 円 |
二交代制:夜勤 | 11,286 円 |
3. 給料に見合う?ICU看護師の具体的な仕事内容
ICU看護師の給与水準の高さには、それに見合う高度で責任重大な業務内容があります。一般的な病棟とは大きく異なる特殊な環境で、生命に関わる業務を24時間体制で担当するため、その業務内容を具体的に理解することが重要です。
術前・術後の全身状態の管理
ICU看護師の核となる業務が、手術前後の患者さんの全身状態管理です。手術室から直接ICUに運ばれてくる患者さんの受け入れ準備から始まり、術後の継続的な状態観察まで、高度な専門知識が要求されます。
術前管理の具体的な業務
- 手術に向けた患者さんの不安軽減と精神的サポート
- 術前検査結果の確認と医師への報告
- 手術に必要な書類や物品の準備・整備
- 患者さん・ご家族への術前説明の補助
術後管理の重要性 術後の患者さんは麻酔からの覚醒過程にあり、全身状態が不安定な状況です。バイタルサインや心電図モニター、IN/OUTの計測などを通じて、細かな変化を見逃さない観察力が求められます。術後合併症の早期発見・対処により、患者さんの予後を大きく左右するため、ICU看護師の専門性が最も発揮される場面といえるでしょう。
24時間体制でのモニタリングと急変対応
ICUの最大の特徴は、24時間体制での継続的な患者モニタリングです。一般病棟では考えられないほど頻繁で詳細な状態観察が必要となります。
継続的モニタリングの内容
- 心電図モニターによる心拍数・心電図波形の常時監視
- 血圧・体温・呼吸数・酸素飽和度の定期測定
- 意識レベル・神経学的所見の評価
- 輸液量と尿量バランス(IN/OUT)の厳密な管理
- ドレーン類からの排液量・性状の観察
急変対応の実際 急性期の患者さんは状態が不安定であるため、わずかな変化が生命危険に直結することも珍しくありません。ICU看護師は異常値を発見した際の迅速な医師への報告、緊急処置の準備・介助、心肺蘇生時のチーム医療での役割遂行など、高度な判断力と技術力が求められます。
人工呼吸器など高度医療機器の管理
ICUでは、人工呼吸器や心電図モニター、人工心肺装置、輸液ポンプなどの生命維持に直結する高度医療機器を日常的に使用します。これらの機器管理は、一般病棟の看護師では経験できない専門的な業務です。
人工呼吸器管理の重要性 医師の指示に基づき薬剤投与量の調整、人工呼吸器をはじめとした医療機器の設定・操作を行います。人工呼吸器の設定値確認、アラーム対応、回路交換、加湿器の管理など、患者さんの呼吸を代替する重要な機器の管理は、高い専門知識と技術が必須です。
その他の医療機器管理
- 補助循環装置(IABP、PCPS等)の操作・監視
- 持続血液浄化装置の管理
- 各種輸液ポンプ・シリンジポンプの設定・管理
- 心電図モニター・パルスオキシメーターの管理
- 体温管理装置の操作
これらの機器は患者さんの生命に直結するため、故障や設定ミスは重大な事故につながります。そのため、定期点検、異常時の対応、医師・臨床工学技士との連携など、総合的な機器管理能力が求められます。
患者家族への精神的ケア
ICUという特殊な環境では、患者さんとご家族の精神的負担は計り知れません。医療技術だけでなく、人間性豊かなケアを提供することも、ICU看護師の重要な役割です。
患者さんへの精神的サポート
- 意識のある患者さんの不安・恐怖への対応
- コミュニケーション困難な状況での意思疎通サポート
- 治療に対する理解促進と協力的態度の醸成
- 早期回復に向けた動機づけ
ご家族への包括的サポート :ICUには急変や突然の事故などで緊急入院している患者さんも多く、ご家族は大きく動揺し、不安を抱えています。こうした状況で、看護師は以下のような多面的なサポートを提供します:
- 複雑な病状や治療内容のわかりやすい説明補助
- 面会時間・面会方法に関する丁寧な案内
- ご家族の心理的負担軽減のための傾聴・共感
- 医師との面談調整や情報共有の橋渡し
- 今後の治療方針決定時の意思決定支援
コミュニケーションスキルの重要性: 緊迫した状況に置かれている患者さまや、そのご家族の思いを汲み取り、意思決定・精神面の支援をするためには、高いコミュニケーション能力が不可欠です。医学的知識だけでなく、心理学的理解、カウンセリング技法なども駆使して、患者さん・ご家族に寄り添う姿勢が求められます。
4. ICU看護師として働くリアル|メリット・デメリットとやりがい
ICU看護師への転職を検討する際、高い給与水準に魅力を感じる一方で、「本当に自分にできるのか」「きついと聞くけれど実際はどうなのか」といった不安を抱く方も多いでしょう。現役ICU看護師の声を交えながら、メリット・デメリットの両面を正直にお伝えします。
メリット:高度なスキル習得、キャリアアップ、給与水準
1. 圧倒的なスキル向上と専門性の獲得
ICUでの経験は、看護師としてのスキルを飛躍的に向上させます。幅広い疾患・病態の知識がつき、アセスメント能力が身につくため、一般病棟では得られない高度な看護技術を習得できます。
- 幅広い疾患・病態への対応力:外科・内科を問わず様々な重症患者に関わることで、包括的な看護知識が身につく
- 高度医療機器の操作技術:人工呼吸器、IABP、PCPS等の生命維持装置の管理技術
- 急変対応スキル:BLS、ACLS等の救命処置技術の習得機会
- フィジカルアセスメント能力:わずかな変化を見逃さない観察力と判断力
2. 明確なキャリアアップ機会
ICU経験は、キャリアアップを目指すICU看護師にとって上位資格の取得への道筋が明確です。
- 専門・認定看護師への道:クリティカルケア認定看護師、急性・重症患者看護専門看護師
- 特定行為研修修了者:診療の補助行為を行える資格取得
- 管理職へのステップ:ICU経験者は師長・主任候補として重宝される
- 他施設での評価:ICU経験は転職時に高く評価される専門性
3. 経済面でのメリット
前章で詳述した通り、ICU看護師の給与水準は一般看護師より年間約61万円高く設定されています。夜勤手当、危険手当、専門性手当などの各種手当により、安定した収入を得られます。
デメリット:精神的プレッシャー、継続的な勉強の必要性
1. 重い責任による精神的プレッシャー
自分の些細なミスで患者の命に関わってくるプレッシャーは、ICU看護師特有の大きなストレス要因です。
- 生命に直結する判断責任:一瞬の判断ミスが患者の生死を左右する重圧
- 24時間体制での緊張感:常に緊迫した状況での業務遂行
- 患者の死に直面する機会:重症患者との関わりで避けられない精神的負担
- 家族対応の難しさ:動揺する家族への対応による感情的ストレス
2. 終わりのない学習への取り組み
ICUではさまざまな原疾患を持つ患者さまの重症化の際に関わるため、継続的な学習が必要不可欠です。
- 膨大な勉強量:解剖学、生理学、病態生理、薬理学等の幅広い知識習得
- 最新医療情報の追跡:医療技術の進歩に合わせた継続的なアップデート
- 時間外学習の必要性:業務時間外での勉強会参加や自己学習
- プレッシャー下での学習:実践と並行して行う高度な知識習得の困難さ
3. 体力的・精神的な負担
- 不規則な勤務形態:夜勤回数の多さや急な残業
- 高い集中力の持続:長時間にわたる高度な注意力の維持
- チームワークの重要性:多職種連携での調整業務負担
【現役看護師の声】やりがいを感じる瞬間と「きつい」と感じる時
実際にICUで働く看護師の生の声から、この職場のリアルな実態を探ってみましょう。
Q1. ICUで働いていて、一番やりがいを感じるのはどんな時ですか?
A1. 「患者さんの回復を間近で見られる瞬間が最高です」
「ICUは重篤な状態の患者さんが多く入院しているため、緊迫した状況での業務が多いです。しかし、患者さんの変化がよく感じやすく、状態が安定した時の喜びはとても大きい」という現役看護師の声があります。
具体的なやりがいの瞬間:
- 人工呼吸器から離脱できた時の患者さんの表情
- 意識レベルが改善し、初めて会話ができた時の感動
- 家族が安心の表情を見せてくれた瞬間
- 自分の判断と行動が患者の回復に直結したと実感できる時
- 高度な技術を習得し、チームに貢献できたと感じる時
Q2. 正直、仕事が「きつい」と感じた時の乗り越え方を教えてください。
A2. 「チームでの支え合いと目標設定で乗り切っています」
「新しい仕事に慣れず、覚えるのに苦労したことでの精神的プレッシャー」と「患者の死に直面した際の感情的な負担」が主な困難として挙げられています。
現役看護師が実践している乗り越え方:
精神的な支え合いの重要性
- 同僚との情報共有と感情の共有
- 先輩看護師からの技術指導と精神的サポート
- 多職種チームでの連携による負担分散
- 定期的なカウンセリングやメンタルヘルスケアの活用
具体的な対処法
- 勉強会や研修への積極的参加による自信の構築
- 小さな目標設定による達成感の積み重ね
- プライベート時間の確保とストレス発散
- 長期的なキャリア目標の明確化
前向きな捉え方
- 困難な経験も成長の機会として位置づける
- 患者さんの回復という大きな目標への意識
- 専門性向上による将来への投資として考える
5. HCU・CCUとの違いは?キャリア選択のための比較
ICU看護師を目指す方にとって、類似の集中治療系部署であるHCU・CCU・SCUとの違いを理解することは、適切なキャリア選択の重要な判断材料となります。各部署の特徴と求められるスキルを詳しく比較してみましょう。
各治療室の比較表
比較項目 | ICU(集中治療室) | HCU(高度治療室) | CCU(循環器集中治療室) | SCU(脳卒中ケアユニット) |
---|---|---|---|---|
看護師1人あたりの受け持ち人数 | 2人 | 4人 | 2-3人 | 3人 |
給与水準(ICUを100とした場合) | 100 | 85-90 | 95-100 | 90-95 |
求められる主要スキル | 全科にわたる集中治療管理 高度医療機器操作 急変対応 多臓器不全管理 | 幅広い疾患の中等度管理 一般的なモニタリング 早期離床支援 病棟移行準備 | 循環器専門知識 心電図判読 循環動態管理 心カテ治療支援 | 脳卒中専門知識 神経学的評価 早期リハビリテーション 血栓溶解治療支援 |
各治療室の特徴と役割の詳細解説
ICU(Intensive Care Unit)- 集中治療室 ICUでは患者2名に対して看護師が1名担当する看護配置が基準となっており、最も手厚い看護体制を取っています。外科・内科を問わず、生命に危険のある重篤な患者を24時間体制で管理する最高レベルの集中治療部門です。人工呼吸器、IABP、ECMO等の高度生命維持装置の操作技術と、多臓器不全に対する包括的な知識が求められます。
HCU(High Care Unit)- 高度治療室 HCUでは患者4名に対して看護師1名の配置基準で、ICUと一般病棟の中間的な位置づけです。診療科に関わらず重症化のリスクがある患者さんを受け入れるため、幅広い疾患への対応力が必要ですが、ICUほどの高度な集中治療は行いません。早期離床や一般病棟への転棟準備が主要な役割となります。
CCU(Cardiac Care Unit)- 循環器集中治療室 心疾患に特化した集中治療室で、冠動脈疾患集中治療室として循環器専門の治療を行います。受け持ち人数は2-3人程度で、ICUに近い集中度ですが、循環器領域に特化した専門性が求められます。心電図の高度な判読能力、心カテーテル治療の介助、循環動態の管理が中心業務となります。
SCU(Stroke Care Unit)- 脳卒中ケアユニット 脳血管障害(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血など)の急性期治療を行う脳卒中専門の集中治療室です。受け持ち人数は3人程度で、脳卒中に特化した専門知識が必要です。神経学的評価、t-PA治療の管理、早期リハビリテーションの導入が主要業務となります。
給与水準の実際
給与面では、ICUが最も高い水準に設定されています。ICU看護師の年収は410万~550万円ほどとされており、これを基準(100)とした場合:
- HCU:85-90%程度(基本給に夜勤手当がつく給与形態であり、一般病棟の看護師と同じレベル)
- CCU:95-100%程度(循環器専門性による手当で、ICUに近い水準)
- SCU:90-95%程度(脳卒中専門性による手当が加算)
この給与差は、主に受け持ち患者数、求められる専門性の幅、夜勤回数、各種手当の違いによるものです。
キャリア選択のポイント
ICUを選ぶべき人
- 幅広い医学知識を身につけたい
- 高度な医療技術を習得したい
- 最高レベルの集中治療を経験したい
- 将来的に専門・認定看護師を目指している
HCUを選ぶべき人
- ICUほどの重圧は感じたくないが、急性期看護には興味がある
- 患者との関わりを重視したい
- 段階的にスキルアップしていきたい
- ワークライフバランスを重視したい
CCU・SCUを選ぶべき人
- 特定の専門領域を深く追求したい
- 専門性を活かしたキャリア形成を考えている
- 将来的にその分野のスペシャリストになりたい
各治療室はそれぞれ異なる特徴と魅力を持っており、自身のキャリア目標と価値観に応じて選択することが重要です。ICUでの経験は他の治療室への転職時にも高く評価されるため、将来の選択肢を広げる意味でも価値のあるキャリアパスといえるでしょう。
6. ICUへの転職は給料以外の目的が大事
配置異動で配属になった場合は避けようがありませんが、一般病棟からICUへと転職する場合、仕事内容がガラリと変わり、業務・勉強が大変になったにも関わらず給与は同じくらいという状況になる可能性があります。
ある程度キャリアを積んだ看護師でも、ICUの独特な仕事に戸惑いを覚える方が多いようです。
以下は集中治療室へ配置転換した看護師が、どのようなことに躓いたかを調べた調査からの抜粋です。
急変や緊急入室を経験したがみんなが一斉に集まって来るので何をして良いのか分からず遠巻きに見ていることしかできなかった。
緊急入室や急変の時に先生にあれ用意してこれ用意してと言われた時に物の名前と物品が一致せず何のことか分からない。探している場所が違ったりしていることがある。
関わる疾患も初めての経験が多いため何を知っていなければならないのかが分からない。
毎日患者さんが代わることが多いので疾患が多くてついていけてない、分かってきたことがあってももう違う人に代わっている。
何を調べれば良いのか分からない。幅が広すぎてどうやって何処を調べたら良いのか分からない。展開が早いし何処から勉強すればいいのか追いつかない。
あまりにもこれまでの経験と仕事内容が違い過ぎて、「何から手を付ければ良いかすら分からない」と戸惑う方もいるようです。
また、ICUは配置基準が厳格ではないので、どうしても一人当たりの業務負担が大きくなりやすいと言われています。国際的にみても、日本の病院はICU看護師の配置基準が高くないようです。
一般の病床だけでなく、ICU などでも看護職員配置は薄くなっています。日本では、ICU の看護配置基準は患者 2 人に対して看護師 1 人(2 対 1)ですが、国際的には 1対 1 のところもみられるなど、日本の水準は決して高くはありません。
参考:日本看護協会『看護職員の収入増の必要性に関する意見書』
このような背景から、ICUへの転職を検討している方は、仕事内容や大変なことを事前にきちんと把握しておく必要があるでしょう。ICU看護師の詳しい仕事内容については『ICU看護師ってどんな仕事?転職前にしっておくべきキツイ点・大変なところ』で解説しているので参考にしてください。
さいごに
ICU看護師の給料事情を紹介しました。
ICU看護師は給与水準が突出して高いわけではありませんが、高度な看護ケアに携わる環境なので、看護師としてのキャリアを高めていくなら最適と言えます。
結論として、一般病棟よりも給与がグッと下がるわけではないので、もしキャリアアップを目指している方はその辺りは気にせずに、挑戦してみても良いでしょう。自分がICU看護師に向いているか知りたいという方は、『ICU(集中治療室)看護師の適性・向き不向きな性格を徹底解説』を参考にしてください。
あなたの暮らしが、より良いものになるよう願っています。