大学病院の看護師は忙しく大変なイメージがありますが、一般病院と仕事内容がどう違うのか、なぜ大変なのか具体的なイメージが湧かない人もいると思います。
実のところ、大学病院と一般病院の看護師の仕事内容はほぼ変わりません。
ただ一般病院にはない「教育機関」「研究機関」「地域の中核医療機関」としての役割があり、
- 学生・新人教育が業務で大きな比重を占めていること
- 一般病院では対応できない重症患者さんも多いこと
など大学病院ならではの特徴から、ハードワークになりやすい傾向にあります。
この記事では、大学病院勤務経験のある筆者が仕事内容の特徴を詳しく解説していきます。
- 大学病院看護師の仕事内容と特徴
- 大学病院に就職(転職)するメリット・デメリット
- 大学病院の看護師に向いている人
- 大学病院の看護師になるには?採用までのステップ
- 大学病院看護師の採用状況!若い人が多く中途採用は難しい?転職活動のポイントも
- 大学病院の看護師に関するよくある質問(Q&A)
大学病院での働き方や採用の現状についても触れているので、大学病院への就職・転職に興味がある方はぜひ参考にしてください。
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1. 大学病院看護師の仕事内容と特徴
大学病院の看護師の仕事内容は以下の通りで、一般病院とほぼ変わりません。
- 医師の診療の補助
- バイタルサイン測定
- 採血
- 点滴や注射、内服薬の管理・与薬
- 患者の移送
- 清拭・入浴など清潔ケア
- 食事の配膳・介助
- トイレ介助・おむつ交換など排泄ケア
- 体位交換
- ベッドメーキング
- 手術・検査がある患者さんへのオリエンテーション
- 看護師間でのミーティング
- 多職種でのカンファレンス
- 急変対応
- 患者さん・家族への精神的なケア
そのため、日々の業務に明確な違いはないと考えて差し支えないでしょう。
しかし、大学病院には「教育機関」「研究機関」「地域の中核医療機関」という一般病院にはない3つの役割があります。
こういった背景から、以下のような大学病院ならではの仕事内容があります。
- 1-1.専門性の高い医療・最先端の医療を提供している
- 1-2. 幅広い診療科での業務
- 1-3. 多職種と連携してチーム医療を提供している
- 1-4.多職種がいることで役割が細分化され看護業務に専念できる
- 1-5.パートナーシップナーシングシステムを導入している病院が多い
- 1-6.教育機関という側面があり、新人・看護学生の実習指導の機会が多い
それぞれ詳しく解説します。
1-1.最先端の医療を提供している
1つ目の特徴は、下記のような最先端の医療を提供していることです。
- 最新の超高精細CTの導入
- 心機能を3Dで自動解析できる装置の導入
- 手術支援ロボットの導入
- 次世代型手術室の設置
- がんや難病に対する先進医療の提供
- 新薬の治験
導入している設備や受けられる治療は病院ごとに異なりますが、一般病院にはなかなかない最新の設備を導入し最先端の医療を提供しているのが大きな特徴です。
医療はチームで提供するので、当然そこで働く看護師にも最先端の検査方法や治療に関する知識が要求されます。
1-2. 幅広い診療科での業務
2つ目は、幅広い診療科で看護師が働いているということです。
大学病院は専門性の高い医療を提供しており、病院によっては、病床数が1,000以上、外来の診療科だけで40部門弱ある所も珍しくありません。
地域の一般病院では対応できないような、専門性の高い治療を要する病態の患者さんも受診するので、看護師も疾患に関する専門的な知識やケアのスキルが求められます。
また、大学病院の看護師の勤務する場所は、病棟と外来だけにとどまらず様々な場所があります。
- 手術室
- 透析センター
- 救命救急センター
- 採血室
- 臓器移植センター
- 内視鏡室
- 入退院センター
- 集中治療室
- 周産期医療センター(MFICU・NICUなど含む)
- 看護外来
これらはその一例ですが、所属される部署によって看護師の仕事内容も大きく異なります。
病棟や集中治療室のように患者さんへの直接的なケアがメインの部署もあれば、入退院センターや看護外来のように相談業務がメインの部署もあります。
異動も定期的にあり診療科や部門が違えば一から学び直さならず、日々自己研鑽をおこなうことや変化のある環境への適応力を求められます。
こうした大変さもありますが、1つの病院で様々な働き方ができるのは大学病院の看護師ならではの魅力です。部署異動を経験しているうちに、自分にあったキャリアプランが見つかることもあります。
1-3. 多職種と連携してチーム医療を提供している
3つ目は、多職種と連携してチーム医療を提供していることです。
大学病院には、医師・看護師以外にもPT・OT・STや管理栄養士、薬剤師、臨床検査技師などコメディカルも多数勤務しています。
より良い医療を提供するために、多職種で合同カンファレンスを開き、それぞれの専門的な知見から意見をかわすこともあります。
一般病院では人数が少なく関わりを持つ機会がなかった職種と、連携してチーム医療を推進できるのは大学病院ならではです。
対象の患者さんが入院している場合、病棟看護師が中心となって多職種間の調整をおこなうこともあり、高いコミュニケーション能力が求められます。
様々な専門職と関わりながら医療をすすめていくので、看護師自身も幅広い知識を身に着けることができます。
筆者の経験
筆者が大学病院に勤務していた時、患者さんの病棟での歩行訓練やリハビリ計画をPTさんに病棟に来てもらい、提案してもらった経験があります。PTさんと相談しながら決めたリハビリ計画を実施し、患者さんの歩行機能が回復していく姿を見て、専門職が協力しあって患者さん中心の医療をおこなうチーム医療の力を感じました。
1-4.多職種がいることで役割が細分化され看護業務に専念できる
4つ目は、多職種がいることで役割が細分化され看護業務に専念できることです。
一般病院の看護師の場合、1病棟あたりの看護助手・クラークの人数が十分でないことが多く、配膳やベッドメーキング、病棟のオリエンテーション、物品の補充など、専門職でなくてもおこなえる業務も看護師がおこなわなければなりません。
大学病院の場合は、1病棟に配置されている看護助手やクラークの数が多いため、これらの業務を看護師にかわっておこなってもらえます。
物品の補充や書類・検体を運ぶメッセンジャー業務も専門のスタッフがいるので、看護師がおこなうことは少ないでしょう。
このように大学病院では、看護ケアに付随する様々な業務を多職種が分担しておこなっているので、看護師が純粋な看護業務に取り組める環境が整っています。
その分ケアの計画立案から実施・評価に至るまで、患者さん1人1人により質の高い看護を提供することを求められます。
筆者の経験
筆者が勤務していた病院では、病棟クラークの方が入院オリエンテーションや問診表のデータをカルテに入力してくれていました。
転職先の中・小規模の病院では、これらをすべて自分でおこなわなければならず、入院患者さんを担当するという業務が大学病院に勤務していた頃よりも大変に感じました。
1-5.パートナーシップナーシングシステムを導入している病院が多い
5つ目は、パートナーシップナーシングシステム( 以下PNS)を導入している病院が多いことです。
通常のチームナーシング制は1人で複数の患者さんを担当しますが、PNSは2人がペアとなって患者さんの看護をおこなうシステムで、福井大学病院によって開発されたものです。
2人で業務をおこなうことでスキルを補完しあったり、ミスが減らせたり、1人の業務負担が減らせるというメリットがあり、近年導入している大学病院が多いのです。
PNSを運用するためには通常のチームナーシングの倍の人員を必要となります。
一般病院は、大学病院と比べると規模が小さく人員も不足しているところが多いので、このシステムを導入している病院は少ないですが、規模の大きい大学病院はこういった体制が整っていることが多いです。
このように最新の看護方式でケアを提供しているのも大学病院の大きな特色です。
1-6.教育機関という側面があり、新人・看護学生の実習指導の機会が多い
6つ目の特徴は、大学病院は教育機関であり、新人・看護学生の実習指導の機会が多いことです。
大学病院の看護師には、自身の業務をこなしながら後輩の育成ができる指導力やマルチタスクをこなす能力が求められます。
大学病院の場合、付属の看護学部を持っている場合も多く看護学生の実習指導にあたる機会は一般病院よりも増えます。
また、毎年100人単位で新卒採用をおこなっている病院も多く、新人教育を任される機会も一般病院と比べると多くなります。
自身の担当患者の業務と並行して、学生が実習で良い学びを得られるように調整したり、新人が安全に看護技術を習得できるように指導したりしなければなりません。
大学病院で働く看護師の1日のスケジュール例
【日勤スケジュール】
8:30 | 申し送り・情報収集 患者の夜間の状態や処置内容を夜勤者から引き継ぎ
9:00 | ラウンド・環境整備 受け持ち患者の状態確認、病室の清潔保持
10:00 | 点滴交換・ケア・検査出し 輸液管理、清拭・体位変換、検査室への患者搬送
12:00 | 昼休憩 交代制で1時間の休憩時間
13:00 | カンファレンス・記録 多職種での症例検討、看護記録の記載
15:00 | ラウンド・ケア 午後の状態観察、処置・ケアの実施
16:30 | 夜勤への申し送り 1日の経過と夜間の注意事項を夜勤者に報告
17:15 | 業務終了 記録の最終確認後、退勤
【夜勤スケジュール(2交代制の場合)】
16:30 | 申し送り・情報収集 日勤者から患者の状態と夜間指示事項を引き継ぎ
17:30 | ラウンド・夕食介助 受け持ち患者の状態確認、食事摂取の支援
19:00 | 投薬・処置 夕方の内服薬配布、医師指示による処置の実施
21:00 | 消灯準備・ケア 就寝前の清拭・体位変換、病棟の消灯準備
24:00 | 深夜ラウンド・記録 定時の状態観察、看護記録の記載
3:00 | 仮眠・休憩 交代制で2時間程度の仮眠時間
6:00 | 朝のケア・検査準備 清拭・体位変換、朝の検査に向けた準備
8:00 | 朝食介助・投薬 朝食摂取の支援、朝の内服薬配布
8:30 | 日勤への申し送り 夜間の経過と日中の注意事項を日勤者に報告
9:30 | 業務終了 記録の最終確認後、退勤
【3交代制:準夜勤スケジュール】
16:30 | 申し送り・情報収集 日勤者から夜間に向けた引き継ぎ事項を確認
17:30 | ラウンド・夕食介助 受け持ち患者の状態確認、夕食摂取の支援
19:00 | 投薬・処置・ケア 夕方の内服薬配布、医師指示による処置とケア
21:00 | 消灯準備・環境整備 就寝前の準備、病棟内の清潔保持と安全確認
23:30 | 深夜勤への申し送り 夜間の経過と深夜帯の注意事項を深夜勤者に報告
0:30 | 業務終了 記録確認後、退勤
【3交代制:深夜勤スケジュール】
0:00 | 申し送り・情報収集 準夜勤者から深夜帯の注意事項を引き継ぎ
1:00 | 深夜ラウンド・記録 定時の状態観察、看護記録の記載
3:00 | 休憩時間 1時間程度の休憩・仮眠時間
5:00 | 朝のケア・検査準備 起床介助、朝の検査・処置に向けた準備
7:00 | 朝食介助・投薬 朝食摂取の支援、朝の内服薬配布
8:00 | ラウンド・環境整備 病室の清潔保持、患者の状態最終確認
8:30 | 日勤への申し送り 夜間の経過と日中の注意事項を日勤者に報告
9:00 | 業務終了 記録の最終確認後、退勤
2.大学病院で働くことのメリット・デメリット
ここでは、大学病院で働くことのメリット・デメリットを紹介します。
2-1.大学病院で働くメリット
以下が大学病院で働くメリットです。
- (1). 最先端の医療に触れられる
- (2). 教育・研修制度が充実している
- (3). 給与が高水準で福利厚生も充実している病院が多い
- (4). 専門看護師や認定看護師などスペシャリストを目指しやすい環境である
では、1つずつ詳しく見ていきましょう。
(1). 最先端の医療に触れられる
1つ目は、最先端の医療に触れられることです。
大学病院では日々最先端の医療を提供しており、新たな治療法、新薬、最新医療機器の扱いなど、看護師として勤務することで常に知識と技術の更新ができます。
また、これまでの治療法では改善がみられなかった患者さんを最新の医療を受けて症状が改善していく姿を見られるのは、大学病院ならではのやりがいや喜びを感じる場面でもあります。
(2). 教育・研修制度が充実している
2つ目は、教育・研修制度が充実していることです。
大学病院は教育機関という側面を持つため、一人前の看護師を育成するための教育制度が整っています。
看護技術や業務ができるようになったら教育は終わりではなく、その先のリーダーシップやマネジメント能力の開発などクリニカルラダーに沿って看護師として学び続けられる環境があります。
研修制度も整っており、専門・認定看護師の育成や国内外での研修、看護研究や学会参加に力を入れている病院も多くあります。中には、資格取得を支援する休業制度を設けている病院もあります。
また、日常的な看護技術や処置についても細かいマニュアルが用意され、根拠に基づいた看護をより重視する傾向があります。
(3). 給与が高水準で福利厚生も充実している病院が多い
3つ目は、給与が一般病院と比較すると高水準で福利厚生も充実している病院が多いことです。
大学病院の看護師の給与は、一般病院よりも高いと言われています。
以下は、令和2年度の大卒看護師の給与を全体平均と私立大学病院の平均とで比較した表です。
初任給 | 勤続10年目 | |
看護師の給与平均 | 270,292円 | 318,916円 |
私立大学病院の看護師給与 | 283,523円 | 361,386円 |
初任給では1万円以上、勤続10年目では4万円以上の差があり、大学病院看護師の方が全体平均よりも給与水準が高いことがわかります。(参考文献:2020 年 病院看護実態調査 報告書)
国立と私立、都市部と地方でも差はあり、一般的に都市部にある私立の大学病院のほうが給与水準は高いと言われています。
月収だけでなく私立大学病院はボーナスも高水準なことも多いので、過去のボーナス支給実績も確認しておくとよいでしょう。
また、病院自体の規模が大きいため働いている職員も多く、福利厚生が充実していることが多いのもメリットです。
看護師寮として借り上げのマンションが職場近くにあったり、託児所が併設されていたりと看護師が働きやすいような設備が充実しています。
病院によって福利厚生は異なるので、HPで確認してみてください。
(4). 専門看護師や認定看護師などスペシャリストを目指しやすい環境である
4つ目は、専門看護師や認定看護師といった領域のスペシャリストを目指しやすい環境であることです。
大学病院は、一般病院と比較すると専門・認定看護師の在籍人数が多く、患者さんのケアでの困りごとや処置方法などを専門的な観点からアドバイスをもらうことができます。
このようなスペシャリストが身近にいることは、今後看護師としてキャリアを築く際のロールモデルにもなります。
資格取得のための休職や奨学金貸与など支援制度が整っている病院もあり、キャリアアップしたい人にはぴったりの環境といえます。
2-2.大学病院で働くデメリット
以下が大学病院で働くデメリットです。
では、1つずつ詳しく見ていきましょう。
(1). 重症度の高い患者さんが多く忙しい
1つ目は、重症度が高い患者さんが多く忙しいことです。
大学病院はより高度な医療を提供しているため、一般病院よりも重症度が高い患者さんが多く入院しています。
重症患者さんの治療やケアには時間がかかりますし、そのような患者さんが多いことで業務量も増えます。
患者さんの状態把握のために始業時間よりも早く出勤して情報収集をしたり、時間内に記録や処置が終わらず残業になったりすることもあります。
実際に、筆者が新人時代は、始業の1時間前に出勤して情報収集をしたり、看護記録や計画の立案が終わらず日勤終了後も深夜勤の看護師が来る22時ごろまで病院に残っていたこともありました。
重症度が高い患者さんは急変リスクも高いため、急変対応のスキルも必要です。
患者さんの入れ替わりも激しいため、日々疾患についての勉強が必要とされ、終業後や休日のプライベートな時間も費やさないといけなければならないこともあります。
(2). 通常の看護業務以外に割く時間が多い
2つ目は、通常の看護業務以外に割く時間が多いことです。
例えば、新卒や若手の看護師の場合、以下のような業務があります。
- 時間内外の院内研修
- キャリアラダーに沿った課題の提出
- 病棟勉強会の準備
- (新人の場合)プリセプターや師長との業務の振り返り
- 疾患やケアに関する自己学習
また、経験年数を重ねると以下のような業務に関わることもあります。
- 新人指導
- 看護学生の実習指導・カンファレンスの参加
- 委員会活動
- 看護研究や学会発表
- 指導者として研修に参加
教育体制が充実していることはメリットにも上げましたが、これらは時間外でおこなわれることも多く、子育て中やプライベートも重視したい方にとっては負担が大きいと感じるでしょう。
夜勤をこなしながら、病棟での看護以外の業務をこなさなければならない環境に疲れてしまう方もいます。
(3). 職員の人数が多く人間関係が複雑
3つ目に大学病院は職員の人数が多く人間関係が複雑ということです。
大学病院は一般病院よりも看護師の配置人数が多く、その分病棟内の人間関係が複雑で難しいことがあります。
一般病院にも言えることですが、業務量が多くハードな分、ストレスを抱えている看護師も多く新人や技術が未熟なスタッフに対して当たりが強い人もいます。
また、付属の看護学部から就職する人も多くすでに採用者同士で人間関係が構築されているため、外部からの採用の場合、馴染むまで時間がかかったり、出身校の派閥に悩むケースもあります。
(4). 取得できる知識や技術が偏ってしまう
4つ目は、診療科や患者さんの年齢層によっても対応は異なりますが、取得できる手技や知識に偏ってしまうことです。
大学病院の診療科は一般病院よりも細分化されているため、より専門的な知識を深めることはできますが、一方でその領域に対する幅広い知識を得るのが難しくなります。
科によっては、研修医や医師がメインとなって採血・ルートキープをおこなうため、新人が手技習得の機会になかなか恵まれないというケースもあります。
採血・ルートキープなどの手技が習得できるか不安がある場合は、インターンシップの際に質問してみるのがおすすめです。
3.大学病院の看護師に向いている人
大学病院の看護師に向いている人の特徴は以下の3つです。
それでは、1つずつ詳しく見ていきましょう。
3-1.最先端の医療に触れ、看護師としてスキルアップし続けたい人
1つ目は、最先端の医療に触れ、看護師としてスキルアップし続けたい人です。
向上心が強く、看護師として日々技術・知識を磨き続けたい人には、大学病院はぴったりの職場です。
勤務している看護師もモチベーションが高い人が多いため、スタッフ同士でお互いを高め合い成長することができるでしょう。
3-2.新人教育や学生指導に興味がある人
2つ目は、新人教育や学生指導に興味がある人も大学病院はおすすめの職場です。
将来的には専門学校や大学の教員として看護に携わりたいという人にも、新人教育体制が確立しており学生指導の機会が多い大学病院は向いているでしょう。
3-3.体力やメンタルに自信がある人
3つ目は、体力やメンタルに自信がある人です。
大学病院に就職するデメリットでも挙げましたが、業務量がとにかく多く残業も多いのが大学病院看護師の現状です。
夜勤がある変則的なシフトの中でハードな業務をこなせる体力と体調管理能力が必要です。
また、大学病院は高度救命救急センターがあり三次救急指定されている病院も多く、重症度の高い患者さんが緊急入院してくることも日常的にあります。
全国から複雑な病態の患者さんが入院してくるため、重症度も高く急変リスクが高い患者さんも一般病院よりも多いでしょう。
このような環境で働くことは、看護師にとっての精神的負担も大きくなります。こういった環境や職員が多いことによる複雑な人間関係に疲弊してしまう人も少なくありません。
そのため、打たれ強く気持ちの切り替えができるメンタルの持ち主の方が大学病院の看護師に向いているでしょう。
4. 大学病院の看護師になるには?採用までのステップ
大学病院で働きたいと考えていても、「どのような準備が必要なのか」「一般病院との違いは何か」など、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
ここでは、大学病院の看護師として採用されるまでの具体的なステップを詳しく解説します。
新卒採用と中途採用それぞれの流れ
大学病院の採用は、新卒採用と中途採用で大きく異なる特徴があります。それぞれの流れと特徴を理解して、自分に適した応募方法を選択しましょう。
新卒採用の場合
新卒採用は毎年3月から4月にかけて一斉に実施されることが一般的です。看護師国家試験の合格発表後に最終的な内定が確定するため、国家試験の準備と並行して就職活動を進める必要があります。
必要な学歴は、看護系大学、看護短期大学、看護専門学校のいずれかを卒業見込みであることが基本要件です。
ただし、大学病院によっては4年制大学卒業者を優遇する傾向もあり、将来的な研究活動への参加や管理職候補としての期待から、学士号を持つ応募者が有利になる場合があります。
選考スケジュールは以下のような流れで進みます:
- 6月〜8月:病院説明会・インターンシップ
- 9月〜11月:エントリー受付・書類選考
- 12月〜2月:面接・小論文試験・適性検査
- 3月〜4月:内定・国家試験合格後の最終確定
中途採用の場合
中途採用は通年で実施されており、各病院の看護師不足の状況に応じて随時募集が行われます。新卒採用と比較して、即戦力としての期待が高く、実務経験やスキルが重視される傾向があります。
必要な要件として、看護師免許を有し、一定期間の臨床経験(多くの場合2年以上)を積んでいることが求められます。また、大学病院特有の高度医療に対応できる知識と技術を持っていることが評価されます。
中途採用の選考は比較的短期間で進むことが多く、書類選考から面接まで1〜2ヶ月程度で完了するケースが一般的です。ただし、専門性の高い診療科や管理職候補の場合は、より詳細な選考が行われることもあります。
採用試験で重視されるポイント
大学病院の採用試験では、一般病院とは異なる独特の評価基準があります。これらのポイントを理解して対策を立てることが合格への近道となります。
面接で問われやすいテーマ
面接では、あなたの看護師としての価値観や将来への展望が深く掘り下げられます。特に重視されるのは以下の点です。
チーム医療への貢献意識について、具体的なエピソードを交えて説明できることが重要です。
大学病院では医師、薬剤師、理学療法士、ソーシャルワーカーなど多職種との連携が不可欠であり、これまでの経験でどのような協働を行ってきたか、今後どのように貢献していきたいかを明確に述べられるよう準備しておきましょう。
研究への意欲も大きな評価ポイントです。大学病院は教育・研究機関としての側面があるため、「なぜ研究に興味を持ったのか」「どのような分野で研究を進めたいか」「研究成果をどのように臨床に活かしたいか」といった質問が予想されます。学会発表や論文執筆の経験がある場合は積極的にアピールしましょう。
小論文で求められる視点
小論文では、看護の専門知識だけでなく、大学病院の役割や社会的使命に対する理解が問われます。頻出テーマとして、「高度医療における看護師の役割」「医療安全とチーム医療」「患者中心の医療と看護の質向上」などがあります。
論文を書く際は、単なる知識の羅列ではなく、自分の経験や考えを具体的に盛り込み、大学病院ならではの特色を踏まえた内容にすることが重要です。また、最新の医療情勢や看護研究の動向についても触れられるよう、日頃から情報収集を心がけておきましょう。
評価される志望動機の書き方
志望動機は採用試験において最も重要な要素の一つです。大学病院への志望動機では、一般病院では得られない経験や成長への期待を具体的に表現することが求められます。
「なぜ一般病院ではなく大学病院なのか」を明確にする
この質問に答えるためには、大学病院と一般病院の違いを深く理解し、自分のキャリア目標との関連性を明確にする必要があります。
例えば、「高度な医療技術を学び、専門性を高めたい」という動機の場合、具体的にどのような技術や知識を身につけたいのか、それがなぜ大学病院でなければ実現できないのかを詳しく説明しましょう。
「最新の医療機器や治療法に触れることで、より質の高い看護を提供したい」「稀な疾患の患者さんへの看護を通じて、幅広い知識と技術を習得したい」といった具体的な表現が効果的です。
研究や教育への関心がある場合は、「臨床で感じた疑問を研究によって解明し、看護実践の向上に貢献したい」「後進の指導を通じて看護の質向上に寄与したい」といった長期的な視点での動機を示すことが重要です。
「その病院で何を学び、どう貢献したいか」を具体化する
志望する大学病院の特色や強みを事前に詳しく調べ、自分の目標と照らし合わせて具体的な学習計画と貢献方法を述べることが求められます。
まず、その病院が力を入れている診療分野や研究領域を把握し、自分の興味やこれまでの経験との関連性を見つけましょう。
例えば、がん治療に定評のある病院であれば、「がん患者さんとその家族への包括的な支援について学び、緩和ケアの専門知識を深めたい」といった具体的な学習目標を設定できます。
貢献方法については、即座に大きな成果を期待するのではなく、段階的な成長プロセスを示すことが重要です。
「まずは○○科で基礎的な知識と技術を習得し、将来的には専門看護師として○○分野のリーダー的役割を担いたい」「臨床経験を積んだ後、研究活動に参加し、エビデンスに基づいた看護実践の普及に貢献したい」といった長期的なビジョンを示しましょう。
また、その病院の理念や方針に共感していることを示すことも大切です。
病院のウェブサイトや出版物を参考に、理念と自分の価値観の共通点を見つけ、それを志望動機に盛り込むことで、より説得力のある内容になります。
志望動機を書く際は、抽象的な表現は避け、具体的なエピソードや数値を用いて説得力を高めることを心がけてください。また、一方的な受益だけでなく、自分がその病院にもたらすことができる価値についても必ず言及し、相互利益の関係を築けることをアピールしましょう。
5.大学病院看護師の採用状況!若い人が多く中途採用は難しい?転職活動のポイントも
次に大学病院看護師の採用の現状や中途採用者が転職活動する際のポイントを紹介します。
5-1.大学病院看護師は新卒採用がメイン
1つ目に大学病院看護師は新卒採用がメインという現状があります。
毎年100人単位で新卒を採用している病院も多く、付属の看護学校や看護学部出身者も多いのが特徴です。
もちろん、付属の学校出身でないからと言って採用してもらえないということはありませんが、新卒を大量に採用していることや、業務のハードさから、転職する看護師は体力のある20代~30代が多いです。
5-2. 20代後半~30代の中堅層が薄いという現状もある
大学病院は、若手の看護師が多い一方で、20代後半~30代の中堅層が薄いという現状もあります。
結婚や出産を機に家庭と仕事の両立を図れずに退職してしまう看護師もいるからです。
病院側も託児所を併設したり、時短制度を設けたりと努力はしているものの、業務は依然としてハードなため、子育てをしながら続けることに困難に感じてしまう人は多いのです。
5-3.中途採用者の募集は少ないのが現状。転職活動には即戦力をアピールすると有利
中途採用者は、募集自体をしていない病院もあり、残念ながら採用枠が少ないというのが現状です。
前項で挙げたように、大学病院は新卒採用者が多いため中途採用をおこなわなくてもスタッフの人数が充足しているからです。
また、一般病院が年中求人広告が出ているのに対し、大学病院の場合はそういったケースは少なく、新卒採用と同時に年に1回のみという場合も多くなっています。
このように、中途採用で大学病院に転職することは、新卒採用よりも難易度が高い現状はあります。
ただ、中堅看護師の層が薄い大学病院では、看護師として一通りの業務ができて夜勤や残業をこなせる体力がある20代~30代の看護師は、即戦力として重宝されます。
転職活動の際は、自分の今まで働いてきた領域で身に着けたスキルや経験、夜勤や残業など多忙な業務もこなせることをしっかりアピールしましょう。
6. 大学病院の看護師に関するよくある質問(Q&A)
大学病院での勤務を検討する際、様々な不安や疑問が生じるものです。ここでは、多くの方が気になるポイントについて、実際の現場の状況を踏まえて詳しくお答えします。
Q. 大学病院では採血や点滴の機会が本当に少ないですか?
A. これは大学病院に関する代表的な誤解の一つです。確かに一部の大学病院では研修医が採血や点滴を担当することがありますが、実際には看護師が行う機会も十分にあります。
特に夜勤帯や休日、緊急時には看護師が主体的に採血や点滴を実施することが多く、基本的な看護技術が身につかないということはありません。むしろ、大学病院では特殊な治療に伴う高度な点滴管理や、複雑な疾患を持つ患者さんへの採血技術など、一般病院では経験できない技術を習得できる機会があります。
また、診療科によっても状況は大きく異なります。外科系の病棟や救急外来では、看護師による採血や点滴の機会は非常に多く、むしろ高い技術レベルが求められることもあります。入職前に希望する診療科の業務内容を具体的に確認することをお勧めします。
Q. 人間関係は複雑で、派閥などもあるのでしょうか?
A. 人間関係の複雑さは、大学病院に限った問題ではありませんが、確かに一般病院とは異なる特徴があります。
大学病院では医師、看護師、研究者、事務職員など多様な職種が働いており、それぞれに異なる価値観や目標を持っています。また、教授や診療科長の影響力が強く、学閥や出身大学による人脈が存在することも事実です。
しかし、これらが必ずしも「派閥」として対立構造を生むわけではありません。多くの大学病院では、患者中心の医療を提供するという共通の目標のもと、職種を超えた協力関係が築かれています。
人間関係を良好に保つためには、以下の点を心がけることが大切です:
- 各職種の専門性を尊重し、謙虚な姿勢で学ぶ
- 積極的にコミュニケーションを取り、信頼関係を築く
- 病院の理念や目標を理解し、チーム医療に貢献する意識を持つ
入職前の病院見学では、スタッフ同士のコミュニケーションの様子を観察し、自分に合った職場環境かどうかを確認することをお勧めします。
Q. お休みの日も勉強会や研究で潰れることが多いというのは本当ですか?
A. 大学病院では確かに勉強会や研究活動が活発に行われており、休日に参加する機会もあります。しかし、すべてが強制参加というわけではなく、個人の成長目標やキャリアプランに応じて選択できる場合が多いのが実情です。
勉強会について 院内で開催される勉強会の多くは平日の業務時間内に実施されますが、著名な講師を招いた特別講演や学会形式の研究発表会などは土日に開催されることがあります。これらへの参加は基本的に任意ですが、専門知識の向上や最新情報の習得のために多くの看護師が積極的に参加しています。
研究活動について 研究活動への参加は個人の意欲や職場の方針によって大きく異なります。研究チームに参加する場合、データ収集や分析作業で休日を使うこともありますが、これは将来の専門看護師資格取得や管理職への昇進において重要な経験となります。
ワークライフバランスを重視したい場合は、入職時にその旨を伝え、研究活動の参加度合いを調整することも可能です。多くの大学病院では、看護師の多様な働き方を支援する体制が整備されており、個人の事情に配慮した働き方が選択できるようになっています。
Q. 大学病院の看護師は公務員ではないのですか?
A. これは多くの方が混同しやすいポイントです。大学病院の雇用形態は、その病院の運営主体によって異なります。
国立大学附属病院の場合 2004年の国立大学法人化以降、国立大学附属病院の看護師は「国立大学法人職員」となり、厳密には公務員ではありません。ただし、準公務員的な性格を持ち、安定した雇用条件や充実した福利厚生を享受できます。給与体系は国家公務員に準じており、昇給や賞与も安定しています。
公立大学附属病院の場合 都道府県や市町村が運営する公立大学の附属病院では、看護師は「地方公務員」となります。この場合は正式な公務員としての身分を持ち、地方公務員法が適用されます。
私立大学附属病院の場合 私立大学が運営する附属病院の看護師は、一般企業と同様の「民間企業職員」です。給与や福利厚生は各病院の規定に従いますが、多くの場合、一般病院と比較して良好な待遇が提供されています。
雇用の安定性を重視する場合は、国立や公立の大学病院を、給与の上昇可能性を重視する場合は私立大学病院を検討するなど、自分の価値観に合った選択をすることが重要です。
Q. 中途採用の倍率は高いのでしょうか?また、何歳くらいまで可能ですか?
A. 大学病院の中途採用倍率は、診療科や募集時期、その病院の知名度によって大きく異なりますが、一般的には3〜10倍程度とされています。
倍率に影響する要因
- 診療科:人気の高いICUや手術室、外来などは倍率が高くなる傾向
- 勤務条件:日勤のみの部署や福利厚生の充実した病院は競争が激しい
- 地域性:都市部の有名大学病院ほど応募者が多い
- 募集時期:4月入職の募集は倍率が高く、年度途中の欠員補充は比較的低い
年齢制限について 明確な年齢制限を設けている大学病院は少ないものの、実際の採用傾向を見ると以下のような特徴があります:
- 20代後半〜30代前半:最も採用されやすい年代。即戦力としての期待と今後の成長可能性のバランスが良い
- 30代後半〜40代前半:豊富な経験を持つ即戦力として歓迎される。リーダーシップ経験や専門資格があると有利
- 40代後半以降:採用される場合もあるが、特殊な専門性や管理経験が求められることが多い
採用確率を高めるポイント
- 専門資格の取得(認定看護師、専門看護師等)
- 学会発表や研究活動の経験
- リーダーシップ経験や後進指導の実績
- その病院の特色に合致した臨床経験
- 継続的な学習意欲と成長への意識
年齢よりも、これまでの経験や今後の貢献可能性が重視される傾向があるため、自分の強みを明確にアピールできるよう準備することが重要です。
また、複数の大学病院に応募することで、採用の可能性を高めることも有効な戦略といえるでしょう。
7.まとめ
今回は、大学病院看護師の仕事内容の特徴や、大学病院に就職するメリット・デメリットを紹介しました。
大学病院は、専門性が高いことやや研究・教育機関の役割を担っていることから、一般病院と比較すると多忙な現状はあります。
しかし、最新の医療に触れながらスキルアップしたい人にはぴったりの職場です。
この記事を読んで、大学病院で勤務する看護師を具体的にイメージできるようになれば幸いです。
自分の特性やなりたい看護師像とも照らし合わせて、就職・転職活動の参考にしてみてください。