「病棟看護師の仕事内容が知りたい」「きついのだろうか」と気になりますよね。
率直に申し上げると、病棟看護師の仕事はかなりきついです。この記事では病棟看護師のメリットもお伝えしますが、それを魅力と思えないくらい大変な職場もあり、四六時中辞めることばかり考えてしまうほどです。
しかし、この先もずっと看護師資格を使って仕事をするなら、病棟経験はとても重要です。病棟経験を積んでおくと、どの職場でも活かせるスキルが身に付き、今後の転職でも有利になります。
身体を壊してまで働く必要はありませんが、自分に合いそうな職場があれば、経験しておいて損はありません。
このページでは、元看護師で人材コンサルタントの私が、病棟看護師の仕事内容についてご紹介します。
全て読めば、病棟看護師として仕事をするイメージができるでしょう。
1.病棟看護師の仕事内容
病棟看護師は、「患者のケア」「検査・処置」「外来との連携」「事務的な業務」などを通じて、24時間体制で患者を見守る仕事です。
入院患者に必要な看護をおこなうことに加え、外来や他の診療科と連携、患者さんが病院を移る時の申し送りなど、柔軟性が問われる場面も多くあります。
1-1.病棟看護師の日勤の仕事内容
病棟看護師の日勤の主な仕事は、「診療の補助」と「療養上の世話」です。
医師が行う診察のサポート全般を担当します。
夜勤看護師からの申し送りを受け、患者さんの情報共有をすることから始まり、その日のスケジュールを見直した後、以下の業務に取りかかります。
患者のケア
病棟看護師は患者さんが病院内で快適に過ごせるよう、入院中の生活をサポートします。
- 清拭や入浴などの清潔ケア
- 検温、バイタルチェック
- 点滴や内服薬など、薬の管理
- 食事の配膳や片付け
- その日に入院した患者さんからの情報収集
- 患者のメンタルケア(患者の不安を聴いて、受け入れ、必要があれば保健指導をする)
- 移動介助、補助
- 保健指導
- 環境整備
- 家族との調整
検査・処置
検査・処置も病棟看護師の業務です。患者さんの状態を確認して、必要な情報共有や治療に活かします。
- 採血
- 尿検査
- 心電図検査
- その他各診療科別における検査
- 創傷処置
- 外傷処置
- 褥瘡処置
- 気管切開口、胃瘻、ストーマ等の瘻孔が確立するまでの創部の処置
- 医師の指示に基づく点滴や採血
- 各検査室への搬送
- 検査の介助・補助
- 予定されている検査とその注意事項の説明
薬の管理や検査、治療に関する業務が主な仕事内容です。
事務的な業務
患者さんの対応をしていない時間は、以下のような事務的な業務をおこなっています。
チーム医療の観点からも、記録や情報共有は非常に重要です。
- カルテへの記録
- 検査結果や医師からの指示確認
- カンファレンスで患者さんの情報共有
- 看護計画立案、修正、追加
診断に基づいて目標・計画を立案する「看護計画」の記述も仕事の一つです。
記述後はその計画書をもとに患者さんや家族に看護計画を説明し、同意が得られればサインをもらいます。
出典:ナース専科
こういった書類を作成し師長に提出する必要がありますが、病棟看護師にとってかなり負担となるようです。
出典:Twitter
外来など他部署との連携
病棟看護師は、患者さんが回復に向かうために、他部署と連携して、検査や治療を進めていく役割もあります
例
- 検査技師や医師、他部署スタッフに申し送り
- 検査室や処置室、治療を行う場所への送迎
- 外来と連携し、入院患者の受け入れ
また、病棟や病院が変わる際は、その時の患者さんの状態に応じて看護計画を調整し、申し送りを行います。
看護師間でも、勤務終わりに、夜勤看護師に申し送りをすることで、継続した看護が行えるようにしていきます。
1-2.病棟看護師の夜勤の仕事内容
病棟看護師が夜勤で出勤したら、まず日勤看護師からの申し送りを受けます。
患者さんの様子を一通り確認した後、以下の業務を中心に進めていきます。
患者のケア
夜勤看護師は夕食の配膳や、病棟の見回りをおこなった後に、21時頃に消灯をおこないます。
- 夕食の配膳
- インスリン注射や内服薬の確認
- 病棟の見回り
- ナースコールの対応
- トイレの介助
- 消灯
また、眠れない患者さんへの対応などのメンタルケアも大切な仕事です。
見回り(ラウンド)
夜勤看護師は、患者さんが就寝後も見回りをしながら、ナースコール対応や点滴の管が外れていないかの確認などを行います。
- 就寝前、起床後の検温
- ナースコール対応
- 寝たきりの患者の体位変換
- 患者の容態確認と対応
基本的に見回りは約2時間に1回の病院が多いですが、重症患者を受け持っている場合はその状態に合わせた確認と、必要な処置をおこないます。
その他
他にも日勤と同様に事務作業や、外来との連携(急患の受け入れなど)も対応します。
- カルテへの記録
- 急患の受け入れ
- 長時間手術から戻ってきた患者への対応
- 点滴の準備
- 委員会活動の準備
急患の受入による緊急入院などが発生した際は、少ない夜勤看護師で対応する必要があるため、慌ただしい夜になります。
退勤時に、日勤に申し送りをして業務終了です。
2. 病棟看護師のスケジュール例
病棟看護師の1日のスケジュールは、その病院が「二交代制」と「三交代制」のどちらを導入しているかによって異なります。
「三交代制のみ」か「二交代制・三交代制混合」というシフト形態が一般的なようです。
2-1. 二交代制の場合
二交代制は、「⑴ 日勤|8:30〜17:00」と「⑵ 夜勤|16:30〜9:00」の2パターンに分かれており、それぞれ勤務時間内のスケジュール例は次の通りです。
⑴ 日勤|8:30〜17:00
二交代制、日勤の場合
- 08:30|出勤
着替えをおこない、当日の準備を開始する(情報収集など) - 8:50|申し送り
患者の状態を夜勤担当者から引き継ぐ - 9:30|担当患者への挨拶回り
患者の容態を確認し、声掛けをおこなう。その後、必要な情報共有があれば対応する - 10:00|担当患者へのケア
点滴、採血、摘便、清潔ケア、体位変換、入院対応など。必要に応じて、本人や家族からヒアリングをする - 11:30|昼食前のケア
各患者に飲料を届けながら、食前薬の内服介助などをおこなって回る - 12:00|食事介助
昼食の配膳、介助をおこなう - 12:45|昼休憩
交代で休憩に入る(1時間の場合が多い) - 13:30|担当患者へのケア
敷地内の散歩、軽いリハビリ、会話など、それぞれ対応する - 15:00|カルテへの記録
当日の担当患者の記録を作成する。変化が大きかった患者がいた場合、リーダーに相談や情報共有する - 16:30|申し送り
夜勤担当者へ申し送りをおこなう - 17:00|業務終了
⑵ 夜勤|16:30〜9:00
二交代制、夜勤の場合
- 16:30|出勤
着替えをおこない、当日の準備を開始する - 16:45|申し送り
患者の状態を日勤担当者から情報収集する - 17:00|ラウンド(巡回)
バイタルサインの測定や観察、食前薬の与薬 - 18:00|夕食の介助
夕食の配膳、介助をおこなう。患者によっては口腔ケアも
患者の容態を確認し、声掛けをおこなう。その後、必要な情報共有があれば対応する - 19:00|担当患者へのケア
点滴、採血、摘便、清潔ケア、体位変換、ナースコール対応など。検査や手術終了後の患者さんのお迎え
20:00|巡回
夜の検温、血圧などのバイタルチェック、消灯準備をする - 21:00|消灯
適宜ナースコール対応、医師の指示に応じた睡眠剤投与、トイレ介助をおこなう
休憩 - 23:00|巡回(2時間ごと)
病室を回り点滴を替えるなど、患者さんの状況をチェック。 - 23:30|事務作業
看護記録の入力や整理、翌日の指示を確認 - 2:00|休憩(仮眠)
約2~3時間の仮眠を取る - 6:00|起床時刻。巡回
点滴の確認、トイレ介助など - 7:00|朝食の介助
夕食の配膳、介助をおこなう。患者によっては口腔ケアも
- 8:00|カルテへの記録
当日の担当患者の記録を作成する。変化が大きかった患者がいた場合、リーダーに相談や情報共有する - 8:50|申し送り
日勤担当者へ申し送りをおこなう - 9:00|業務終了
2-2. 三交代制の場合
三交代制は「⑴ 日勤|8:30 〜 17:00」「⑵ 準夜勤|16:30 〜 01:00」「⑶ 深夜勤|00:30 〜 9:00」に分かれており、それぞれ勤務時間内のスケジュール例は次の通りです。
⑴ 日勤|8:30 〜 17:00
三交代制、日勤の場合
- 08:30|出勤
着替えをおこない、当日の準備を開始する - 8:40|申し送り
患者の状態を深夜勤担当から情報収集する - 9:30|担当患者への挨拶回り
患者の容態を確認し、声掛けをおこなう。その後、必要な情報共有があれば対応する - 10:00|担当患者へのケア
点滴、採血、摘便、清潔ケア、体位変換、入院対応など。必要に応じて、本人や家族からヒアリングをする - 11:30|昼食前のケア
各患者に飲料を届けながら、食前薬の内服介助などをおこなって回る - 12:00|食事介助
昼食の配膳、介助をおこなう - 12:45|休憩
交代で休憩に入る(1時間) - 13:30|担当患者へのケア
敷地内の散歩、軽いリハビリ、会話など、それぞれ対応する - 15:30|カルテへの記録
当日の担当患者の記録を作成する。変化が大きかった患者がいた場合、リーダーに相談や情報共有する - 16:40|申し送り
準夜勤担当へ申し送りをおこなう - 17:00|業務終了
⑵ 準夜勤|16:30 〜翌 01:00
二交代制、準夜勤の場合
- 16:30|出勤
着替えをおこない、当日の準備を開始する - 16:40|申し送り
患者の状態を日勤担当者から情報収集する - 17:00|担当患者へのケア
点滴、採血、摘便、清潔ケア、体位変換、ナースコール対応など。検査や手術終了後の患者さんのお迎え - 18:00|夕食の介助
夕食の配膳、介助をおこなう。患者によっては口腔ケアも
患者の容態を確認し、声掛けをおこなう。その後、必要な情報共有があれば対応する - 19:00|休憩
交代で休憩に入る(1時間) - 20:00|巡回
夜の検温、血圧などのバイタルチェック、消灯準備をする - 21:00|消灯
適宜ナースコール対応、医師の指示に応じた睡眠剤投与、トイレ介助をおこなう
休憩 - 23:00|巡回
病室を回り点滴を替えるなど、患者さんの状況をチェック。 - 23:30|カルテへの記録
当日の担当患者の記録を作成する。変化が大きかった患者がいた場合、リーダーに相談や情報共有する - 0:40|申し送り
深夜勤担当者へ申し送りをおこなう - 01:00|業務終了
⑶ 深夜勤|00:30 〜 9:00
二交代制、深夜勤の場合
- 0:30|出勤
着替えをおこない、当日の準備を開始する - 0:40|申し送り
患者の状態を準夜勤担当者から情報収集する - 1:00|巡回
夜の検温、血圧などのバイタルチェック、消灯準備をする - 3:00|休憩
交代で休憩に入る(1時間) - 5:00|巡回
病室を回り点滴を替えるなど、患者さんの状況をチェック。 - 6:00|起床時刻。巡回
点滴の確認、トイレ介助など - 7:00|朝食の介助
夕食の配膳、介助をおこなう。患者によっては口腔ケアも
- 8:00|カルテへの記録
当日の担当患者の記録を作成する。変化が大きかった患者がいた場合、リーダーに相談や情報共有する - 8:40|申し送り
日勤担当者へ申し送りをおこなう - 9:00|業務終了
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3.病棟看護師の働き方の魅力
病棟看護師として仕事をするメリットは以下です。
看護師の求人が一番多い業種であるため、しっかりと確認しておきましょう。
それでは、見ていきます。
3-1.受け持ちの患者が決まっている
病棟看護師は、基本的に受け持ちの入院患者が決まっています。
このため、病状の把握や情報収集がしやすく、勤務時間内は自分でスケジューリングをして仕事を進めやすいのです。
患者さんに笑顔で「ありがとう」って言われた時にはそれらのことを「やってよかった」と思えるほどに嬉しい。
3-2.チーム医療を学ぶことができる
病院は多くのスタッフが連携して、患者さんへ治療やケアをする「チーム医療」がおこなわれています。
医師や看護師、薬剤師、臨床検査技師、管理栄養士など、専門分野で力を出し合いながら、患者さんの治療に当たるため、知識やスキルが向上することはもちろん、見識が広がりやすくなるのです。
1人で患者さんを助けることは難しくても、チーム医療で臨めば大抵のことは解決すると思っています。
3-3.夜勤手当がつくため給料が高くなりやすい
病棟看護師は、夜勤をすると夜勤手当がつくため、その分給料が高くなりやすいという特徴があります。
夜勤手当は1回の勤務で、二交代制なら1万円~2万円、三交代制なら4,000円~1万円ほどを追加で受け取ることができます。
体力勝負ではありますが、稼いでお金を貯めたい人にはぴったりでしょう。
私の病院は仮眠もしっかりとれて過度に忙しいわけでもないため、満足しています。
3-4.経験していると転職先に困らない
病棟はどこも人手不足で、気になる病院があれば転職エージェントにたずねてみると、高い確率で求人がある場合が多いです。
このため、引越しや理由があって転職したい際に、次の職場に困らない点は大きなメリットと言えます。
希望すれば好条件で転職できますので、病棟経験を積むことは看護師としてのキャリアを大きく強化することにつながります。
また病棟の経験を積んでいると、それだけで市場価値が高まるので転職の面接でも高く評価されやすいです。
病棟の経験は他の現場でも汎用的に役立ちます。
一方、病棟経験が一切ない看護師はどうしても視野が狭くなりやすく、「年齢を重ねて転職した時に、他の現場で通用しない」というケースも珍しくありません。
4.病棟看護師のキツイ・大変なところ
病棟看護師として働くデメリットとしては以下が挙げられます。
職場によりますが病棟看護師は激務であるところも多く、クリニック・外来と比べて離職率が高い傾向があるため、事前に確認しておきましょう。
それぞれ、紹介していきます。
4-1.生活が不規則になる
大きなデメリットは、生活が不規則になる点です。
シフトが夜勤・日勤と不規則になることで、生活リズムが崩れ、体調不良を引き起こすことがあります。
不眠症になったり、精神を病むケースもあるため、体調管理はしっかりと行いましょう。
4-2.体力的にきつい
2交代の夜勤は特に勤務時間が長いため、体力的にきついという声は多く聞かれます。
特に、急性期病棟で勤務している場合、仮眠も落ち着いてとれない場合が多く、疲労がたまりやすいです。
体力に自信のない方は、外来や慢性期病棟をおすすめします。
4-3.患者・ナースステーションの人間関係がわずらわしい
看護師の職場全体に言えることですが、人間関係がわずらわしいという声は多くきかれます。
担当患者がクレーマーだったり、看護師同士の人間関係が悪くなったりすると、言うまでもなく働きにくくなってしまうのです。
4-4.完全シフト制
勤務日がシフト制で決まるのも、デメリットの一つにあげられます。
土日祝はもちろん、お盆や年末年始などもなく、希望休以外はいつシフトが入るか分かりません。
また、その希望休も申請しにくいことがあり、特に若手ほど上司や師長の顔色をうかがいながら休みを取っているという病院もあるようです。
5. 病棟看護師の仕事が向いてる人・向いてない人
以上を踏まえて、病棟看護師に向いている人・向いていない人は以下の通りです。
ご自身の特徴と照らし合わせて、ぜひ参考にしてみてください。
向いている人の条件
- 人間関係に悩むことが少ない方
- スピード感をもって仕事ができる方
- 体力に自信のある方
向いていない方の条件
- のんびり自分のペースで働きたい方
- 人間関係が極度に苦手な方
病棟看護師が向いていると感じた方は、これを機にチャレンジしてみても良いでしょう。
転職を検討中の方は転職サイトへの登録がおすすめ
転職を視野に入れて検討している方は、転職サイトに登録し、キャリアアドバイザーに相談するのもおすすめです。
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まとめ
病棟看護師の仕事内容について紹介しました。
看護師の多くは、病棟看護師として勤務していますが、向き不向きがあるのは間違いありません。
しかし、将来性もあり就職先としてはとてもおすすめできる職種です。
あなたが最高の看護師人生を送れるよう陰ながら祈っています。