「プリセプターって大変」「新人看護師とどう関わっていいか分からない」と悩みますよね。
プリセプターに指名された看護師さんが一番最初に抱えやすい悩みは、以下の5つです。
- プリセプターとして自信が持てない
- 指導の方法がわからない
- 通常業務との両立が難しい
- 新人とコミュニケーションがとれない
- 先輩看護師からのプレッシャーを感じる
プリセプターになると、立場が指導をされる側から指導をする側に変化します。この立場の変化に戸惑ったり、新人看護師との関係に悩むプリセプターは少なくありません。
実は新人指導にはノウハウがあり、それを知っているかどうかで新人の成長度合いが変わってきます。
この記事では、プリセプター経験者の私が、「プリセプターが抱えやすい悩みの解決方法」「新人看護師とより良い関係を築く方法」をご紹介します。
この記事を読むことで、悩みの解決の糸口が見つかり、新人看護師との関わり方が見えてくることでしょう。
1. プリセプターが抱える5つの悩み
プリセプターの役割は、新人看護師の教育やサポートを行うことですが、初めて指導に関わるということもあり、不安を感じるでしょう。
この章では、プリセプターが抱えやすい5つの悩みと解決方法を、実際の体験談と共にご紹介します。
- 1-1. プリセプターとして自信が持てない
- 1-2. 指導の方法がわからない
- 1-3. 通常業務との両立が難しい
- 1-4. 新人看護師とコミュニケーションがとれない
- 1-5. 先輩看護師からのプレッシャーを感じる
では、順番にみていきましょう。
1-1. プリセプターとして自信が持てない
新人看護師の指導をしていて、「自信が持てない」「私がプリセプターでいいのかな」と不安を感じる方は多いです。
プリセプターには、新人看護師の指導やサポートを行う役割があり、今まで指導されてきたことを新人看護師に伝えなければなりません。「先輩みたいに指導できるかな」といった不安がつきものです。
また、指導の内容が一般的な看護技術や知識だけにとどまらず、診療科に合わせた疾患や、専門性の高いケアにまで及ぶため、なかには、自分のスキルのなさに気付き、自信を失う方もいるかもしれません。
この方のように、自信を失ってしまい、プリセプターに向いていないと思った方もいることでしょう。プリセプターとして自信が持てないという悩みは、誰もが抱える悩みなのかもしれません。
1-2. 指導の方法がわからない
プリセプターをしていると、どう指導していいかわからないと悩むことがあります。
この悩みを抱える方の多くは、「指導したことが、新人看護師に伝わらない」という状況に置かれているようです。
新人看護師への指導は、教育方針に沿って行うことがほとんどなので、教育方針を立案する段階で、新人看護師が理解しやすい教育カリキュラムが組まれています。
しかし、新人看護師といっても様々な性格の方がいるので、人によって理解してもらえるような指導方法は異なります。
筆者の実体験
新人看護師に「注射に必要な物品の場所」を説明し、実際に同じように物品の準備をしてもらった際、「注射用ではなく、経鼻胃管栄養用のシリンジを準備した」新人看護師さんもいました。
この新人看護師に後から話を聞くと、「見た目が似ているから」という理由で、用途がまったく異なる物品を準備してしまったようです。このような新人看護師には、物品の場所だけではなく、用途や根拠も合わせて説明する必要があります。
このように、あなたにとって当たり前のことが、そのまま新人看護師にとって通用するとは限らないのです。
また、この方のように、自分が受けてきた指導方法が新人看護師に合わなかった場合、新人看護師が混乱してしまいます。
いつかプリセプターになる時が来たら、この先輩のようなプリセプターを目指そうと、心に決めていました。
しかし、実際にプリセプターになった時に、熱意をこめて指導するあまり、話しが長くなってしまうこともあり、新人さんが混乱して、大切なことが伝わりませんでした。
当たり前ですが、僕に合っていた指導方法が、新人さんに合うとは限らないですよね。
結果として、指導内容が伝わらないというジレンマが生じることになるのです。
1-3. 通常業務との両立が難しい
新人看護師の指導と、通常業務の両立が、難しいと思うこともあるでしょう。
残念ながら、プリセプターを任されても、通常の業務量に変化がないことがほとんどです。
むしろ、新人看護師の指導をしながら、自分の業務もこなさなくてはならないので、業務量が増えたと感じる方もいるかもしれません。
また、勤務時間外に新人看護師の課題の確認をしたり、勉強会の開催を依頼されたりすることもあるので、なかなか休めない現実があります。
やっと自分の仕事に慣れて、定時で帰る日も増えてきてたのに、また残業の毎日に戻ってしまいました…。
また、通常業務の合間で、新人さんに指導や振り返りを行わなくてはならないので、指導に十分な時間を取ることができず、申し訳なく感じています。
自分の業務には効率化が必要だと気付いてはいるのですが…。
自分だけではなく、先輩や同期も、色々な業務を抱えながら仕事しているので、簡単に頼ることは、できないです。
この方は、プリセプターになってから、残業が増えたり、勤務時間内に余裕を持って指導することが出来ないと感じています。
現状を打破するためには、業務の効率化が必要ですが、個人の努力だけではどうしようもできないこともあるでしょう。
1-4. 新人看護師とコミュニケーションがとれない
新人看護師とうまく打ち解けられず、関係に悩む方も大勢います。
ひとことで新人看護師と言っても、様々な個性を持つ方がいますよね。
看護師になるまでの経緯や、置かれている環境、年齢などによって、考え方も異なるため、コミュニケーションをとることに苦労することもあるでしょう。
なかには、「この新人さんとは、相性が合わないかも」と悩んでいる方もいるかもしれません。
その新人さんは、全く違う分野で就職した後に、看護に興味を持ち、勉強して看護師になったそうです。
その志は素晴らしいと思うのですが、社会人としての経験もあるせいか、自己流で業務を進めようとしてしまうこともあり、見ていて怖いです。
注意しようにも、どう言っていいかわからず、僕のほうが焦っていることもありますね。
どんな立場であっても、お互いの相性によっては、円滑なコミュニケーションがとれない場合もあります。
あなたが心を開いたとしても、新人看護師が心を開いてくれるとは限らず、そうした現状が続けば疲れてしまいますよね。
このように、新人看護師とのコミュニケーションは一筋縄ではいかないようです。
1-5. 先輩看護師からのプレッシャーを感じる
先輩看護師からプレッシャーを感じることもあるでしょう。
なかには、「新人ができていないのはプリセプターのせいだ」と叱責された方もいるかもしれません。
本来、新人看護師は組織やチームで育てていくものであり、プリセプターだけが新人看護師の指導を行うわけではありません。
しかし、新人看護師と関わる機会が多いのはプリセプターなので、組織やチームで育てるという意識が薄れてしまいがちです。
そのため、新人看護師が失敗したり、理解できていない業務があると、プリセプターが責められる事態に発展してしまうこともあるのです。
ある程度の教育方針は、師長さんが中心となって立てますが、実際の指導はプリセプター1人で行わなくてはならないです。
通常業務が忙しいので、誰も、プリセプターを助ける余裕がなく、新人看護師がミスをすると、新人看護師とプリセプターの両方が責められます。
急性期病棟なので、もともと緊迫感のある職場なのですが、新人さんが入ってくる春頃は、職場全体がピリピリしていて、居心地がよくありません。
私にもプリセプターになる日がいつか決ますが、その前に辞めてしまいたいです。
慣れない新人指導で、先輩看護師から怒られることがあれば、気持ちが折れてしまうこともあるでしょう。
この方のように、職場の雰囲気に耐えられず「辞めたい」と考える方もいるほど、先輩からのプレッシャーは重いのです。
ここまでのまとめ
プリセプターが抱えやすい悩みは、以下の5つでした。
- プリセプターとして自信が持てない
- 指導の方法がわからない
- 通常業務との両立が難しい
- 新人看護師とコミュニケーションがとれない
- 先輩看護師からのプレッシャーを感じる
上記のような悩みを抱えているうちに、「看護師を辞めたい」と考える方もいるくらい、新人看護師の指導は容易ではないのです。
とはいうものの、看護師としてステップアップするには、指導や教育を行うことは欠かすことはできませんよね。
そこで、悩みを抱えるプリセプターのために、新人指導に役立つポイントを、次の章でご紹介します。
明日から使える具体的なポイントもありますので、ぜひ、ご覧になってください。
2. 新人看護師の指導で使える5つのポイント
この章では、悩みを抱えるプリセプターのために、指導で使える5つのポイントを以下のようにまとめました。
- ポイント1. まずは新人看護師が話しかけやすい関係作りを意識する
- ポイント2. チーム全体で新人看護師を育てる仕組みを作る
- ポイント3. 「何を伝えるか」ではなく「どう伝えるか」を意識する
- ポイント4. 作業の目的や背景を伝え、常に当事者意識を持ってもらう
- ポイント5. 日々の業務を改善し、プリセプター側が余裕のある状態を保つ
それでは、順を追って見ていきましょう。
ポイント1. まずは新人看護師が相談しやすい関係作りを意識する
新人看護師は、業務を覚えることと同時に、職場環境に慣れるために必死です。
また、新人看護師の中には、就職と同時に1人暮らしを始め、私生活でも大きな環境変化を迎えている方もいるかもしれません。
そんな新人看護師の背景に配慮し、良き相談役になることが、プリセプターに求められる役割といえます。
完璧なプリセプターになる必要はありません。何でもできる先輩よりも、出来ないことを認め成長しようとするプリセプターのほうが、親近感を感じ相談しやすい関係が作れることでしょう。
<ここがポイント!>
- 普段から、休憩室等でコミュニケーションをとり、話しやすい雰囲気づくりに努める。
例)「一人暮らし慣れた?」「自炊してるの?」などと、声をかけてみる - 勤務終わりや休憩中に、ちょっとしたお菓子を渡してみる
- 「私も新人の頃は、採血が苦手で…」と打ち明け話しをしてみる
- 出来ないことがあっても、周りに頼る姿を見せることで、新人看護師のロールモデルとなる
- 新人看護師からのアクションが無くても、プリセプター側から継続的に声をかけていく
「わからないことは無い?」「いま、困ってることはある?」など
注意点
一般的に、プリセプターに任命されるのは3~5年目の看護師なので、新人と年齢が近いこともあり親しくなりやすいです。ただその場合も、公私混同しないように、お互いに気を付けましょう。
看護師の職場では、頼り合うことは必要ですが、甘えは必要ありません。取り返しのつかないミスを防ぐためにも、職場とプライベートの区別をつけるよう指導することも大切です。
ポイント2. チーム全体で新人看護師を育てる仕組みを作る
1章でもお伝えしましたが、新人看護師は、組織やチームで育てることが必要です。
まずは、信頼できる先輩に相談したり、アソシエーターに相談することから始めて見ることをおすすめします。
チーム全体で新人看護師を育てる意識があれば、先輩看護師から過度なプレッシャーをかけられることが減ったり、指導で悩んだ時に相談しやすくなるでしょう。
<ここがポイント!>
- 新人看護師の課題には、期限を設定し、計画的に振り返りが出来るようにする
- チーム内で新人看護師の指導方針や到達度を共有する
ノートを使った申し送りや、カンファレンスの場を利用
- 新人看護師がミスをした時は、チーム内の看護師と解決策を考え、再発防止に努める
補足
チーム全体で新人看護師を育てることで、新人看護師がプリセプター以外の先輩看護師と関わる機会が持てます。
その反面、先輩看護師によって指導内容が異なってしまうリスクもあり、注意が必要です。
教育方針を確認しながら、新人看護師のレベルや到達度に合わせた指導を行っていきましょう。
ポイント3. 「何を伝えるか」ではなく「どう伝えるか」を意識する
新人看護師が自立できるよう、プリセプターは日々尽力していることでしょう。
しかし、指導に熱が入るあまり指導する内容に意識が向きすぎると、「どう伝えるか」という意識を欠いてしまいます。どれだけ多くの指導を行ったとしても、新人看護師がわかりにくい説明をしてしまっては、効果的な指導とはいえません。
新人看護師の目線に立って、伝え方を工夫することで、理解に繋がる可能性もあることを忘れないでおきましょう。
<ここがポイント!>
- 新人看護師が理解しやすい伝え方を心がける。
例)専門用語を使用する場合は、用語の説明をする。
現場で使う専門用語がわからなかったり、説明中に質問できない新人看護師もいる - ケアの必要性や、行う背景まで、丁寧に説明する。
必要性や背景を説明することが、ケアの動機づけに繋がり、新人看護師が理解しやすくなる - 新人看護師がメモをとっている時は、気持ちゆっくりめに説明を行う
- 普段の指導のなかで、新人が委縮してしまうような声かけは避ける
ポイント4. ケアの目的や背景を伝え、看護師としてのプロ意識を育てる
新人看護師の中には、必要な物品や手順を教えても、なかなか覚えられなかったり、間違いを繰り返したりする方もいます。
このような方は、看護師として自覚が薄い場合が多く、どう接していいか、頭を抱えてしまいますよね。
そのような時は、ケアの目的や必要性を根気強く伝えていきましょう。特に患者さんの背景を考慮した、個別性のあるケアを見せることは、教科書で学ぶことはできないです。
実際に現場で行われているケアや、患者さんがきっかけで、プロ意識が芽生えた新人看護師は、確実に成長できますよ。
<ここがポイント!>
- ケアの背景や目的、必要性を根気強く伝えていく
- 理解できていないことがあれば、終業後に振り返りをし、新人看護師と共通認識をもつ
ポイント5. 日々の業務を改善し、プリセプター側が余裕のある状態を保つ
通常業務を行いながら、余裕を持って新人看護師の指導をするためには、業務の効率化が欠かせません。
<ここがポイント!>
- 指導する看護技術や知識に不安がある場合は、復習をかねて勉強する
- 新人看護師に指導する時間と、自分の業務を行う時間を決め、時間配分を意識して動く
- 指導に十分な時間がとれない場合は、先輩看護師やアソシエーターに相談し、業務量の調整を図る
実際、筆者が働いていた病棟では、毎日のように検査や治療があり、勤務時間内は座る余裕がなく、残業が当たり前でした。こうした環境に耐えられず、退職をする方が相次いだことで、業務改善を目的とした委員会が発足されました。その結果、日勤・夜勤の仕事の内容の見直しや、医師や看護助手などのコメディカルスタッフと業務内容の分担が行われ、看護師全体の業務効率化に繋がった経験があります。もちろん、こうした取り組みは、チーム全体で行うことで一定の効果を発揮します。業務の改善が必要だと感じている場合は、信頼できる先輩に相談することから始めてみましょう。
補足
新人看護師に出来ないことがあっても、「自分の指導が足りないからだ」と責める必要はありません。
そもそも、新人は、失敗を繰り返しながら成長していくものです。失敗から学ぶことも、たくさんあるのです。
患者さんが安全なケアを受けられるよう、細心の注意を払いつつ、ときには見守ることも必要かもしれませんね。
ここまでのまとめ
ここまで、新人看護師の指導で使える5つのポイントをご紹介しました。
- まずは新人看護師が話しかけやすい関係作りを意識する
- チーム全体で新人看護師を育てる仕組みを作る
- 「何を伝えるか」ではなく「どう伝えるか」を意識する
- 作業の目的や背景を伝え、常に当事者意識を持ってもらう
- 日々の業務を改善し、プリセプター側が余裕のある状態を保つ
ポイントを踏まえて指導を行うことで、悩みの解決に近づけることでしょう。
ところが、新人看護師の中には、どんな指導を行っても響かない方もいます。どういった対応をしていいかわからず、プリセプターとしては悩ましいですよね。
次の章では、困った新人看護師への指導を、お悩み別にご紹介します。
3.お悩み別:新人看護師への指導のポイント
この章では、新人看護師との接し方についてよくある悩みと、その悩み別の指導ポイントをお伝えします。
それでは、見ていきましょう。
3-1. 不安が強い(緊張しやすい)
新人看護師に限らず、緊張しやすかったり、不安を感じやすい方は、一定数います。
そのような場合は、不安なことは何か傾聴し、安心して仕事ができるよう、環境を整えてあげると良いでしょう。
<不安が強い(緊張しやすい)タイプの特徴>
- 緊張しやすく、勉強したことを質問されても、答えが出てこない。
- 急変などがあると、思考停止してしまいがち。
- 応用が利かない。
- 出来なかったことにフォーカスし、自己嫌悪に陥りやすい。
<指導のポイント>
- 出来ていることを、こまめにフィードバックし、自信につなげる。
- ポジティブな声かけを行い、新人看護師が安心できるように努める。
- 看護技術に不安がある時は、なるべく、そばで見守る。
3-2. 勉強をしてこない
看護師にとって、勉強は、患者さんに正しいケアを行うために必要ですが、勉強した内容が頭に入ってなかったり、そもそも勉強をしてこない新人看護師もいます。
勉強をすることが、目の前の患者さんのケアに直結するため、重要性を理解してもらえるように、粘り強く関わっていきましょう。
<勉強をしてこないタイプの特徴>
- もともと、勉強が苦手。
- 勉強の必要性がわかっていない。
- 業務に追われ、勉強をする時間や体力がない。
<指導のポイント>
- 課題は、どの程度なら出来そうか、新人看護師と相談しながら決める。
- 課題の期限をあらかじめ決めて、提出してもらう。
- 課題の様式はアナログに限定せず、新人看護師の勉強しやすい方法で行ってもらう
- 勉強しない状況が続いたり、怠慢な態度が見られれば、師長やアソシエーターに相談する。
3-3. メモを取ろうとしない
看護師の業務は専門性が高く、複雑な物品や機器も多いので、メモをとることは重要ですが、習慣化が出来ていない新人看護師もいます。
メモを取ることは、知識の定着や振り返りに役立ちます。メモを取ってほしい場面では、積極的に声をかけていきましょう。
<メモを取ろうとしないタイプの特徴>
- 何度注意しても、メモを取らない。
- 何度も、同じことを質問する。
- 根拠がわからないまま、ケアを行おうとする。
<指導のポイント>
- メモを取ることのメリットや、患者さんに安全なケアを行うために必要であることを伝える。
- メモを取らない理由を聞き、原因に合った対策をする
例)メモ帳をいつも忘れてしまう
→常にロッカーにメモ帳を常備しておく。
スマホを使う頻度が多く、メモをとる習慣がない
→メモを取ってほしい場面で声をかけ、習慣化できるよう促していく。
3-4. 社会人のマナーが身についていない
新人看護師の多くは、社会人1年目なので当たり前のマナーが身についていない方も多くいます。
学生時代に許されていたことがマナー違反だと気付いてないこともあるため、気になることがあれば、1つ1つ声をかけていきましょう。
また、多くの病院では、新人看護師研修の中で、接遇を指導しています。その場合は、研修で使用した資料を使った指導も、有効です。
<社会人のマナーが身についていないタイプの特徴>
- 言葉遣いが、荒くなりがち。
- 先輩や患者さんの前で失礼な態度をとっても、気付いていない。
- 遅刻や欠勤をする時の連絡方法やタイミングを説明しても、守れない。
<指導のポイント>
- 無意識でやってしまうことが多いので、「いま、言葉遣い荒かったよ」「患者さんの前では、そういった行動は慎んでね」など、1つ1つ伝えていく。
- 目にあまる行動が見られる場合は、師長やアソシエーターに相談する。
4.新人看護師に指導する際に役立つ心理学の技法
ここまでは具体的な指導方法をご紹介してきましたが、少し視点を変え、今までとは違ったアプローチの方法をお伝えします。
それは、新人看護師の指導で使える心理学の技法です。心理学は、適切なタイミングで用いることで、様々な効果を発揮します。
新人看護師の理解を促すために、以下の5つの技法を参考にしてみてください。
4-1. ペーシング|会話のペースを合わせる
ペーシングとは、聞き手が意識的に話し手とペースを合わせる技法です。
ここでいう「ペース」とは、具体的に、話し方・感情・呼吸の3つの要素のことです。
人は、自分に似ている人に親近感を感じ、好感を抱きやすくなります。これを、『類似性の法則』といいますが、ペーシングでは、意識して話し手に同調することで、この効果を引き出すことができます。
<目的>
- 聞き手と話し手に一体感を生む
- 話し手に安心感や親近感を与える
<方法>
下記のポイントに注目しながら、相手とペースを合わせていく。
- 話し方…声の調子、声の大きさや高低、話すスピードやリズムなど
- 感情…話し手の空気感、感情、感情の起伏など
- 呼吸…呼吸の回数、リズム、肩や胸の動きなど
4-2. ミラーリング|動作の雰囲気を合わせる
ミラーリングとは、聞き手が話し手と表情や動作を合わせる技法です。
ペーシングの一種であり、こちらも、意識して話し手に同調することで、『類似性の法則』の効果を引き出します。
<目的>
- 話し手に安心感や親近感を与える
- 継続して行うことで、信頼関係の構築に役立つ
<方法>
- 話し手の表情や動作を、鏡のように真似る
- あくまで、自然な流れで調和させるイメージ
(瞬時に動作を真似し続けると、話し手が馬鹿にされていると感じることもある)
4-3. ピグマリオン効果|期待していることを伝える
ピグマリオン効果とは、他者からの期待を受けることで勉強や仕事などの成果を出せるようになる技法です。
たとえば、新人看護師が失敗した時に、先輩に怒られて終わった場合と、「期待しているから言うね」と前置きされた後に注意される場合では、その後の新人看護師のモチベーションに違いが出ます。
そのモチベーションが、勉強や仕事の意欲に繋がり、結果として成果を生むことになります。
<目的>
- 勉強や仕事の成果を出すこと
<方法>
- 期待していることを、言葉にして伝える
- 達成可能な課題を与え、自信につなげる
- 指示するだけではなく、ときには裁量権を与える
- 過度な期待はプレッシャーになるので、注意する
- 褒めることで、モチベーションの維持に努める
4-4. リフレーミング|認識を変える
リフレーミングとは、出来事に対する認知(フレーム)を変える技法です。
ある出来事に対し、それまでとは違う視点をもつことで、異なった意味や感情を持たせる効果があります。
たとえば、決められた時間内に点滴を終われなかったとします。新人看護師は、「時間内に終わることができなかった」「また失敗した」と落ち込んでいるかもしれませんね。
しかし、「決められた時間内に点滴が終われず、落ち込む」ことは、点滴の重要性や、時間内で終わる必要性を理解していると解釈することもできます。
振り返りの際に、そういった視点を伝えたうえで、新人看護師は、自分の成長を実感でき、前向きに再発防止に取り組めるかもしれません。
<目的>
- 出来事に違う視点や意味を持たせ、認知を変える
<方法>
- 出来事を、別の言葉で言い換えたり、立場を変えて見てみる
- 出来事によるメリットや、長期的な意味を言葉にしてみる
4-5. 傾聴|しっかりと相手の話を聞く
傾聴とは、相手の発言に耳を傾け、目を合わせ、心に寄り添って話しを聞くコミュニケーション技法です。
看護師にはなじみの深い言葉であり、その効果も難しさもよく理解している方が多いかと思います。主に患者さんを対象に行ってきた傾聴は、新人看護師の指導でも役立つスキルです。
<目的>
- 話し手に話し手に受容や共感を示すことができる。
- 話し手が考えを整理できる。
- 話し手の話しを通して、聞き手も自分自身を見つめる機会が持てる
<方法>
- 会話の際に、耳を傾けるだけでなく、目を合わせ、心に寄り添って話しを聞く
5. プリセプターのやりがい
プリセプターをしていて悩む方がいる一方で、プリセプターにやりがいを感じたり、自分自身が成長できるチャンスと捉えて、取り組んでいる方もいます。
この章では、プリセプターが主にやりがいを感じる場面をご説明します。
それは、以下の3つです。
順を追って、ご説明していきます。
5-1. 新人看護師に頼ってもらえて、嬉しい
新人看護師に頼ってもらえることを、「嬉しい」と感じる方は多いでしょう。
あえて説明するまでもなく、自分を慕ってくれる後輩は特別可愛いと思うものです。
頼られることで、プリセプターとしての責任を自覚できますし、モチベーションに繋がることでしょう。
でも、自主的に勉強をしたり、業務中は真剣にメモをとったりと、一生懸命さは、誰にも負けていなくて。
困った時に、真っ先に駆け寄ってくる姿も、可愛く見え、「この子が自立できるよう、出来ることはしてあげたい!」と思い、指導をしていました。
1年間のプリセプターシップが終わる頃、「先輩のおかげで、ここまで成長できました」と言われ、つい感極まって泣いてしまったのも、今ではいい思い出です。
大変なこともありましたが、この子のプリセプターになれて、よかったです。
プリセプターと新人看護師にも相性があるので、必ずしも、この方のような信頼関係を築けるとは限りません。
それでも、新人看護師に頼られることでやりがいを感じ、モチベーションに繋がっていくでしょう。
5-2. 指導を通して、自分のケアの振り返りができる
新人看護師の指導をしていると、自分の課題に気付くこともあるでしょう。
なぜなら、指導を通して、普段のケアを振り返るための十分な時間が確保できるからです。
看護師は時間に追われやすいので、業務をこなすことに必死になるあまり、ケアの理解が浅くなってしまうことがあります。
新人看護師との関わりは、こうした問題点と向きあうチャンスでもあるのです。
しかし、そのままだと、アセスメントが浅くなり、患者さんの異変に気付けなかったり、急変に対応できないこともあるので、やはり継続した勉強が必要です。
そのことに気付かせてくれたのは、私のプリセプティでした。
いつも、指導をするたびに「どうしてこの方法でやってるんですか?」「このケアの根拠がわからないので教えてください!」と言われ、そのたびに、答えられず、調べてました。
とても大変でしたが、結果的に、前よりも自信を持って仕事できるようになり、プリセプティには感謝しています。
新人看護師の指導を行いながら、自分の課題と向き合う作業は、大変です。
ですが、課題解決に取り組むことは、自分の成長や、看護の質を上げることに繋がります。
こうしたことも、プリセプターがやりがいを感じる一面といえるでしょう。
5-3. 新人看護師の成長に、喜びを感じる
プリセプターがもっともやりがいを感じるのは、新人看護師の成長を感じられた時ではないでしょうか。
自分の指導が、新人看護師の成長に繋がっていると思うと、喜びもひとしおでしょう。
もちろん、そうなるまでには多くの時間や労力が必要です。
相性が合わない新人さんとペアになると、苦しいことのほうが多いかもしれないですよね。
成長した姿を見せてくれることが、プリセプターにとっては、1番の恩返しでしょうね。
新人看護師が成長し、チームの一員として活躍している姿を見ることは、何よりも喜ばしいことでしょう。
新人看護師の成長が、プリセプターのやりがいとなっているのは、紛れもない事実といえます。
6. プリセプターによくある質問
Q1. プリセプターに向いている人、向いていない人はいますか?
プリセプターに向いている人の特徴は、以下の3つです。
- 優しい口調で、根気よく教えられる人
- 新人看護師の視点に立って、考えることができる人
- 質問攻めにせず、なぜそう思ったのか、話しを聞ける人
一方、プリセプターに向いていない人の特徴は、以下の3つです。
- 気分にムラがあったり、威圧的な人
- 常にダメ出しをする人
- 先輩看護師の前と、後輩看護師の前で、態度が変わる人
また、上記の特徴とは別に、プリセプターと新人看護師の相性も大切になってきます。
たとえ、プリセプターに向いている方であっても、新人看護師との相性が悪ければ、効果的な指導ができないこともあります。
その場合は、周りの先輩看護師や、アソシエーター、師長に相談し、どのようなアプローチをするべきか、話し合うことをおすすめします。
Q2 新人に怒らずに指導する方法はありますか?
業務の忙しさによっては、余裕が持てず、強い口調で指導をしてしまうプリセプターもいるかもしれません。
しかし、新人看護師にとっては、職場の中で唯一頼れるのは、あなただけかもしれません。
新人看護師が委縮しないような声かけを心がけ、万が一、強い口調になってしまった場合は、時間が空いてからでも良いので、正直に謝ることをおすすめします。
今はまだ新人看護師であっても、いずれは同じチームで働く仲間です。指導をする上で、余裕がない方は、先輩に業務量の調整を相談することをおすすめします。
また、新人看護師との関係に悩む方は、アソシエーターに相談してみると良いでしょう。
Q3 新人がインシデントを起こした時、どうフォローしたらいいですか?
新人看護師は、業務に慣れていないことも多く、失敗をしてしまうこともあるでしょう。
しかし、その失敗が、患者さんを危険に晒す危険性があった場合は、インシデントとして報告書をあげる必要があります。
インシデントは、失敗した本人を責めるものではなく、その事例から対策を講じるためのものです。
ですので、新人看護師がインシデントを起こした場合、その時の工程や考えを丁寧に振り返り、再発防止に向けた対策を、一緒に考えてあげると良いでしょう。
また精神的に落ち込んでいる場合は、話しを聞いてあげたり、そばにいてあげて、新人看護師に寄り添うような関わりをしましょう。
7. まとめ
プリセプターが抱えやすい悩みは、以下の5つでした。
- プリセプターとして自信が持てない
- 指導の方法がわからない
- 通常業務との両立が難しい
- 新人とコミュニケーションがとれない
- 先輩看護師からのプレッシャーを感じる
何度もお伝えしていますが、新人看護師を育成は、チームや組織全体で行うものです。
プリセプターだけが責任を感じる必要はありません。
指導をしていく中で、悩んだ場合は、1人で抱え込まず、周りの先輩やアソシエーターに頼りましょう。
プリセプター業務を通して、あなたが看護師としてさらにご活躍できることを、陰ながら祈っております。
でも、実際に新人さんと対面すると、緊張してしまい、普段しないようなミスをしたり、質問をされても答えられなかったりと、散々です。
だんだん自信を失って、「私はプリセプターに向いてないのかな」と悩む時もあります。
こんな自信のないプリセプターに指導されて、新人さんも不安だと思います。。