「精神科の訪問看護の仕事がキツイ…」
「仕事がキツイという理由で辞めてもいい?」
まず前提として、心身ともに限界を感じているなら、ムリをせずに精神科以外の仕事への転職を検討するのもひとつの手段です。我慢をして仕事を続けると、心と体に悪影響をおよぼしかねません。
ただし、勢いで仕事を辞めるのは避けましょう。退職後に後悔してしまう可能性があります。
「やっぱり辞めなければよかった…」という事態を避けるためにも、転職は計画的に進めたほうがよいでしょう。
- 辞めたい理由をすべて挙げる
- 自分の行動や時間の経過で解決が見込めるか考える
- 転職の準備だけでもしてみる
本記事では、看護師の転職支援に携わっている著者が、精神科の訪問看護をしている人から聞いた話をもとに、仕事がキツイと感じる理由や対処法を解説しています。
最後まで読めば、精神科の訪問看護の仕事を辞めるべきかどうかの判断基準がわかるでしょう。
[simple-author-box]編集部が実施した看護師723名へのアンケート調査に基づくサポート力や求人の数・質への満足度が高い転職サイトベスト3は、下記の3つ。
キャリア・転職に悩んでいたり、今の仕事・職場から離れようかなと考えていたりするすべての看護師におすすめの相談先です。
左右にスクロールできます。
おすすめ転職サイト | 口コミ満足度 | 公開求人数 | おすすめポイント |
---|---|---|---|
約5.9万件 |
| ||
約4.6万件 |
| 約14.1万件 |
|
〔求人数〕2023年1月5日時点
精神科の訪問看護を「きつい」と感じる7つの理由
精神科の訪問看護はかなり特殊な働き方であり、他の職場にはない負担がありますよね。本章では、精神科訪問看護の仕事をする方の声を分類しながら紹介していきます。
- 患者とのコミュニケーションがうまくとれず信頼関係が築けない
- 一人で患者宅を訪問しなければいけないため、いざというときに不安
- 不衛生なお宅に訪問しなければならない場面が多々ある
- 提供している看護ケアが患者のためになっているかわからず自信がなくなる
- 業務時間外での電話対応も多く気が休まらない
- 書類作成などの時間外労働が多く体力的にしんどい
- 人員の確保や教育体制が不十分のため看護師一人ひとりの負担が大きい
患者とのコミュニケーションがうまくとれず信頼関係が築けない
精神科の訪問看護で一番きつい要因は、患者とのコミュニケーションにあるのではないでしょうか。
精神科訪問看護利用者のケアには、質の高いコミュニケーションが欠かせません。コミュニケーションの中での精神状態の観察とアセスメントが看護師の重要な役割です。
ただ、患者からの暴言やハラスメント、拒絶があったり、会話自体は成立できても上手く信頼関係を築けなかったりと、患者との関りに悩む看護師は少なくありません。
精神科の看護師の中には、精神疾患のある患者さんの言動思考に引きずられて、自分も病んでしまうというケースが多々あります。
精神科はこころのケアがメインなので、精神疾患を抱える患者さんと日常的にコミュニケーションを取りますが、特に共感性が強い人ほど、周囲の負の感情が伝播してしまいます。仕事に対して適度な距離を保てない人は、プライベートの時間まで引きずってしまうこともあるでしょう。
「移動中に患者の言葉が頭をよぎってしまい、運転に集中できない瞬間がある」という方もいるようです。
訪問看護師の声
- 自分1人で判断、対応しなければならない
- 自分の言動や存在が、患者に影響を与えてしまうと感じてしまう
- 前任者より引き継いだ利用者から拒絶されて訪問に入れないことがあった
- 相手から受けた言葉で疲れる
一人で患者宅を訪問しなければいけないため、いざというときに不安
精神科訪問看護は、「一人で患者宅を訪問する」という看護形態や利用者の疾患もあり、患者からの暴力やハラスメントなどを受ける機会も他の職場と比べて多くなります。
利用患者に多い統合失調症・妄想性障害などには攻撃性の高い衝動的な行動を取る方も少なくないので、そういった環境に足を踏み入れることに対するリスク・怖さを感じる方も多いようです。
他にも「(相談員は二人体制で行くような)治安の悪い地域に一人で行かなければならない」「周囲に人の気配がなく、いざという時に不安」という声もあります。
訪問看護師の声
- 精神症状が悪い患者への対応で不安や恐怖を感じながら気をつけてかかわらなければならない
- (患者が)調子が悪くてイライラしている様子だとかいう情報があったので注意して見てきてください、というような送りがあって,そのときに不安だなあと思います
不衛生なお宅に訪問しなければならない場面が多々ある
訪問看護の訪問先(主に自宅)が、不衛生でありきついという声も多く聞かれます。
特に統合失調症の陽性症状では「身なりや生活環境が不衛生になる」、陰性症状では「部屋が荒れやすくなる」といった症状がみられるようになり、患者宅次第ですが、悪臭がする・害虫が出るなど、看護師はかなり過酷な環境に足を運ぶことになります。
訪問看護師の声
- 訪問先でゴミの量があまりにも多い
- 家の片づけに長時間とられてしまい、計画していた支援が行えないことも
提供している看護ケアが患者のためになっているかわからず自信がなくなる
精神科の訪問看護として仕事をするうえで、自分では力になれないという無力感やむなしさ、疲労感を感じてしまう方もいらっしゃいます。
精神疾患は経過も分かりづらく、良くなったり悪くなったりを繰り返すので、「自分の提供している看護ケアが果たして患者のためになっているのだろうか」と考えてしまう方は少なくありません。
困難を感じながらも、利用者さんへの援助を継続しつつ「とにかくまず行かなくては」と踏ん張っている看護師さんは多いです。
また利用者本人の病識が不十分で、訪問看護の必要性を理解していない場合もあります。
中には、「訪問看護を受けるなら退院しても良い」と言われているケースもあり、患者さんによっては疾患の話を嫌がる方もいるなど、訪問看護師さんは援助にかなりの神経を使っているようです。
訪問看護師の声
- 事前に訪問看護を行う了解を得ていても、その後患者の病状が悪化し、訪問看護での支援を受け入れてくれない
- 訪問看護をいつまで続ければいいのか,ゴールがわからない
業務時間外での電話対応も多く気が休まらない
利用者家族との関わりによって、負担が増している方もいます。
特に多いのが家族からの電話対応で、時には業務時間外でも利用者家族から連絡が来ることも多いのではないでしょうか。業務時間外だからと言って対応しないわけにもいかず、気が休まらないという看護師さんも少なくありません。
訪問看護師の声
- 患者への支援を、家族に了解してもらえない
- 家族からの苦情、クレーム対応に追われます
書類作成などの時間外労働が多く体力的にしんどい
時間外労働が積み重なって、体力的な限界を迎えている方もいます。
特に精神科訪問看護では、記録・計画書・報告書などの書類を作成する機会が多いかと思います。現状や解決策、評価などを詳細に記載しなければならず、膨大な時間を取られますよね。
業務時間を終えてようやく書類作成に取り掛かれる、というような施設で働いている方は、体力的な限界を感じるようになっても無理はありません。
訪問看護師の声
- とにかく記録書類が多く、作成が大変でした
- ストレスの原因は報告書とか計画書とかで、残業になることですね
人員の確保や教育体制が不十分のため看護師一人ひとりの負担が大きい
病院から訪問を行う場合、看護体制の不十分さが原因で看護師の負担が増しているケースもあります。
具体的には、「人員の不足」「教育体制の不備」などがあげられます。
訪問看護師の声
- 病棟からの訪問看護を行うための手順が整っていない
- マンパワーの問題で訪問看護に行きにくい
- 訪問する時間は限られていて、回数が増えると病棟から抜ける回数が増えてしまうので、そのバランスが困難だと思います
- 交通手段の補助がない
- 困ったときに相談できる人や機会がない
- 他職種の人がいるとその人と(日程を)合わせるのは大変
- 訪問看護を学ぶための機会がない
精神科の訪問看護がきつい・辞めたいと思ったときの対処法を解説
「仕事を辞めたい」と思いつつも、実際に辞めて良いか判断できず、退職を視野に入れつつも二の足を踏んでいる方も多いのではないでしょうか。
そこで本章では「辞めたい」と思った時に、どういった基準で判断すべきかを順を追って解説します。
まずは辞めたい理由を全て列挙する
最初にやるべきは、「辞めたい理由」を全て挙げてみることです。
漠然と「なんとなく辞めたい思いが強くなってきた」では適切な判断はできません。勢いのまま辞めてしまうと、後悔する恐れがあります。そこで、まずはもやもやとした辞めたい気持ちを細かく分けて整理していきましょう。
職場を辞めたい理由は一つだけとは限りません。たいていの場合、いくつかの理由が積み重なって「辞めたい」という気持ちに至るものです。
「辞めたいと思ったきっかけ」や「どういう部分が不満なのか」を起点にして、1章の内容も参考にしながら、辞めたい理由を言語化していきましょう。
上記の方の場合、「(1)(2).業務内容に対してのネガティブな感情」「(3)業務過多」という3つの理由が積み重なって「辞めたい」という感情が生まれていることが分かりました。
「時間が解決する可能性」と「自分の行動次第で改善する可能性」を見極める
次に、「時間が解決する可能性」と「自分の行動次第で改善する可能性」を見極めます。
■時間が解決する可能性
…今の職場で働き続けるうちに、悩み・不満が解決する可能性があるか
■自分の行動次第で改善する可能性
…自分の行動次第で、悩み・不満が解決する余地があるか
この2つを軸に、仕事を辞めたいと思うよくある理由を分類してみます。結論から言うと、辞めたい理由が左下に偏っているほど、退職・転職をしても良いと判断できます。
図の左下にある理由は、端的に言うと「会社そのもの(職場環境)が原因となっており、自分の行動や時間の経過で解決が見込めないもの」です。
特に訪問看護ステーションの場合は、ほとんどが小規模な職場なので、異動(会社を変えずに環境を変える)や休職(いったん時間を置く)が難しいでしょう。このため、退職・転職で環境を変えるが唯一の手段となります。もし病院で働いているなら、部署の異動を相談してみてください。
一方、右上に位置する理由は、今の職場でもある程度改善が見込める理由です。そのため、早まって辞めたりせず、まずは「今の職場でできることはないか考えてみる」ことを推奨します。
退職を迷う場合は転職の準備だけでも始めておく
もし辞めるかどうか判断しかねる場合は、ひとまず「転職の準備」だけでも着手してみることをおすすめします。
転職活動の準備とは
- 訪問看護の仕事を続けるか、別の仕事をするか考えておく
- 訪問看護の仕事を続けるなら、現職の不満点をもとに希望条件を明確にしておく
- 条件に合う求人があるかどうか転職サイトで検索してみる
- 業界や職種についての情報を収集しておく
- 転職サイトの担当者に相談だけでもしておく
前提として、仕事を辞めて次の職場を見つけるまでの流れは、(1).在職中に転職活動をする、(2).退職して失業手当を貰いながら転職活動に専念するの2通りあります。
結論から言うと、辞めるかどうか迷っているなら、(1).在職中に転職活動をすることをおすすめしています。
次の職場の希望条件を考えたり、実際に求人を探したりすると、漠然とした「退職する」という未来が具体的に想像できるようになるからです。もし希望に合いそうな求人がたくさんあるなら、応募してみれば良いですし、転職サイトに良さそうな求人がないなら、退職はいったん保留にするという選択が取れます。
いずれにせよ、「次の職場がありそうかどうか」を事前に調べておき、その結果で判断するのが最も現実的で賢明です。
それに、次の仕事が決まる前に辞めてしまうと、無収入の期間が発生し、生活に影響する恐れもあります。それだけでなく、なかなか次の仕事が決まらないと焦ってしまい、妥協せざるを得なくなる可能性もありますし、ブランクが長くなると採用に不利になります。
このことから、「迷ったら、勢いで退職せずにまずは転職活動の準備から始めてみる」ことをおすすめしています。
転職を視野に入れて検討している方は、転職サイトに登録し、キャリアアドバイザーに相談するのもおすすめです。
キャリアアドバイザーは看護師転職支援のプロで、あなたの希望条件をヒアリングしたうえで最適な職場・求人を紹介してくれます。
人気が高い良質な求人ほど、非公開求人として転職サイト利用者だけに限定公開されているので、登録しておくだけで選択肢をグッと増やせますよ。
大手サイトだと『看護roo!』や『レバウェル看護(旧 看護のお仕事)』などが有名です。評判の良いサイトを詳しく知りたい方は、『看護師723人が選ぶ転職サイトおすすめランキング』を参考にしてください。
どうしても限界ならまずは精神科以外の職場への転職を検討する
精神科の訪問看護がきつくて限界で「他の働き方も視野に入れたい」という方は、まず精神科以外の仕事を検討してみてください。
1章でもお伝えしましたが、きつい・辞めたいという悩みの多くは「精神科の看護ケアに対する難しさ・怖さ」が原因になっているケースがほとんどです。
精神科訪問看護がきつい理由
- 患者とのコミュニケーション
- 一人で患者宅を訪問する恐さ
- 不衛生な訪問先が多い
- 支援の効果がない無力感
- 利用者家族との関わり
- 時間外労働の多さ
→(1)~(4)は精神科ならではの理由
精神科医療への想い・やりがいが原動力になっていても、利用者・家族との関わりで厳しい現実に直面することもあるかと思います。そういった場合は無理をせず、一般的な訪問看護などの仕事に移るのも一つの方法です。
今すぐ職場を変えるつもりはないという方は、「できる限り、患者さんの感情を受け流す」ように努めてみてください。
当サイトで精神科で働いた経験のある看護師さんに話を伺ったところ、「患者さんの感情はしっかり受け止めるが、最終的に看護記録などに書き出すことで”受け流す”」というスタンスお仕事をされていたそうです。
なので、一生懸命話しを聞きます。担当の勤務時間内で、可能な限り時間を割きます。(5分でも10分でも、時には時間外でも)
声かけは「そうだったんですねね」「そんなことがあったんですね」等の受け止めを行いますが、それ以上は何も言いません。
ですが、話してくれた内容は、そのまま看護記録に書き、書きながら脳内から排出するイメージで、受け流してました。そうしないと、患者さんの感情にのまれてしまい、こちらがメンタルの調子を崩してしまうからです。
上記の方のように、「仕事の時間」と「その後の自分の時間」をきっちりと分離することが、あなたの精神の安定につながります。
精神科の訪問看護の仕事はやりがいはあるがキツイ部分も多々ある
精神科の訪問看護で働く方がどのような局面で「きつい・辞めたい」と感じるのか、研究調査などを踏まえて解説しました。
精神科は医療行為こそ少ないものの、独自の業務や精神科ならではの看護の視点が求められ、やりがいを感じながら働ける領域ではありますが、その分精神科ならではのきつい部分がありました。
もし本当に仕事を継続するのが限界と感じられるなら、別の職場に移ることを一度検討してみるのも良いでしょう。
なお、精神科看護師を対象に行ったストレス調査をもとにしたこちらの記事(『精神科の看護師を辞めたい!8つの理由と辞めると決める前に必ず試してほしいこと』)もぜひ参考にしてみてください。
この記事があなたの役に立てば幸いです。