「特別養護老人ホームの看護師はどんな仕事をしているの?」「そもそも特養のことがわからない」とお考えですね。
特別養護老人ホームとは、在宅での生活が困難な高齢者が入居できる公的な介護施設の一つです。
利用者は原則要介護3以上の方で、日常生活のさまざまな場面でケアを必要としています。
介護のイメージが強い方もいるかもしれませんが、利用者が穏やかに過ごすためには看護師の専門的な知識やスキルが欠かせません。
そこで、本記事では、特別養護老人ホームで働く看護師の仕事内容や役割などを以下の流れで解説します。
- 特別養護老人ホーム(特養)とは
- 特養の看護師の仕事内容と役割
- 特養における看護師の配置基準
- 大変?きつい?看護師が特養で働く5つのデメリット
- 看護師が特養で働く5つのメリット
- 特養の看護師に向いている人
- 特養の看護師によくある質問
この記事を読めば、特別養護老人ホームに関する全知識が得られるでしょう。
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1. 特別養護老人ホーム(特養)とは
特別養護老人ホーム(特養)とは、自宅で生活することが困難な利用者さんに対して、介護や機能訓練、ADLの介助などを行う公的施設です。
介護老人福祉施設とも呼ばれ、介護保険が適用され運営しています。
おもな特徴は、以下の3つです。
- 対象は、原則要介護度3以上の高齢者である(特例で1、2の方も入居可能)
- 看取りやターミナルケアも行っている
- 公的な施設なので、利用者さんは比較的安価で利用できる
現場で働くほとんどは介護スタッフですが、看護師の活躍の場も多く、様々な施設で看護師の募集が行われています。看護師の主な業務は利用者さんに対する援助で、介護スタッフと協働で行っていきます。次章では、看護師が行っている具体的な業務をご紹介します。
2. 特養の看護師の仕事内容と役割
特養の看護師は、利用者さんが穏やかに生活できるように、健康管理や日常生活のサポートを行います。
病棟経験のある看護師さんがイメージしやすいように、病院との違いを表にまとめました。
特養 | 病院 | |
仕事内容 | ・健康管理 ・医師の指示に基づく医療処置 | ・医師の診療の補助 ・患者さんの療養上の世話 |
夜勤の有無 | なし (オンコール待機はあり) | あり |
医師 | 常駐していない施設が多い | 常駐している |
求められる役割 | ・生活の場であることを意識して関わる ・看護スキルを活かして、介護ケアを行う ・急変しても、希望に沿って医療処置を行わないこともある | ・診療がスムーズに行えるようサポートする ・看護スキルを活かしてケアや指導を行う ・急変があれば、即座に対応する |
対象者との関わり | 長期入所する利用者さんも多く、じっくりと関わることができる | 入退院が激しい病棟ほど、患者さんとじっくり関わる機会は少ない |
なかには点滴や胃ろうなどの医療行為を必要とする方もいますが、病院のように必ずしも医療や救命を優先するのではなく、「生活の場を提供する」というイメージです。
利用者さんが最期までその人らしく過ごせるように、看護師はスキルを活かしてさまざまな支援を行います。
具体的な業務内容は、以下の9つです。
- 2-1. 利用者さんの健康管理
- 2-2. 日常生活全般のケア
- 2-3. 医師の指示に基づいた医療行為
- 2-4. 外来受診や入退院時の付き添い
- 2-5. 夜間のオンコール対応
- 2-6. 急変や緊急時の対応
- 2-7. 看取りやターミナルケア
- 2-8. 介護スタッフへの指導
- 2-9. 環境整備
順を追って見ていきましょう。
2-1. 利用者さんの健康管理
特養の看護師は、利用者さんの健康管理全般を行います。
基本的にモニターなどの医療機器は使用しないため、普段から利用者さんの体調を把握することがとても大切です。
■主な業務内容
- バイタルサインのチェック
- 体調の確認
- 水分量や排泄状態の確認
- 睡眠状況の確認
とくに認知症や基礎疾患が原因でご自身の体調をうまく伝えられない方に対しては、広い視野で観察することが求められます。
2-2. 日常生活全般のケア
特養の看護師は、介護スタッフと連携して様々なケアも行います。
特養では介護度が高い利用者さんも多いので、日常生活のさまざまな場面で援助を行っていきます。
■主な業務内容
- 口腔ケア
- 食事の準備、介助、片付け(必要に応じて、食事形態の変更など)
- トイレへの誘導、オムツ交換
- 入浴やシャワー浴介助、清拭
施設によっては介護スタッフと分業し、看護師が上記のケアを行わないこともあります。
ただし、利用者さんの認知機能や嚥下機能が低下して日常生活に支障が出たり、褥瘡などのトラブルで処置が必要だったりする場合は、看護師も積極的にケアに介入していきます。
2-3. 医師の指示に基づいた医療行為
医師の指示のもと、さまざまな医療行為を行うのも特養の看護師の仕事です。
特養で実施できる医療行為は限られていますが、体調の変化に注意してケアに当たることが大切です。
■主な業務内容
- 服薬管理(内服薬の準備・与薬)
- 点滴
- 胃ろうの準備・実施
- 褥瘡処置
- 喀痰吸引
- 在宅酸素療法の管理
- 血糖測定
- インスリンの投与
- 点眼薬や軟膏塗布などの処置
- 尿道留置カテーテルの交換
- ストーマ管理
- 摘便
上記の医療行為のなかには、介護スタッフが実施するのが禁止されているものや、看護師と協働で行うのであれば実施可能なものもあります。
施設によっては、医療行為全般は看護師が行うと取り決めしているところもあるので、チェックしてみましょう。
介護士に依頼できる医療行為はあるの?
特養では、看護師と介護士が業務分担を行い利用者さんにケアを行います。介護士が実施可能な医療行為も
たとえば、以下の医療行為は介護士が実施することが可能です。
腋下や外耳道での体温測定、自動血圧測定器を使った血圧測定、パルスオキシメータの装着、軽い切り傷や擦り傷の処置、汚物で汚れたガーゼの交換、皮膚への軟膏塗布(褥瘡処置は除く)、湿布の貼付、点眼、服薬介助、坐薬の挿入、鼻腔への薬剤噴霧の介助、爪切りや爪やすり、歯ブラシや綿棒を使用した口腔ケア、耳垢の除去、ストーマパウチにたまった排泄物の除去、自己導尿の補助、市販の浣腸器を使った浣腸
参考:歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について
また、実務者研修を受けている介護福祉士は、いくつかの条件が揃っていれば、喀痰吸引や経鼻栄養の実施が可能になります。(施設が医療と介護の連携が取れていること、本人や家族の同意が得られていること、都道府県知事の認可が得られていること等)
上記に該当しない医療行為は、看護師が行います。
2-4. 外来受診や入退院時の付き添い
特養の利用者さんが病院に受診したり入院したりする時は、看護師が付き添い、施設での状況について医師や病院の看護師に伝えます。
また、退院の際には、病院での状況を申し送ってもらい、施設での生活に活かしていきます。
■主な業務内容
- 外来受診の付き添い(施設によっては医師が往診に来ることもある)
- 入院時の付き添い
- 救急車で搬送される場合の付き添い
- 退院時の付き添い
特養は医師の常駐義務がないので、利用者さんが体調不良になった場合、病院受診の判断を看護師が行うこともあります。
受診の判断基準についてはマニュアルが用意されている施設もありますが、利用者さんの状態や普段との違いを見極め、迅速に対応できるように日頃から準備しておくことが大切です。
2-5. 夜間のオンコール対応
特養の看護師は24時間常駐義務がない代わりに、夜間のオンコール対応を行います。
利用者さんの状態変化があれば、介護スタッフから電話連絡が来たり、必要があれば直接職場に駆けつけたりします。
■主な業務内容
- 緊急事態が起こった際の電話対応
- 必要があれば職場に駆けつける
オンコール対応の回数は、看護師の人数によって異なります。施設によっては2人体制でオンコール対応を行っている施設もあるので、気になる施設があれば事前に確認しておきましょう。
施設によっては看護師の夜勤が導入されている特養もある
少数ではありますが、看護師の夜勤を取り入れている特養もあります。
その背景にあるのは、医療依存度の高い利用者さんが増えていることや、特養が看取りを行う場所として機能していることです。夜勤を導入している特養の多くは2交替で、複数人の介護スタッフと一緒に夜勤を行うのが一般的になっています。
これから特養で働きたいとお考えの方は、夜勤の有無についてしっかり確認しておくことをおすすめします。
2-6. 急変や緊急時の対応
利用者さんが急変した場合、状態の観察やバイタルサインの確認などの対応をします。
急変時の対応方法については、ある程度マニュアルで決められていることが多いので事前に確認しておきます。
■主な業務内容
- 急変対応
- 周囲のスタッフへの指示
- 医師への連絡
- 家族への連絡
- 病院受診の手続き
生命に関わる急変以外にも、発熱や脱水などが予測される利用者さんに対して、あらかじめ医師から約束指示をもらっておくと、緊急時でも速やかに対応が可能になります。
2-7. 看取りやターミナルケア
特養では、利用者さんのターミナルケアや看取りも行っています。
看護師は、利用者さんに最期まで寄り添うために他職種と連携して援助を行います。
■主な業務内容
- 利用者さんや家族に、看取りに関する希望を確認する
- 看取りの計画を立てる
- 他職種と共に看取りのチームを作ることもある
- チームの中心的役割を担う
ターミナルケアの内容は、病気があるかどうか、機能低下(老化)によるものかどうかで異なります。
看取りの希望は施設入居時に確認することも多いですが、時期が近付いてきたタイミングで改めて希望を確認することが大切です。
看護師は、利用者さんやご家族の希望を尊重し、後悔のない最期を迎えられるようサポートしていきます。
2-8. 介護スタッフへの指導
利用者さんの日常生活全般に関するケアを行うのは主に介護スタッフなので、効果的な援助や観察ポイントについて指導することもあります。
■主な業務内容
- 食事や排泄、入浴などのケアの方法やコツを伝える
- ケアの際に観察してほしいポイントを具体的に伝える
- 報告してほしい症状を具体的に伝える
看護師のスキルを活かして指導を行うことは、ケアの質の向上に繋がります。
しかし、指導に熱が入るあまり、キツイ言い方をしてしまうと介護スタッフとの信頼関係が崩れかねません。
看護師と介護スタッフは上下関係ではなく、あくまで協働関係にあると心得ておきましょう。
2-9. 環境整備
施設内の環境を専門的な視点で確認し、整えることも大切な業務の一つです。
環境整備が整っていないと、利用者さんだけでなく職員にも不利益が生じるので、都度注意していかなくてはなりません。
■主な業務内容
- 転倒や転落などの事故防止
- 使用されている薬剤の管理
- 感染予防マニュアルの作成
- 感染予防対策の実施
とくに新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、特養でも感染予防に力を入れています。
利用者の安全を守るためにも、看護師が中心となって事故防止や感染予防に努めていくことが重要です。
<特養の看護師の1日のスケジュール例>
8:30 | 情報収集…利用者さんの状態・病院受診の有無・処置の確認を行います。 業務開始…申し送り・胃ろう注入・口腔ケア・処置・ 内服の確認・巡回・カルテの確認を行います。 |
12:00 | 昼休憩…お弁当を食べて一休みします。 |
13:00 | 業務再開…口腔ケア・検温・巡回・翌朝の胃ろうの準備を行います。 |
15:00 | 確認、準備、記録…内服の確認・夕の胃ろうの準備・カルテの記録を行います。 |
17:00 | 業務、申し送り…夕の胃ろう注入・遅番への申し送りを行います。 |
17:30 | 業務終了 |
※石川ナースナビ|特別養護老人ホームで働くナースの1日をもとに作成
ほかにも、レクリエーション活動に参加したり、医師の診察の介助を行ったりすることもあります。
3. 特養における看護師の配置基準
特養では、利用者さんの人数によって配置義務のある看護師の人数が変わります。
同じ居住系の介護施設と配置基準を比較した表は、以下の通りです。
←左右にスクロールできます→
特別養護老人ホーム (特養) | 介護老人保健施設 (老健) | 介護付き有料老人ホーム | |
看護師配置基準 (常勤換算) ※准看護師でも可 | 入居者30人以下…1人以上 入居者31~50人…2人以上 入居者51~130人…3人以上 | 入居者:介護・看護職員=3:1 (入居者100人あたりの看護職員は9人) | 入居者30人以下…1人 入居者31~80人…2人 入居者81~130人…3人 |
医師の配置基準 (入居者100人当たり) | 必要数(非常勤可) | 1人 | 配置義務はない |
運営 | 公的施設 | 公的施設 | 民間施設 |
入居者の要介護度 | 原則要介護3以上 | 要介護1~5 | 要支援・要介護 |
入居期間 | 制限なし | 3~6カ月程度 | 制限なし |
特徴 | ・要介護度が高い人が多い ・看取りまで行っている ・他の居住系介護施設より費用が安い | ・利用者の目的は在宅復帰である ・リハビリが盛ん ・医療的ケアを提供することもある | ・施設数が多い ・費用にはバラツキがあり、高めである ・多様なサービスが提供されている ・費用が高額な施設では、 看護師にも高い接遇が求められる |
参考:厚生労働省|配置職員の状況、特定施設入居者生活介護
4. 大変?きつい?看護師が特養で働く5つのデメリット
特養ならではの仕事が「大変」「きつい」と感じる看護師さんは多くいます。この章では、特養で働く看護師が感じやすい5つのデメリットをご紹介します。
- 4-1. 看護師が少なくプレッシャーを感じやすい
- 4-2. 看護師としてのスキルアップがしづらい
- 4-3. 収入が下がることもある
- 4-4. コミュニケーションに難しさを感じる
- 4-5. オンコール対応が負担に感じる
4-1. 看護師が少なくプレッシャーを感じやすい
特養では看護師の人数が少ないため、責任が重くプレッシャーを感じるという方もいます。
たとえば、利用者さんが体調不良になった時に状態を観察し、受診すべきか判断しなくてはならず、不安を感じる方もいます。
基本的にはマニュアルに準じて行動し、提携医療機関の医師に連絡するなどのフォロー体制が整っています。
しかし、一緒に勤務している介護スタッフとの連携がうまく取れないと、1人で緊急対応せざるを得ない状況に陥ることもあり、負担を感じてしまいます。
4-2. 看護師としてのスキルアップがしづらい
特養で実施できる医療行為は限られているため、看護師としてスキルアップしづらいと感じる方もいます。
新卒で病院に就職しましたが忙しさや責任の重さについていけず、今は特養で勤めています。
病院と違って時間に追われることがないので、楽しく仕事ができています。ただ、看護師の経験よりも介護の経験ばかり積んでる気がして、ふとした時に不安になります。
看護師として働いていると「このままで良いのだろうか」「今のうちに経験を積んだほうが良いのかな」と不安を感じる方もいるようです。
もちろん特養ならではの看護を極めることも立派なキャリアのひとつです。
ただ、看護スキルを磨きたいと考えているのであれば、医療施設で働いたほうが近道にはなるでしょう。
4-3. 収入が下がることもある
ほとんどの特養では夜勤がないため、病院から転職した看護師さんのなかには、収入が下がったと感じる方もいるようです。
前の職場が手術室だった分、利用者さんと会話できるのは楽しいんですけどね。欲を言えば、もう少しお給料がもらえると嬉しいです。
夜間のオンコール待機を担当すると、オンコール手当が支給される特養が多いです。
しかし、その相場は病院の夜勤手当よりは低いため、結果的に収入が下がってしまうこともあるようです。
例)
□病院勤務の頃基本給
24.4万円+夜勤手当3.7万円(三交代・月8回)=28.1万円
※基本給は勤続10年・非管理職の看護師の平均額である244.587円で計算
※夜勤手当は平均額である準夜4,154円、深夜5,122円を各4回ずつ行ったと仮定し計算
※通勤手当や住宅手当等は除く
参考:日本看護協会|病院看護実態調査 報告書
□特養に転職
基本給23.8万円+オンコール手当1.2万円(月9回)=25万円
※基本給は特別養護老人ホーム看護職員(正社員)の平均値である238.440円で計算
※オンコール手当は平均待機手当額である1.353円で計算
※通勤手当や住宅手当等は除く
参考:日本看護協会|特別養護老人ホーム・介護老人保健施設における看護職員実態調査
→1ヶ月あたり3.1万円ダウン
オンコール手当は、各施設によって支給額にばらつきがあり、病院の夜勤のような一定以上の手当は期待できないのが現実です。
仮に、待機中に実際に対応したとしても、8割以上の施設では電話対応だけでは手当の追加支給を行っておらず、実際に出勤した時だけ手当の追加支給を行っている施設がほとんどでした。
夜間待機中の出勤手当は1回あたり平均2,288円ですが、実際夜間に出勤するのは月1回程度なので、大幅な収入アップを期待できる訳ではないようです。(参考:日本看護協会|特別養護老人ホーム・介護老人保健施設における看護職員実態調査)
各種手当に関しては、施設によってバラツキがあるので、転職前に求人票でしっかり確認しておくことをおすすめします。
4-4. コミュニケーションに難しさを感じる
利用者さんやスタッフ同士のコミュニケーションに難しさを感じることもあるでしょう。
たとえば、利用者の中には認知症で攻撃的になる方もおり、仕方ないとわかっていても「辛い」と感じることもあります。
また、スタッフ同士の人間関係に悩み仕事に支障をきたしたことが辛かったと話す方もいました。
本来であれば、スタッフ同士は協力して利用者さんの生活を支えていかなくてはなりません。しかし、人間関係の輪を乱すような人が職場にいると、仕事にまで影響が出てきてしまいます。
4-5. オンコール対応が負担に感じる
夜間のオンコール対応が負担に感じる看護師は多くいます。
具体的には、「行動が制限される」「身体的・精神的に休まらない」など、さまざまな理由で負担を感じているようです。
引用:日本看護協会|特別養護老人ホーム・介護老人保健施設に おける看護職員実態調査 報告書
オンコール対応した翌日は休みにはならず、通常通り勤務する施設がほとんどです。
そのため、疲れが溜まったまま出勤しなくてはならず、辛いと感じてしまう看護師も多いようです。
特養のオンコール対応の実態とは?
日本看護協会が2015年に行った調査では、特養の9割以上でオンコール対応が導入されていることがわかっています。(参考:特別養護老人ホーム・介護老人保健施設における看護職員実態調査報告書)
その実態は、以下の通りです。
1か月あたり
- 待機回数:
「5~9回」が 36.0%で最多、平均待機回数は 9.1 回/月 - 電話対応した回数:
「1~4回」が46.5%で最多、平均電話対応回数は 2.4回/月 - 出勤した回数…
「0回」が53.5%で最多、次いで「1回」が20.0%
これらの結果を見る限り、オンコール待機回数は多い一方で、実際に電話や出勤などの対応を行う回数はそこまで多くないようです。
しかし、いつオンコールが来るかわからない状況ではプライベートとの切り替えが難しく、十分に休息はとりにくくなってしまいます。
これから特養で働きたいとお考えの方は、オンコール体制や月の平均待機回数をしっかり確認しておきましょう。
5. 看護師が特養で働く5つのメリット
特養で働くことで、やりがいを見出している看護師も多くいます。
この章では、特養で働く看護師が感じる5つのメリットをご紹介します
5-1. 夜勤や残業が少ない
特養ではほとんどの施設が看護師の夜勤を導入していないので、夜勤なしで働くことができます。
また突発的な業務も少なく、残業が少ない傾向にあり、実際に残業が少ないことを理由に特養に転職している方もいます。
病院では、始業時間より早く出勤したり、終業後も遅くまで残業したりと、時間外勤務が慣例になっている職場もありますよね。
度重なる残業や夜勤を続けていけば、いずれ限界を迎えてしまうのは言うまでもありません。
家庭との両立やプライベートの時間を大切にしたいと考えている方にとって、特養は働きやすい環境であると言えるでしょう。
5-2. 病院と比べて忙しくない
特養は、病院と比較すると時間に余裕をもって働くことができます。
その理由は、病院のような治療や検査に合わせたタイムスケジュールではなく、利用者さんの生活に寄り添ってケアを組んでいくからです。
時間に追われることが少ないため、利用者さん一人一人とじっくり関われるのも魅力の一つです。
もちろん、ケアや処置が重なれば、忙しさを感じる場面もあるかもしれません。
しかし、病院のように「座る時間もないくらい忙しい」といった状況は少ないので、メリハリのある働き方ができるでしょう。
5-3. 利用者さんと長期的に関わることができる
特養では、利用者さんと長期的に関わることができます。
厚生労働省の調査によれば、特養の利用者さんの平均在所日数は約4年となっており、他の介護施設と比べて長期間の関わりができます。(参考:厚生労働省|介護老人福祉施設)
継続的な関わりのなかで利用者さんの変化が感じることができると、やりがいに繋がりますよね。
こうした長期的な関わりができるのも、特養ならではといえるでしょう。
5-4. 病院とは異なる看護観が学べる
特養では、利用者さんの生活に重点をおき、その人らしく過ごせるように看護を行っていきます。
病院とは違う関わり方にやりがいや面白さを感じている方も多くいるようです。
また、特養で最期を迎える利用者さんに対して、どのような看取りを行うか考えるのも看護師の腕の見せ所といえるでしょう。
看取り介護チームにおいて中心的な役割を果たすのは看護職です。特養では看護職の活躍する場面が少ないと思われがちですが、それは大きな誤解。看護職が介護職などと連携しながら高度な「暮らしの中の看護」を実践し、穏やかな看取りにつなげていくことは、ケアに携わる者としての大きな醍醐味です。そこでは病院とは違う姿勢、先に考えて動くより、何か起きたらその場で考えるという姿勢が大切かも知れません。
引用:日本看護協会|穏やかな老後を支え、最期に寄り添う看護
5-5. 介護分野での経験が積める
特養では介護度の高い利用者さんが多いので、介護分野の幅広い経験を積むことができます。
今後さらに介護分野のニーズは高まっていくことが予測されるので、プラスのキャリアになることは間違いありません。
この方のように、老年看護や個別性を重視したケアを学ぶことがスキルアップに繋がっていきます。
病院とは異なるスキルやケアが学べるのも、特養ならではなのです。
6. 特養の看護師に向いている人
ここまで紹介してきた内容を踏まえて、特養の看護師に向いている人の特徴をお伝えします。
それは、以下の5つです。
- 利用者さんと長期的な関わりをしたい人
- 日勤メインの仕事を探している人
- 他職種と連携して仕事ができる人
- 看取りの看護に興味がある人
- 柔軟な価値観を受け入れられる人
介護施設未経験の方の場合、特養ならではの看護や体制に戸惑ってしまう方もいるかもしれません。
とくに、病院やクリニックから転職する方は、生活を重視した看護に難しさを感じることもあるでしょう。
しかし、特養ならではのケアや看護に携わり、多様な価値観に出会うことで、やりがいを見出すことが出来るはずです。
老年看護や介護施設で働くことに興味のある方は、ぜひ転職を検討してみることをおすすめします。
7. 特養の看護師によくある質問
最後に、特養への就職・転職を考える方によくある質問をまとめます。
Q1. 新卒でも特別養護老人ホームで働けますか?
可能ですが、はじめは極力病院で働くことをおすすめします。
職場によっては、新卒の看護師を採用しているところもありますが、特養では医師が常駐していないため、急変や緊急時に中心となって対応するのは看護師になります。経験不足では適切な判断ができません。
看護師の人数が少ない環境の中で適切に判断し迅速な対応を行うためには、病院で経験を積んでから転職したほうが賢明といえるでしょう。
Q2. 特養と他の職場の掛け持ちはできますか?
職場の就業規定でダブルワークが認められている場合は、掛け持ちで働くことは可能です。
ただ、ダブルワークをする場合は本業と副業のシフト調整に注意して働かなくてはなりません。
ダブルワークに興味のある方は『看護師がダブルワークするなら?知っておきたい5つの注意点とおすすめの働き方4パターン』をご覧になってください。
Q3. 特養で働く看護師の平均年収・給料はどのくらいですか?
常勤の平均年収は約427万円、パート・アルバイトの平均時給は1500円です。
病院で働く看護師の平均年収よりもやや低い相場になっています(夜勤がないため)が、労働環境やワークライフバランスのとりやすさから、特養を選ぶ看護師も多くいます。
まとめ
特養で働く看護師の仕事内容や役割、メリット・デメリット、特養看護師に向いている人の特徴などについてご紹介しました。
利用者さんが穏やかに生活できるように、他職種のスタッフと協力してケアや処置にあたっていくことが大切です。
また、医療現場と違い、患者さんの生活に重点を置いて看護を行えることは、特養ならではの魅力だといえるでしょう。
特養の仕事に興味のある方は、転職を検討してみることをおすすめします。
あなたの人生が実り多きものになることを願っております。