「准看護師になるにはどうすればいいの?」とお考えですね。
結論から言うと、准看護師として働くまでのステップは以下の通りです。
- 准看護師学校養成所に通い、2年間の教育課程を修了(働きながら通学も可)
- 准看護師試験に合格し免許申請手続きを行う
ですが、今から准看護師を目指す方は、養成所探しの前に本当に准看護師を目指すかどうか一度検討しておくべきです。というのも、准看護師は制度そのものを廃止する動きがあるからです。
また、准看護師学校養成所の数・入学者は年々減少しています。更に准看護師は、看護師と比べて有効求人数が圧倒的に少なく、希望する条件に合致する就職先を探すのも難しい状況です。
この記事では、准看護師になるためのステップと、准看護師を取り巻く現状(日本看護協会と日本医師会の意見の相違など)について詳しく解説します。
この記事を読めば准看護師になる方法がわかり、すぐに准看護師になるための行動を始めることができます。
1.准看護師になるには?養成所入学から資格取得までの流れ
准看護師になるまでの流れは以下の通りです。
- (1).准看護師学校養成所に通う
- (2).准看護師試験を受験して資格を取得する
期間は最短で2年かかります。
(1).准看護師学校養成所に通う
まずは准看護師学校養成所に入学します。
養成所の通学期間は2年間。主に1年目は座学、2年目から実習を行います。
通学費用は、月に25,000~40,000円。年間30~48万円が目安です。教材・実習費を加えると2年間で100万円ほどかかると考えておきましょう。
なお、准看護師学校養成所は全国で179校あります。(2020年時点)
(2).准看護師試験を受験して資格を取得する
養成所の教育課程を修了すると、准看護師試験の受験資格を得られます。
試験は都道府県が実施し、複数県で受験可能です。下記科目から150問、出題されます。
人体の仕組みと働き、食生活と栄養、薬物と看護、疾病の成り立ち、感染と予防、看護と倫理、患者の心理、保健医療福祉の仕組み、看護と法律、基礎看護、成人看護、老年看護、母子看護及び精神看護 |
合格後は、免許申請手続きを行います。
合格率は99%とかなり高い
令和2年度に実施された准看護師試験は、受験者15,198人のうち合格者は15,052人。合格率は99.0%とかなり高いです。看護師養成校でしっかり学習すれば、間違いなく合格できる難易度といえます。
参考:厚生労働省「令和2年度准看護師試験の実施状況」
2.准看護師は働きながら目指せる
准看護師は働きながらでも目指せます。准看護師養成所には、全日制・半日制があり、どちらも平日の昼間がびっしり埋まることはありません。
全日制 | 半日制 | |
授業 | 朝から夕方まで | 平日の午後や夜間 |
通学日 | 週3日が多い | 週5日が多い |
期間 | 2年 | 2年 |
働けるタイミング | 授業がない日 | 平日の午前中 |
各学校によって若干の違いはありますが、基本的にはこの2つのパターンがありますので、ご自身のライフスタイルにあわせて選ぶことができます。
働きながら資格取得したいのであれば、事前に志望する養成学校の時間割を確認し、仕事を持ちながらでも無理なく通えるかを確かめておきましょう。
ポイント:学校に通いながら看護助手として勤務するのがおすすめ
医療機関で看護助手として働きながら、養成所に通うのもおすすめです。
実務に携わりながら勉強することで、授業の内容の習得力を高められ、実践的なスキルを身につけやすくなるからです。
平日の午前中などは看護助手として勤務し、半日制の学校に通いながら、資格取得を目指す方も少なくありません。
指定された期間、勤務することを条件に奨学金を提供してくれる病院もあります。
3.資格取得前に知っておくべき「准看護師制度廃止」の流れ
実は准看護師は、目指す人・養成所ともに減少傾向にあり、日本看護協会は准看護師制度そのものの廃止を主張しています。
このため、将来的には正看護師・准看護師が一本化される可能性もあります。
正看護師・准看護師の一本化の流れ
日本看護協会は、長らくの間「准看護師の新規養成は停止し、看護師に一本化すべき」という主張を行っています。
正看護師・准看護師の一本化の流れは着々と進んでおり、2016年には、准看護師が正看護師になるための教育課程(2年・通信制)の入学要件が、変更されました。
准看護師が看護師になる(2年課程入学)ために必要な就業経験年数
- 旧:10年以上
- 新:7年以上
要するに、准看護師が看護師にキャリアアップしやすいように制度の改革を行い、看護師一本化に向けた動きが加速しているのです。
日本看護協会が准看護師の新規養成停止を主張する理由
日本看護協会が准看護師の新規養成停止を主張する理由は、3つ考えられます。
理由1.創設時の状況と違いが多い
そもそも准看護師制度は60年以上も前、第二次世界大戦中の看護師不足の中で創設されたものだからです。つまり、現在の状況とまるで違う時代作られた制度が、今もなお当時と同じ形で残っているのです。
例えば、高校進学率が低かった当時でも資格取得できるよう、養成所入学要件は「中学校卒」とされており、今も変わっていません。
ですが、医療技術の発展・看護ニーズの多様化に伴い、現場で求められる能力も高くなっており、准看護師養成の教育水準では対応が難しくなっているという現状があります。
理由2.准看護師の負担が大きい
准看護師の負担が大きいことも、一本化の理由です。
そもそも准看護師と看護師では、養成の段階で学ぶ前提が違います。
- 准看護師の養成:指示を受けて看護処置を行う能力を身につける
- 看護師の養成:患者をアセスメントし、判断・予測を行う能力を身につける
准看護師の養成課程は「医師または看護師の下で安全に実施できる能力を養う」ことを目的としたものに過ぎません。
ですが、実際のところ医療現場では「(指示の有無以外)看護師と全く同じ看護処置」ができます。
「学ぶこと(前提)が違うのに、実務内容はほとんど同じ」という捻じれが生じます。
准看護師は、養成所で学んでいないようなことを現場で求められることもあり、その部分は自分で学ぶしかありません。これは准看護師に相当な負担を課していると言えるでしょう。
理由3.看護師との待遇差が大きい
准看護師と正看護師は、実務内容に大きな違いはないものの、待遇にはかなり差があります。
出典:日本看護協会資料
事実、准看護師の給与は看護師より低く、月に6~9万ほどの差があります。生涯賃金に換算すると4,000万円もの違いが生じます。
このような待遇差も、制度廃止の理由の一つのようです。
現時点で准看護師になる人はかなり少ない
そもそも准看護師になる人は、かなり少ないのが現状です。
事実、准看護師養成所の数は年々減少しており、入学者は過去20年で4分の1にまで減っています。
出典:日本看護協会資料
また、養成所卒業後に准看護師として働く人の割合は、入学者のおよそ半分(54.5%)しかいません。
残りは、就業せずすぐ進学して正看護師を目指す方や退学する方(2割は退学)が多くを占めています。
日本医師会の反発により、一本化は進んでいないまま
日本看護協会の主張に対して、日本医師会は真逆の考えを示しています。
日本医師会の主張内容としては、「准看護師の数が減れば、地域医療の人材確保ができなくなる」というものです。
このような意見の対立もあり、准看護師制度は未だ存続していますが、前述の通り養成所数・入学者数も減り続けていることから、一本化に向けた動きが強まることも予想されます。
4.そもそも准看護師とは?
准看護師の仕事内容や待遇を詳しく解説します。
4-1.准看護師の仕事内容
准看護師は、各都道府県知事の免許を得て、医師・歯科医師・看護師の指示に基づいて、療養上の世話や診療上の補助などを行います。
具体的には、血圧・体温・脈拍などの測定、点滴、注射・採血、食事介助、排せつ介助、入浴介助、体位変換、手術の補助、夜勤巡回、患者さんの移送、カルテの記載などが主な業務となります。
4-2.准看護師と正看護師との違い
正看護師 | 准看護師 | |
免許 | 厚生労働大臣免許 | 都道府県知事免許 |
業務に関する法律上の位置づけ | 政府より免許を受けて、傷病者若しくはじょく婦(褥婦(じょくふ)=出産後の女性)に対する療養上の世話、又は診療の補助を行うことを業とする者(保助看法第5条) | 都道府県知事の免許を受けて、医師、歯科医師又は看護師の指示を受けて、前条(第5条)規定することを行うことを業とする者(保助看法第6条) |
養成学校への入学要件 | 高校卒業 | 中学校卒業 |
教育 | 3年/97単位以上/講義・実習3,000時間以上 | 2年/講義・実習1,890時間以上 |
保健師・助産師取得 | 取得可能 | 取得不可 |
専門看護師・認定看護師資格 | 取得可能 | 取得不可 |
准看護師の仕事の範囲は正看護師と変わりません。
正看護師と大きく異なる点は以下の2点です。
- 国家資格ではない
- 医師や正看護師の指示がないと業務を行えない
准看護師は、医師や正看護師の指示のもとにさまざまな業務を行います。
そのため、自らの判断で業務をおこなったり、ほかの看護師に対して指示を出したりすることはできません。
4-3.准看護師資格取得のメリット
准看護師の資格取得にはおおまかに2つのメリットがあります。
(1).資格取得までにかかる期間が正看護師資格に比べて短く費用も安い
准看護師になるためには、最短で2年かかります。正看護師になるには最低3年です。
正看護師の資格を取得するよりも期間が短いため、必然的に資格取得までにかかる費用も少なくて済みます。
よって、できるだけ早く看護の仕事に就きたい、費用をかけずに資格を持って看護職として働きたい、という人に最適な資格と言えます。
(2).准看護師試験は同年に複数回受験できる
准看護師試験は、各都道府県(6ブロック)で開催されており、試験日が各都道府県(6ブロック)で異なるため、同年に複数回の受験ができます。
各都道府県の准看護師試験受験要項に沿って願書提出・受理が必要です。
4-4.准看護師の平均年収
准看護師の月収の相場は約22万~35万円、パート勤務の場合、時給の相場は1,500~2,000円程度です。
准看護師の平均年収と正看護師の平均年収を比較しました(2017年調査結果)。
正看護師 | 准看護師 | |
全体 | 478万2,700円 | 405万6,800円 |
男性 | 489万4,200円 | 431万6,900円 |
女性 | 477万800円 | 402万9,500円 |
准看護師は正看護師に比べて年間で約70万円程度低い金額になります。
5.【FAQ】准看護師を目指す人からの質問と回答
Q1.子育てしながら資格取得は可能ですか
子育てと学習の両立は非常にハードになりますが、看護師養成校に通うことができれば資格取得は可能です。
実際に多くの先輩たちが子育てをしながら資格取得に成功しています。
資格取得の後も、託児所完備の病院を選べば、准看護師として働きながら子育てすることができます。
Q2.准看護師養成学校で利用できる奨学金はありますか
准看護師養成学校で利用できる奨学金は3種類あります
1.都道府県や自治体の奨学金、生活扶助
准看護養成学校へ通う多くの方が利用している一般的な奨学金制度です。
- 一般的に毎月の授業料程度の金額が支給される
- 卒業後、指定病院で決められた期間就労することで返済が免除される
一部地域では実施されていない場合もあるので利用したい場合は確認してください。
2.病院附属学校の奨学金、生活扶助
各病院や病院グループが提供する奨学金制度です。
- 病院によって制度内容はさまざま
- 一定期間その病院に勤務することが条件の場合もある
- 条件等のない奨学金制度もある
- 返済免除の制度も各学校によって異なる
- ほかの奨学金制度と併用可能なことが多い
病院附属学校の奨学金制度を受けたからといって必ずしも卒業後、その病院で働かなければならないというわけではありませんが、卒業したらその病院に就職するという方が多いようです。
各学校ごとに制度内容が違うので、事前にしっかり確認しましょう。
3.日本学生支援機構の奨学金
日本学生支援機構は日本最大規模の公的な奨学金制度で、経済的理由で修学が困難な状態にある優れた学生に学資の貸与を行う制度です。
- 准看護学校の場合、専修学校区分で申請を行う
- 返還免除はなく、卒業後働きながら返済が必要
- 無利息の「第一種」と利息ありの「第二種」がある
- 少額融資もあり(例/月額3万円~)
学力や家計面などで選考が行われます。
上記のほか医師会所属病院で学費減免、生活扶助を受けることができたり、複数の奨学金を同時に利用できたりするケースもありますので、奨学金利用を考えている方は事前に確認をしておきましょう。
Q3.准看護師から正看護師になる方法を教えてください
准看護師から正看護師になるには3つのルートがあります。
ただし、最終学歴などにより選択できないルートもありますので注意が必要です。
1.全日制で2年間学ぶ
看護短大、高等学校専攻科、看護師養成校の全日制で2年間修学します。
- 働きながらの進学は困難
- 短期間で看護師の資格を取得し、早く就職をしたいという方におすすめ
※最終学歴が中学校卒業の方の注意点
・看護短大、高等学校専攻科への進学は不可
・看護師養成校への進学は、准看護師免許取得後3年以上の実務経験が必要
2.定時制で3年間学ぶ
看護師学校や養成所の「定時制/昼間部」もしくは「定時制/夜間部」で、それぞれ3年間修学します。
- 学校の時間以外は准看護師として働くことが可能
- 働きながら学校に通いたい方におすすめ
※最終学歴が中学校卒業の方の注意点
・看護師養成校への進学は、准看護師免許取得後3年以上の実務経験が必要
3.通信制で2年間学ぶ
准看護師資格取得後、7年以上の実務経験がある人が対象の通信学習を主とする課程です。
- 仕事を続けながら、看護師国家試験の受験資格を得るために必要な単位の修得が可能
- 通信制を選択できるのは准看護師の実務経験7年以上に限られる
履修科目の単位修得方法は、各学校で異なります。
希望する学校の学習システムを事前に確認してください。
まとめ
准看護師になりたいのであれば、准看護師養成学校に入学して試験に合格する必要があります。
准看護師養成学校には、半日制の学校もあるので、働きながら准看護師を目指すことが可能です。
無資格でも看護助手等、医療系の仕事をすることができますので、医療系の仕事をしながら学校に通うこともできます。
この記事が准看護師を目指すあなたに役立つことを願っています。