「産業保健師になるにはどうしたらよいのだろう」「最短ルートで就職したい」と考えていませんか?
まず、産業保健師になるには看護師と保健師の国家資格を取得する必要があります。
また、資格を取得した後は企業の選考を受けるため、産業保健師になるまでの道のりは長く険しいものとなります。
このように産業保健師になるまでには様々なステップがあるため、自分に最適なルートを考え、しっかりと対策を立てていくことが大切です。
ここでは、これまで多くの保健師の転職をサポートしてきた私が、産業保健師になるまでに必要な知識を紹介していきます。
- 産業保健師になるには看護師と保健師の国家資格が必要
- 産業保健師への就職は狭き門
- 産業保健師になるのに有利な経験・スキル
- 企業の内定を勝ち取るために抑えるべき5つのポイント
- 産業保健師の求人探しにおすすめの転職サイト
この記事を読めば、産業保健師になるまでの方法がわかり、夢に一歩近づけるでしょう。
1.産業保健師になるには看護師と保健師の国家資格が必要
出典:APOPLUS
産業保健師になるには看護師と保健師の国家資格が必要です。
取得するには年に一度の試験を受ける必要がありますが、受験資格が定められており、大学や専門学校で一定のカリキュラムを修了する必要があります。
4年制大学で看護師と保健師の資格を同時に取ったり、看護師資格を取得した後に保健師の養成学校で資格を取得したりと様々なルートがあるため、自分のライフスタイルにあった方法を選びましょう。
ちなみに、資格取得までにかかる期間は以下の通りです。
- 看護師資格を持っていない方:最低4年
- 看護師資格をすでに持っている方:最低1年
まだ資格を持っていない方は、以下の記事を参考にまずは資格を取得する方法を確認しましょう。
看護師資格:看護師になるには?社会人として働きながら看護師を目指す基礎知識
保健師資格:保健師になるには?主婦・社会人が最短で保健師を目指す基礎知識
2.産業保健師への就職は狭き門
産業保健師への就職は難易度が高いことをあらかじめ理解しておきましょう。
早速、見ていきましょう。
2-1.求人数がそもそも少なく、倍率が高い
産業保健師への就職は、そもそもの求人数が少ない上に働きやすく人気であるため、倍率が高いです。
実際に、マイナビ看護師に掲載された求人を集計すると、企業の求人数は約300件(2021年7月時点)と少ないことが分かります。
出典:マイナビ看護師
また、企業で働く産業保健師は1~2名しかいないため人づての紹介だけで埋まってしまうケースが多くあり、人脈がないと企業で働くのは難しい場合があります。
就職活動の長期化が予想されるため、企業に就職したい方はなるべく多くの求人をチェックし、きちんと対策を立てる必要があるでしょう。
2-2.経験値の多さが採用に直結するため、キャリアが浅い人には厳しい
産業保健師への就職は経験値の多さが採用に直結しやすいため、行政保健師や看護師として働いてから産業保健師になることをおすすめします。
というのも、企業内の保健師は1~2名であるため、基本的に全ての業務に1人で対応しなければならず、未経験者への教育体制もほとんどない企業が多いからです。
キャリアが浅い人にとってはより厳しい戦いとなるため、未経験の方はまずは保健師や看護師としての経験を積むことをおすすめします。
3.産業保健師になるのに有利な経験・スキル
この章では、産業保健師の厳しい選考を有利に進めるために必要な経験やスキルを紹介していきます。
- 3-1.行政保健師として特定保健指導を行った経験
- 3-2.看護師としての3年以上の臨床経験
- 3-3.コミュニケーション能力
- 3-4.パソコンを使ったデータ分析能力
- 3-5.マネジメント能力
- 3-6.情報収集能力
- 3-7.英語力があると外資系企業の求人にも挑戦しやすい
それぞれ詳しく説明していきます。
3-1.行政保健師として特定保健指導を行った経験
産業保健師は社員の健康相談に乗ることが多いため、行政保健師として特定保健指導を行った経験があると選考で評価されやすいです。
行政保健師として働いた経験のある方は、選考でアピールしましょう。
特定保健指導とは
特定健診(生活習慣病予防のための検診)の結果から、生活習慣病の発症リスクが高い方を対象に、保健師や管理栄養士などが行うサポートのこと。
バランスの取れた食生活や適度な運動習慣などを取り入れ、生活習慣病の予防を目指す。
3-2.看護師としての3年以上の臨床経験
臨床経験は企業によっては必須とされることもあり、3年以上の経験があると選考に有利です。
出典:PASONA
産業保健師の仕事は「病気や怪我の予防」であるため、企業で実際に治療を行う機会は少ないですが、工場に勤める場合は応急処置を行う頻度が高い傾向にあります。
看護師として配属されている科によって専門知識は異なるため、自分がどのような場面で臨床経験を活かせるのかを具体的にアピールできると良いでしょう。
- 内科・糖尿病内科→高血圧・糖尿病の方への健康指導
- 外科→怪我の応急処置(パソコン作業による腱鞘炎、工場での事故対応など)
- 精神科→社員のメンタルヘルスケア
3-3.コミュニケーション能力
産業保健師として働く上でコミュニケーション能力は重視されます。
産業保健師は同僚の保健師や産業医と連携をとったり、社員のカウンセリングを行ったりすることに加え、人事労務担当者とも関わることが多いです。
勤める企業によって差はありますが、このように産業保健師は多様な役職の人と関わるため、専門知識を分かりやすく伝える力が求められます。
3-4.パソコンを使ったデータ分析能力
産業保健師にはパソコンを使ったデータ分析能力が必要です。
産業保健師は健康診断の結果やストレスチェック評価、健康施策アンケートのデータなどを扱います。
毎年集まる社員のデータを各年ごとにまとめ経年で分析したり、健康施策がどのような効果をもたらしたのかを調べたりと、統計の知識が必要となる場面も多いです。
そのため、Excelを用いたデータ分析能力や、統計学の知識があると良いでしょう。
3-5.マネジメント能力
業務を円滑に進めるために、マネジメント能力が求められます。
特に、産業保健師は職場に1~2人しかいないため、業務上の課題を見つけ解決する力や、自分で業務の進捗を管理をするスキルは大切です。
また、職場環境の改善を会社の管理職に提案する際には、管理職の立場から見たマネジメント事情を理解しておくと、提案がスムーズに進むでしょう。
様々な役職の社員と関わるため、相手の事情を考慮した行動ができると働きやすいです。
3-6.情報収集能力
産業保健師は自ら情報収集をしたり、勉強したりすることも重要です。
というのも、企業に産業保健師は1~2人しかおらず情報が入ってきにくいため、外部の情報にアンテナを立てておかないと最新の情報から遠ざかり、どんどん視野が狭くなってしまうからです。
新型コロナウイルス感染症の動向や治療ガイドラインの改正、法令に関する知識など、日々変化する状況を把握しておかなければなりません。
学会に参加したり他社の産業保健師とつながったりして、自発的に情報収集を行うことが大切です。
3-7.英語力があると外資系企業の求人にも挑戦しやすい
英語力があると外資系企業の求人にも挑戦しやすく、周りより一歩リードした転職活動ができるでしょう。
外資系企業では外国人の社員に対してもカウンセリングを行ったり、経営層とのミーティングに参加したりと、英語を用いる機会が多くあります。
また日系企業でも、海外駐在員がいる場合の健康サポートで英語が必要になったり、外国人労働者にフォローを行ったりと、英語力があると働き方の幅が広がるでしょう。
4.企業の内定を勝ち取るために抑えるべき5つのポイント
倍率の高い企業への転職を目指す道のりは決して簡単なものではありません。
下記に企業への就職を目指す際に大切なポイントをまとめました。
- 4-1.選考を受けるのは「企業」ということを忘れない
- 4-2.正規雇用にこだわりすぎない
- 4-3.即戦力であることをアピールする
- 4-4.ハローワーク・大学・人脈などネットワークを駆使して求人を集める
- 4-5.転職サイトのサポートを活用する
それでは見ていきましょう。
4-1.選考を受けるのは「企業」ということを忘れない
企業で求められる人材は保健所や病院とは異なるため、その違いを理解しておく必要があります。
企業に転職するため、なぜその会社に入りたいのか、なぜその業務をしたいのかなど、入社や業務への熱意を問う質問にきちんと答えられるようにしておきましょう。
事前に企業のホームページをチェックしたり、面接の練習をしたりするなど、入念な準備が必要です。
4-2.正規雇用にこだわりすぎない
どうしても企業に転職したいのであれば、正規雇用にこだわりすぎないことも一つのポイントです。
産業保健師の求人には、期間限定の契約社員など非正規での求人も少なからずあり、そこで経験を積んでおくことで、次に正規雇用の求人に挑戦した時に有利になります。
また非正規で採用された後に、業界内に接点ができたり実績を評価されたりすることで、正規雇用の誘いが来るチャンスもあるでしょう。
実際に、下記のような方もいらっしゃいました。
企業で働く看護師と接点を持つことが大切
出典:アンケート
上記のようなケースもあるため、正規雇用にこだわりすぎない方が、企業で働くチャンスが増えるでしょう。
4-3.即戦力であることをアピールする
選考では、即戦力となる経験があることをしっかりとアピールしましょう。
というのも企業の看護師は1~2名しかいないため、1人で判断が必要なことも多く、また新しく雇った保健師を教育する制度は整っていないからです。
今までの経験を生かしてどのように企業に貢献できるのか、自分の言葉で言えるようにしておきましょう。
4-4.ハローワーク・大学・人脈などネットワークを駆使して求人を集める
求人情報を得るために、以下のようにアンテナを常にあらゆる方向に張りめぐらせておくことが大切です。
- 企業で働いている保健師とつながり、情報を得る
- 母校の教員に相談する(企業で働く保健師の知人・卒業生はいるか)
- ハローワークや複数の転職サイトに登録して情報を得る
求人は、企業に勤めている保健師が退職する際に突発的に募集がかかり、次の人がすぐに決まるケースが多いため、チャンスを逃さないようにしましょう。
また転職は長期化する可能性があるため、次の転職先が決まるまでは絶対に今の職場を辞めないようにしてください。
4-5.転職サイトのサポートを活用する
企業の求人情報を得るためにはさまざまなネットワークを使いますが、中でも転職サイトのサポートを活用することをおすすめします。
というのも、企業の求人は世の中に出回っていないケースが多く、転職サイトはその非公開求人を保有している可能性が高いからです。
また以下の表でも分かるように、転職サイトは選考の手続代行や面接対策などのサポート体制が充実しているため、転職に不安な方の心強い味方となってくれます。
探し方 | 求人数 | サポート体制 | 手続きの手間 | 紹介企業の傾向 |
転職サイト | ◎ | ◎ | ◎ | 全国の 大手企業・中小企業 |
ハローワーク | ○ | ○ | △ | 地元の 中小企業・零細企業 |
知人・母校の紹介 | ○ | △ | △ | ‐ |
転職サイトでは求人が出るとすぐに教えてもらうことができるため、ハローワークや知人からの紹介を待ちつつ、転職サイトを複数活用することで、得られる情報が増えるでしょう。
5.産業保健師の求人探しにおすすめの転職サイト
数ある産業保健師向けの転職サイトの中から、以下の3点を基準に、「総合評価の高い転職サイト」をピックアップしました。
転職サイト選定の3つの基準
- 求人の質・量:保健師の求人の量や質は十分かどうか
- 提案力:求職者のニーズにぴったりの提案をしてくれるかどうか
- サポート力:手厚いサポートを受けられるかどうか
利用者の総合評価順にランキング形式でまとめると、産業保健師におすすめの転職サイトは、以下のようになりました。
好条件求人を集めることを考えて、すべて登録することをおすすめします。
転職サイト | 公開求人数 | 利用満足度 |
1位 看護roo! | 約1,030件 | ★★★★☆4.3 保健師・看護師の満足度No.1 |
2位 APOPLUS | 約960件 | ★★★★☆4.2 保健師・看護師の転職に特化した転職サイト |
3位 M.STAGE | 非公開 | ★★★★☆4.2 産業保健サービスのノウハウ満載 |
※求人数:2021年7月時点
それでは、ここからはランキング上位のサイトを1つずつ紹介していきます。
1位.看護roo!
『看護roo!』は、数ある看護系転職サイトの中でも利用満足度No.1で、豊富な求人をそろえています。
いかに多くの求人を見つけるかが鍵となる保健師の転職において、選択肢を増やすことは何より重要となります。
したがって、理想の職場に転職したいという方は、ぜひ登録しておくことをおすすめします。
また『看護roo!』は選考対策も充実しているという点も特徴的です。
面接に同席までしてくれるなどサポートの手厚さも特徴で、はじめて転職を試みるという方にもおすすめです。
運営会社 | 株式会社クイック |
対象地域 | 主要都市圏 |
オフィス | 全国4箇所(東京・大阪・名古屋・横浜) |
公開求人数 | 約1,030件 |
公式ページ | https://kango-roo.com/ |
2位.APOPLUS
『APOPLUS』は保健師・看護師の転職に特化した転職サイトです。
医療機関だけでなく企業の求人情報も業界トップクラスの数を取り扱っており、高い転職成功率を誇っています。
また、業界で唯一企業転職希望者への専門チームを持っており、現場に精通したスタッフがヒアリングから応募、面接、就業までを強力にバックアップしてくれます。
個別相談会や産業保健師セミナーも開催されているため、産業保健師への転職の心強い味方となってくれるでしょう。
運営会社 | クオールホールディングス株式会社 |
対象地域 | 全国 |
オフィス | 全国10箇所 |
公開求人数 | 約960件 |
公式ページ | https://www.kan54.jp/ |
3位.M.STAGE
『M.STAGE』は産業保健のサポートを行っているサービスです。
扱っている求人は、M.STAGEが企業から直接委託された案件であり、多彩な産業医・保健師の求人が紹介されています。
未経験OKの求人もあり、経験豊富な現役保健師がサポートしてくれるため初めての方でも安心です。
また、就職後も経験が浅い方や、より高度な産業保健活動を目指している方に向けて、研修会も開催されているため利用してみると良いでしょう。
運営会社 | 株式会社エムステージ |
対象地域 | 全国 |
オフィス | 東京 |
公開求人数 | 非公開 |
公式ページ | https://sangyohokensupport.jp/medical |
産業保健師向けの転職サイトについてより詳しい情報を知りたい方は以下の記事を見てみましょう。
関連記事
≫産業保健師の求人が見つかる!おすすめの転職サイト・エージェントランキング
さいごに
産業保健師になるまでの道のりについてお話してきましたが、いかがでしたか?
産業保健師になるのは狭き門であり、ポイントを押さえしっかりと対策を立てることが大切です。
今回紹介した転職サイトを以下にまとめたので、まずは気になるサービスに登録してみてください。
あなたの転職が上手くいくことを願っています。
そこから、産業保健師との接点をいくつか作り、そのおかげで誘いを受け、正社員として働けています。
今もたまに看護師を紹介してほしいという話を受けることがあり、いかに企業で働く看護師と接点を持つかがすごく大切だなと感じています。