「クリニックの給料ってどのくらい?」「病院と比べてどうなんだろう」と考えていませんか。
結論から言うと、クリニック勤務看護師の月々の給料は、約28.9万~30.5万円。手取りで23.1万~24.4万円です。
病院勤務と比べると、給料は低くなるケースがほとんどです。
ただ、クリニックは土日祝日が休みだったり、夜勤や残業が少なかったりと、お金の面以外にも様々なメリットがあります。家事育児との両立もしやすくなるでしょう。
この記事では、元人事部で看護師の転職にも詳しい筆者が、クリニック勤務の看護師の給料事情について分かりやすく解説していきます。
この記事を読めば、クリニック勤務の看護師の給料事情について理解が深まり、クリニックで働く自分の姿をイメージできるようになるでしょう。
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※2025年11月17日更新
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クリニック看護師の給料は平均28.9万~30.5万円
クリニック(診療所)に勤務する看護師の給料は、勤務先の運営形態や夜勤の有無によって差があります。
厚生労働省「第24回 医療経済実態調査(2023年)」によると、
医療法人の常勤職員:月給 約30.5万円(年収 約426万円)
個人診療所の常勤職員:月給 約28.9万円(年収 約366万円)
といった水準であり、病院勤務の看護師と比べてやや控えめな傾向が見られます。
本章では、クリニック勤務の看護師における給料・手取り額の実態を、勤務形態・学歴・施設種類・手取り額といった多角的な視点から詳しく解説していきます。
クリニック勤務の看護師の平均給与・月収・手取り額の最新データ
クリニック(診療所)で勤務する看護師の給与は、運営主体(医療法人 or 個人診療所)によって大きく異なります。
厚生労働省「第24回 医療経済実態調査(2023年)」によると、常勤看護職員の年間給与は以下の通りです。
病院種別 年収(賞与込み) 月給(※) 想定手取り(月) 医療法人診療所 4,266,900円 305,568円 約24.4万円 個人診療所 3,666,817円 289,000円 約23.1万円 出典:厚生労働省「第24回 医療経済実態調査 報告書」(2023年)
※「月給」は、年収のうち賞与を除いた“給料年額(①)÷ 12か月”で算出
※ 想定手取りは、税金・社会保険料(概ね20%)控除後の推定額
これらは常勤で日勤中心の看護師に対する平均であり、夜勤や交代制勤務を含まない、いわゆる“クリニック勤務らしい働き方”に基づくものです。
一方、厚生労働省「2024年 病院看護実態調査」によれば、病院勤務の看護師(31〜32歳・勤続10年・非管理職)の月収は334,325円と報告されており、クリニック勤務とは月あたりで約3万〜4万円の差がある計算になります。
この差は、単純な基本給の違いに加え、夜勤手当や各種手当の有無が影響していると考えられます。
とはいえ、給与が控えめな一方で、クリニック勤務は日勤中心で残業が少なく、休日も確保されやすいといった働きやすさが特徴です。
そのため、「生活リズムの安定」「家庭との両立」を重視する方には、十分に魅力ある選択肢と言えるでしょう。
手取り額は総支給額の約80%になります。手取りが総支給額よりも低くなってしまう理由は、主に以下の2つです。
- 税金が引かれるため
- 社会保険料が引かれるため
税金は「所得税」と「住民税」の2つ。社会保険料は「健康保険料」「厚生年金保険料」「雇用保険料」の3つです。(さらに40歳以上の場合は「介護保険料」)
総支給額から様々な税金・社会保険料が控除されるわけです。その結果、あくまでも目安ですが、総支給額の80%程度が手取り額になります。
学歴や経験による、クリニック看護師の初任給の違い【高卒と大卒で比較】
看護師としての初任給は、学歴によって一定の差があることが知られています。
特に、「高卒+3年課程(専門・短大等)」と「大学卒(看護学部)」の間には、基本給ベースで5,000〜6,000円程度の差が見られます。
日本看護協会『2024年 病院看護実態調査報告書』(No.101)によると、新卒看護師の初任給は以下の通りです。
学歴 回答病院数 平均基本
給与額平均税込
給与総額高卒+3年課程 3,061施設 209,697円 276,127円 大卒 2,954施設 215,614円 284,063円 出典:日本看護協会『2024年 病院看護実態調査報告書』No.101
※税込給与総額には通勤手当・住宅手当・夜勤手当などを含む。時間外手当は除外
※夜勤回数:三交代で月8回、または二交代で月4回を想定
このように、初任給の差は月額で6,000円弱と、一見すると小さな差に見えます。
しかし、長期的には昇給基準や役職登用の可能性にも影響するため、累積での差額は年収ベースで数万円〜十数万円程度となる場合もあります。
また、クリニック勤務では病院勤務よりも昇給幅が小さく設定されている傾向があり、初任給の差が後々まで固定化されやすい側面もあります。
とはいえ、職場によっては「学歴にかかわらず一律支給」としているクリニックもあり、求人情報の詳細や条件交渉次第で逆転するケースも珍しくありません。
病院・介護施設など他施設と比較して給料はどうか?
クリニック勤務の看護師が、自分の給与水準を判断する上で参考になるのが、他の医療・福祉施設における看護師の平均給与との比較です。
結論としては、次のことが言えます。
収入重視:公立・国立などの病院勤務
生活リズムや家庭との両立重視:クリニック勤務が有力な選択肢に
手取りベースでの比較:一部の社会福祉法人・介護施設と大きな差はない(夜勤がないため)
日本看護協会『2024年 病院看護実態調査報告書』(No.101)では、設置主体別に勤続10年・非管理職の看護師の月収(総支給額)が以下のように示されています。
施設形態 平均月収(税込) 想定手取り(月) 国立病院 345,670円 約27.6万円 公立病院 344,251円 約27.5万円 日本赤十字社 333,096円 約26.6万円 社会福祉法人 322,726円 約25.8万円 医療法人 321,891円 約25.7万円 医療生協 319,379円 約25.5万円 個人診療所(クリニック) 338,346円 約27.0万円 出典:日本看護協会『2024年 病院看護実態調査報告書』No.101
※ 想定手取り額は、社会保険料・税金等(約17〜20%)を控除して概算
これらを比較すると、クリニックに該当する「医療法人」や「個人診療所」は、給与水準としてはやや控えめな部類に含まれることがわかります。
ただし、社会福祉法人や医療生協といった中小規模の施設と比べると、ほぼ同水準〜やや高めの傾向にあり、必ずしも極端に低いというわけではありません。
また、設置主体が「国立」や「公立」である病院の場合、給与のベースが公務員規定に基づいているため、基本給が高めに設定されている点も特徴です。
このあたりの違いは、福利厚生や賞与、勤続年数による昇給幅などにも影響してきます。
なぜ?クリニックの給料が病院より低いと言われる理由
クリニックの給料は病院と比べて低い傾向があります。前述の比較表でも示した通り、年収で50〜100万円程度の差が出ることも珍しくありません。しかし、なぜクリニックの給料は病院より低くなるのでしょうか。
この章では、給料の差が生まれる具体的な理由を解説します。単に「給料が低い」という事実だけでなく、その背景にある仕組みを理解することで、クリニック転職が自分に合っているかどうかを冷静に判断できるでしょう。
夜勤・オンコール手当がない
クリニックと病院の給料差の最大の要因は、夜勤手当の有無です。
病院勤務の看護師は、2交代制や3交代制で夜勤を担当し、1回の夜勤につき5,000円〜15,000円程度の夜勤手当が支給されます。月に4〜8回夜勤をこなせば、月額2〜10万円、年間では24〜120万円もの夜勤手当が得られる計算になります。
一方、クリニックでは基本的に夜勤やオンコール対応がありません。診療時間は日中のみで、夜間は閉院しているため、夜勤手当という概念自体が存在しないのです。
具体例で比較
- 病院勤務(夜勤あり): 基本給25万円 + 夜勤手当8万円(月8回) = 月収33万円
- クリニック勤務(夜勤なし): 基本給25万円 = 月収25万円
基本給が同じでも、夜勤手当の有無で月収に8万円、年収にして約100万円近い差が生まれます。
オンコール手当も同様
訪問看護ステーションや一部の病院では、オンコール当番として待機し、緊急時に対応する体制があります。オンコール手当は1回1,000〜3,000円程度ですが、月に数回担当すれば追加収入になります。一般的なクリニックではオンコール体制もないため、この手当も得られません。
注意:一部のクリニックには夜勤がある
ただし、美容外科クリニックや産婦人科クリニック、一部の有床診療所では、夜間対応や宿直が発生することがあります。こうしたクリニックでは夜勤手当が支給されるため、一般的なクリニックより給料が高めに設定されています。
夜勤がないことは、給料面ではデメリットですが、生活リズムが整い、心身の負担が軽くなるという大きなメリットでもあります。あなたが「給料」と「生活の質」のどちらを優先するかによって、評価は変わるでしょう。
社会保険が完備でないケースもある
小規模クリニックでは社会保険の加入義務がないため、福利厚生面で不利になることがあります。
従業員数が5人以上の事業所では、健康保険と厚生年金保険への加入が法律で義務付けられています。しかし、従業員数が5人未満の小規模事業所(個人経営のクリニックなど)では、社会保険の加入義務がありません。
社会保険が完備でない場合のデメリット
社会保険に加入していないクリニックで働く場合、看護師自身が国民健康保険と国民年金に加入する必要があります。これには以下のようなデメリットがあります。
保険料の負担が大きい: 社会保険(健康保険・厚生年金)は、事業主と従業員が折半して保険料を支払います。しかし、国民健康保険と国民年金は全額自己負担となるため、手取り額が減少します。
将来の年金額が少ない: 厚生年金は国民年金に上乗せされる形で支給されるため、将来受け取れる年金額が多くなります。国民年金のみの場合、老後の年金額が少なくなります。
傷病手当金がない: 健康保険に加入していれば、病気やケガで働けなくなった際に傷病手当金が支給されますが、国民健康保険にはこの制度がありません。
具体的な負担額の違い(概算)
- 社会保険(厚生年金+健康保険)の場合: 給与の約15%(本人負担分)、事業主も同額負担
- 国民年金+国民健康保険の場合: 月額3〜5万円程度(全額自己負担、収入により変動)
月給25万円の場合、社会保険なら約3.7万円の負担で済みますが、国民保険では4〜5万円の負担になることもあります。
転職前に必ず確認すべきポイント
求人情報や面接で、以下の点を必ず確認しましょう。
- 「社会保険完備」と明記されているか
- 雇用保険や労災保険も加入しているか
- 賞与(ボーナス)の有無と支給実績
小規模クリニックでも、きちんと社会保険を完備しているところはあります。逆に、社会保険がない職場は、見かけの月給が高くても、実質的な手取りや将来の保障を考えると不利になる可能性があるため、慎重に判断しましょう。
その他の福利厚生の違い
病院では、住宅手当、家族手当、通勤手当、退職金制度、院内保育所など、充実した福利厚生が整っていることが多いです。一方、小規模クリニックでは、こうした福利厚生が限定的または全くないケースもあります。
給料の額面だけでなく、福利厚生や社会保険の有無も含めた「総合的な待遇」で比較することが重要です。
給料だけじゃない!クリニック勤務のメリット・デメリット
クリニックの給料は病院より低い傾向がありますが、働き方には独自のメリットも多く存在します。一方で、デメリットも理解しておく必要があります。この章では、給料以外の側面から、クリニック勤務の実態を詳しく解説します。
自分にとって何が大切か、優先順位を明確にした上で、クリニック転職が適切かどうかを判断しましょう。
【メリット】残業が少なくプライベートと両立しやすい
クリニック勤務の最大のメリットは、時間的な余裕と生活の安定性です。
クリニックでは診療時間があらかじめ決まっているため、残業が発生しにくく、終業時間も比較的安定しています。病院のように急患や夜間の緊急対応が少ないことも、定時で帰れる要因の一つです。
残業時間の比較データ
日本看護協会の調査によると、月の残業時間が6時間以内の施設の割合は以下の通りです。
- クリニック(診療所): 33.3%
- 病院: 19.9%
クリニックの約3分の1は、残業がほとんどないという結果が出ています。病院と比べて、残業が少ない職場が多いことが分かります。
生活リズムの安定
夜勤がなく、日中のみの勤務が中心なため、生活リズムが整いやすいのも大きなメリットです。毎日同じ時間に起きて、同じ時間に帰宅できる規則正しい生活は、心身の健康維持に大きく貢献します。
土日祝日が休みで予定が立てやすい
多くのクリニックは土日祝日が休みで、カレンダー通りの勤務になります。病院のようなシフト制ではないため、家族や友人との予定が立てやすく、旅行や習い事などのプライベートの充実も図りやすいでしょう。
特に個人経営のクリニックでは、夏季休暇や年末年始休暇が長めに設定されていることも多く、まとまった休みを取りやすいのも魅力です。
給料は下がっても、時間的・精神的な余裕を得られることを重視するなら、クリニック勤務は理想的な選択肢です。
注意点
ただし、近年は夜遅くまで開院しているクリニックも増えており、場合によっては22時頃までシフトが入る可能性もあります。「19時閉院」「20時閉院」など、診療時間を事前に確認しておくことが重要です。
【メリット】特定のスキルに特化できる
クリニックでは診療科目が固定されているため、特定の分野のスキルを深めることができます。
病院では、内科・外科・整形外科・皮膚科など複数の診療科を扱い、数年単位で配置転換が行われることもあります。幅広い経験を積める反面、一つの分野を深く極めることは難しくなります。
一方、クリニックでは診療科目が固定されています。内科クリニック、整形外科クリニック、耳鼻咽喉科クリニックなど、一つの専門分野に特化しているため、その分野のスキルを集中的に磨くことができます。
特化できるスキルの例
- 内科クリニック: 生活習慣病の管理、健康指導、慢性疾患の継続的なケア
- 整形外科クリニック: ギプス固定、牽引処置、リハビリ補助
- 皮膚科クリニック: 皮膚疾患の観察、軟膏処置、レーザー治療の介助
- 耳鼻咽喉科クリニック: 吸入・ネブライザー処置、耳垢除去の介助
- 眼科クリニック: 視力検査、眼圧測定、点眼指導
患者様との継続的な関わり
クリニックでは、同じ患者様が定期的に通院されるため、長期的な関係を築くことができます。一人ひとりの患者様の生活背景や価値観を理解し、信頼関係を深めながらケアを提供できるのは、クリニック勤務ならではのやりがいです。
「〇〇さん、血圧が安定してきましたね」「先月よりも表情が明るくなりましたね」といった、継続的な関わりから生まれる喜びを感じられるでしょう。
注意点
診療科が固定されることは、スキルが偏るというデメリットにもなります。将来的に他の診療科や病院に転職したくなった際、応用が利きにくい可能性があることは理解しておきましょう。
【デメリット】人間関係が密接になりやすい
クリニックは少人数の職場のため、人間関係が密接になりやすく、合わない場合のストレスが大きくなります。
クリニックは一般的に小規模な職場であり、看護師を含めたスタッフの人数も限られています。院長、看護師2〜5名、受付・事務スタッフ数名という構成が一般的です。
人間関係が密接になることのメリットとデメリット
少人数だからこそ、コミュニケーションの機会は自然と増え、連携のしやすさやチームワークの強さにつながります。アットホームで家族のような雰囲気の職場も多く、良好な関係が築ければ非常に働きやすい環境になります。
一方で、合わない相手がいた場合のストレスは大きくなりがちです。病院であれば、合わない人とは別のフロアや別の勤務帯で顔を合わせずに済むこともありますが、クリニックでは毎日同じメンバーと一日中一緒に働くことになります。
逃げ場がないため、人間関係が悪化すると非常に辛い状況になります。
院長の人柄が職場環境を左右する
特に個人経営のクリニックでは、院長の人柄や経営方針が職場の雰囲気を大きく左右します。スタッフを大切にしてくれる院長のもとでは、看護師同士も自然と協力的な関係になりますが、威圧的・横柄な院長の場合、職場全体がギスギスした雰囲気になることもあります。
対策:転職前の見極めが重要
人間関係のトラブルを避けるためには、転職前の見学や面接時の雰囲気確認が非常に重要です。
- スタッフ同士の会話の雰囲気を観察する
- 院長の人柄や話し方をチェックする
- スタッフの平均勤続年数を質問する
- 最近の離職状況を確認する
頻繁に人が辞めているクリニックは、人間関係に問題がある可能性が高いため要注意です。
【デメリット】キャリアアップの選択肢が限られる
クリニックでは、昇進や役職のポストが少なく、キャリアアップの選択肢が限られます。
病院では、主任、副師長、師長、看護部長といった役職があり、経験を積むことでキャリアアップが可能です。また、認定看護師や専門看護師の資格取得を支援する制度が整っていることも多く、専門性を高めながらキャリアを築けます。
一方、クリニックでは「主任」程度の役職はあっても、それ以上の昇進の道はほとんどありません。
少人数組織のため、ポスト自体が少なく、昇給の幅も限定的です。
認定資格取得の支援も限定的
病院では、認定看護師や専門看護師の資格取得に対して、研修費用の補助や勤務調整などのサポートが受けられることがあります。
しかし、小規模クリニックでは、そうした支援制度が整っていないことが多く、自費・自己努力での資格取得が必要になります。
長期勤務には向いているが、出世志向には不向き
クリニックは、勤務形態が安定しており、家庭や私生活と両立しながら長期的に働き続けたい人には向いています。同じ診療科で経験を積むことで専門性を深められる面もあり、「出世よりも安定と安心感を重視したい人」に適した職場と言えるでしょう。
逆に、「どんどんキャリアアップしたい」「管理職を目指したい」「専門資格を取得してスペシャリストになりたい」という野心的な方には、クリニックは物足りなく感じる可能性があります。
こんな人には向いていない
- 管理職を目指したい
- 認定看護師・専門看護師を目指したい
- 年収を大きく上げたい
- 多様な診療科を経験したい
- 刺激的でダイナミックな環境で働きたい
クリニック転職を検討する際は、「自分のキャリアビジョンがクリニック勤務で実現できるか」を冷静に考えることが重要です。
クリニック勤務には、給料の低さやキャリアアップの限界といったデメリットがある一方、時間的余裕、生活の安定、患者様との深い関わりといった、お金では測れない価値があります。
あなたが仕事に何を求めるか、何を優先するかによって、クリニックが最適な選択肢になるかどうかが決まります。
次の章では、実際にクリニックに転職する際に知っておくべき、高収入クリニックの見つけ方や収入アップの方法をご紹介します。
給料UPを狙う!高収入が期待できるクリニックの種類
「クリニックの中でも、できるだけ給料が高いところで働きたい」と考える看護師の方は多いでしょう。クリニックの給与水準は施設によって大きく異なり、中には病院に匹敵する年収500万円以上の求人も存在します。
この章では、年収アップを狙う看護師にとって狙い目となる、高収入が期待できるクリニックの種類を3つに分けてご紹介します。それぞれの特徴と注意点を理解し、自分に合った転職先を見つけましょう。
自由診療・美容クリニック
年収相場:450万円〜600万円以上(インセンティブ次第でさらに高額も)
自由診療を行うクリニックでは、保険診療に比べて利益率が高く、クリニック側で治療費を自由に設定できます。そのため、看護師の年収も高水準に設定されている傾向があります。
代表的な自由診療クリニック
- 美容外科・美容皮膚科クリニック: レーザー治療、ボトックス注射、ヒアルロン酸注入、脂肪吸引など
- レーシック専門眼科クリニック: レーシック手術や視力矯正手術
- 不妊治療専門クリニック: 体外受精、顕微授精などの高度生殖医療
特に美容系クリニックでは、基本給が高いだけでなく、施術数や化粧品・美容サービスの販売実績に応じたインセンティブ(歩合給)制度を導入しているケースが多く、成果次第では年収600万円以上も可能です。
求められる業務とスキル
自由診療クリニックでは、一般的な看護業務とは異なるスキルが求められます。
- 施術の補助(レーザー照射、注射のサポートなど)
- カウンセリング業務(患者様の悩みを聞き、適切な施術を提案)
- 接遇・ホスピタリティ(顧客満足度が重視される)
- 商品・サービスの販売(営業要素が含まれる)
病院での看護とは異なり、「患者様」ではなく「お客様」として接する意識が求められ、接客業に近い要素が強くなります。マニュアルやトークスクリプトに沿った対応が求められる職場も多く、自由な看護よりもルールに従った業務が中心になる傾向があります。
メリットとデメリット
メリット
- 高収入が期待できる
- 夜勤がなく、日勤のみで高年収を実現できる
- 都市部に求人が多く、選択肢が豊富
- 美容知識が身につき、自分自身も美容施術を割引で受けられることがある
デメリット
- 営業ノルマや販売目標が設定されることがある
- 接客・接遇が重視され、看護というよりサービス業に近い
- 急変対応などの臨床スキルは身につきにくい
- 美容への興味がないと続けるのが苦痛に感じることも
美容クリニックは、「高収入を得たい」「美容に興味がある」「接客が得意」という方には向いていますが、「看護師らしい看護がしたい」という方には物足りなく感じる可能性があります。
専門クリニック(人工透析など)
年収相場:400万円〜500万円
特定の疾患や治療に特化した専門クリニックでは、高い専門性が求められる分、給与水準も一般的なクリニックより高めに設定されています。特に人工透析クリニックは、慢性的な人手不足と専門知識の必要性から、年収450〜500万円台の求人も珍しくありません。
代表的な専門クリニック
- 人工透析クリニック: 慢性腎不全患者の定期的な透析治療
- 内視鏡クリニック: 胃カメラ・大腸カメラなどの検査・治療
- 整形外科クリニック: リハビリや注射・処置が中心
- リウマチ専門クリニック: 生物学的製剤の投与など専門的な治療
これらのクリニックでは、日勤中心・夜勤なしという勤務形態でありながら、専門的な医療行為に携わることができ、スキルアップも期待できます。
求められる業務とスキル
専門クリニックでは、その分野に特化した知識と技術が必要です。
- 透析クリニック: シャント管理、透析装置の操作、穿刺技術、急変対応
- 内視鏡クリニック: 内視鏡検査の介助、鎮静剤の管理、検査後の観察
- 整形外科: ギプス固定、牽引処置、リハビリ補助
入職時に未経験でも、研修制度が整っているクリニックであれば、徐々にスキルを習得できます。専門性を深めたい方には、キャリアアップの機会にもなります。
メリットとデメリット
メリット
- 一般的なクリニックより給与が高い
- 専門的なスキルが身につく
- 日勤中心で夜勤がない
- 病院よりも患者様との距離が近く、継続的な関わりができる
デメリット
- 同じ処置の繰り返しが多く、単調に感じることがある
- 透析クリニックは患者様の体調変化が激しく、急変対応が必要
- 専門分野以外のスキルは身につきにくい
- 患者様の訴えが多く、精神的に疲れることもある
専門クリニックは、「特定の分野を極めたい」「専門性を高めたい」という方に向いています。一方で、幅広い看護経験を積みたい方には物足りないかもしれません。
都市部のクリニック
地域による年収差:30万円〜100万円以上
クリニックの給与水準は、地域によって大きな差があります。厚生労働省の統計によると、東京都・神奈川県・愛知県・大阪府など都市部のクリニックでは、地方と比べて年収が30万円以上高い求人が多く見られます。
都市部が高収入な理由
- 人件費の相場が高い(物価・生活費が高いため)
- 美容クリニックや自由診療系の施設が集中している
- 患者数が多く、クリニックの収益性が高い
- 優秀な人材を確保するための競争が激しい
特に、東京23区内や横浜、名古屋、大阪市内などの中心部では、一般的な内科・整形外科クリニックでも年収400万円以上の求人が比較的見つかりやすくなります。
地方でも高収入を狙える分野
一方で、地方でも透析クリニックや整形外科など、一定の需要がある専門分野であれば、年収400万円台の求人も存在します。ただし、美容クリニックや自由診療系は都市集中型であるため、地方では選択肢そのものが限られることが多いでしょう。
都市部で働くメリットとデメリット
メリット
- 給与水準が高い
- 求人数が多く、選択肢が豊富
- 美容クリニックなど高収入の職場が多い
- 研修や勉強会の機会が豊富
デメリット
- 生活費(家賃・物価)が高い
- 通勤時間が長くなりがち
- 競争が激しく、求められるレベルも高い
都市部への転職を検討する際は、給与だけでなく、生活費や通勤時間も含めた総合的な判断が必要です。
今の職場でも可能?収入を上げる具体的な方法
「転職せずに、今の職場で収入を上げたい」と考える看護師も多いでしょう。また、転職を検討している方も、収入を上げる方法を知っておくことで、より戦略的なキャリア選択ができます。
この章では、クリニック内での昇給や手当加算、転職時の交渉術、副業の活用など、収入を上げるための現実的な方法をご紹介します。
資格手当(認定看護師・専門看護師)の取得
手当相場:月5,000円〜15,000円
クリニックによっては、認定看護師や専門看護師、その他の専門資格を持つ職員に資格手当を支給している場合があります。月5,000〜15,000円程度の手当であっても、年間にすれば6〜18万円の収入アップになります。
クリニックで評価されやすい資格
すべての認定看護師資格がクリニックで評価されるわけではありません。実務と関連性が高い資格ほど評価されやすい傾向があります。
- 糖尿病看護認定看護師: 内科クリニックで生活指導や療養支援に活かせる
- 皮膚・排泄ケア認定看護師: 整形外科や在宅支援クリニックで需要がある
- 感染管理認定看護師: すべてのクリニックで感染対策の中心的役割を担える
- 美容系の民間資格: 美容クリニックでは美容皮膚科学会認定看護師などが評価される
資格取得には時間と費用がかかりますが、キャリアアップと収入アップの両方を実現できる有効な手段です。
資格手当の有無を事前に確認する
すべてのクリニックが資格手当を支給しているわけではありません。転職前に求人情報や面接で「認定看護師の資格手当はありますか」と確認しましょう。また、資格取得を支援してくれる制度(研修費補助、勤務調整など)があるかも重要なポイントです。
クリニック内での昇進(主任など)
役職手当相場:月5,000円〜20,000円
小規模なクリニックでも、「主任」「チーフ」「リーダー」などの役職が設けられているケースは多く、役職手当として毎月5,000円〜20,000円の加算が行われることがあります。年間にすれば6〜24万円の収入アップです。
クリニックでの昇進の特徴
病院と比べて、クリニックでの昇進は以下のような特徴があります。
- 評価基準が定性的: 勤続年数だけでなく、院長や事務長との信頼関係、患者対応力、チームワークなど、定性的な面が重視される
- ポストが少ない: 少人数組織のため、役職ポストが限られており、昇進のチャンスは多くない
- 責任範囲が広い: 主任になると、看護業務だけでなく、スタッフ教育、シフト管理、物品発注など幅広い業務を任されることが多い
昇進を目指すためのポイント
- 院長やスタッフとの良好な関係を築く
- 業務改善の提案や積極的な行動を示す
- 後輩の指導や新人教育に積極的に関わる
- クリニックの経営視点を持ち、コスト意識を持つ
昇進は、収入アップだけでなく、キャリアの幅を広げる機会にもなります。
転職時の年収交渉や副業の選択
収入を上げる手段は、昇進や資格取得だけではありません。転職時の条件交渉や、副業の活用も有効な方法です。
転職時に年収交渉を行う
交渉による上乗せ幅:月1万円〜3万円(年間12〜36万円)
転職活動を行う際、年収交渉は看護師でも可能です。特に中途採用においては、これまでの経験やスキルに応じて、初任給が提示額より月1〜3万円上乗せされるケースもあります。
年収交渉を成功させる3つのポイント
同業他社の求人水準を把握した上で話す: 「この地域の同規模クリニックでは年収〇〇円が相場のようですが」と、客観的なデータに基づいて交渉する
業務の即戦力となるスキルを具体的に提示する: 「透析の穿刺が可能です」「内視鏡介助の経験が5年あります」など、具体的なスキルをアピール
雇用条件や業務内容とのバランスを考慮した希望額にする: 現実離れした希望額ではなく、+5〜10%程度の妥当な範囲で交渉する
交渉に自信がない場合は転職エージェントを活用
「年収の交渉なんて自分ではできそうにない」と感じる方は、看護師専門の転職エージェントを利用することで、担当者が年収交渉を代行してくれます。プロの交渉力を借りることで、自分で交渉するよりも良い条件を引き出せる可能性が高まります。
副業でスキルアップと収入を両立する
副業による収入:月2万円〜10万円以上
クリニック勤務は夜勤がなく勤務日も固定されているため、時間的な余裕を活かして副業に挑戦しやすいのも特徴です。以下のような副業が、看護師としてのスキルや知識を活かせるものとして人気です。
| 副業ジャンル | 特徴 | 収入目安 |
|---|---|---|
| 健診・予防接種の単発バイト | 休日に1日働くだけで1〜2万円 | 月2〜8万円 |
| 夜勤専従の派遣(週1回) | 1回2.5〜3万円、月4回で10〜12万円 | 月10〜12万円 |
| 訪問看護の単発・スポット勤務 | 時給2,000〜3,000円、柔軟なシフト | 月3〜6万円 |
| 健康・美容系のライター | 医療知識が活かせて報酬単価も高め | 月2〜5万円 |
| 看護学生向けの講師・チューター | 実体験を交えて指導可能 | 月2〜4万円 |
| 地域イベントでの救護スタッフ | 単発・日給ベースでの収入 | 月1〜3万円 |
副業をする際は、本業のクリニックが副業を許可しているか、就業規則を事前に確認することが重要です。また、確定申告が必要になる場合もあるため、税金面も注意しましょう。
副業のメリット
- 収入が増える
- 異なる医療現場を経験できる
- スキルの幅が広がる
- 人脈が広がる
副業のデメリット
- 休日が減り、疲労が蓄積する
- 本業に支障が出る可能性がある
- 確定申告など事務手続きが増える
副業は、「もう少し収入が欲しい」「スキルの幅を広げたい」という方には有効な選択肢ですが、無理のない範囲で行うことが大切です。
補足:給料の優先度が高いなら病院勤務も視野に
もし「とにかく年収を上げたい」「収入が最優先」と考えているなら、クリニックではなく病院勤務を視野に入れるのも一つの選択肢です。
日本看護協会『2024年 病院看護実態調査報告書』によると、勤続10年・非管理職の看護師の平均月収(総支給額)は以下のとおりです。
| 施設種別 | 月収(総支給) | 想定手取り(月) |
|---|---|---|
| 国立病院 | 345,670円 | 約27.6万円 |
| 公立病院 | 344,251円 | 約27.5万円 |
| 医療法人 | 321,891円 | 約25.7万円 |
| 個人診療所(クリニック) | 305,568円 | 約24.4万円 |
このように、夜勤手当や賞与制度が整っている病院では、クリニックより年収が50〜100万円以上高くなるケースも珍しくありません。
ただし、病院勤務は夜勤や交替制勤務など身体的負担も大きくなりがちです。収入の高さと働きやすさ、どちらを重視するかを見極めて選択することが大切です。
失敗しない!給料の高い優良クリニック求人の見つけ方
数ある転職サイトのなかから、以下を基準に、「利用者からの満足度の高い看護師向け転職サイト」をピックアップしました。
転職サイト選定基準
- 求人数 …総求人数が多いほど、理想にぴったりの求人を見つけやすい
- 利用者満足度(提案&サポート力) …利用者の口コミをもとにサービスの質を評価。優秀なキャリアアドバイザーに担当してもらえれば、理想の職場を提案&手厚いサポートが期待できる
利用者の総合評価順にランキング形式でまとめると、おすすめの転職サイトは、以下のとおりとなりました。
| 転職サイト | 求人数|総合満足度 |
|---|---|
![]() 1位: 看護roo! | 22万件以上(2025年7月15日時点)|◎4.3 利用者満足度96.3%、看護師さんからの人気が高い転職サイト。 細かい条件で求人が探しやすく、面接対策&サポートも手厚い。 |
![]() 2位: レバウェル看護 | 約14万件|○4.1 総求人数トップレベル!累計40万人以上の利用者がいる転職サイト。 LINEで最新の求人情報が得られるなど、気軽に転職活動ができる |
![]() 3位: マイナビ看護師 | 約7.9万件|○3.8 求職者のペースに合わせたサポートが強み。 全国22箇所に相談会場があり、地方在住者も来社相談しやすい |
※求人数2025年4月22日更新
この記事では3サイトに厳選しています。より詳しく知りたい方は、『看護師723人が選ぶ転職サイトおすすめランキング』を参考にしてください。
1位.看護roo! | 看護師さん利用者満足度が評判!
『看護roo!』は、転職経験のある看護師さんから最も選ばれている、人気No1の看護師転職サイトです。
登録者のみが閲覧・応募できる非公開求人も多数保有しています。
看護roo!の特徴
- 利用者満足度96.3%
- 公開求人22万件以上(2025年7月15日時点)+非公開求人も多数
- 面接同行や選考対策など手厚いサポート
さらに、細かい条件を組み合わせて仕事探しができるため、希望にぴったりの求人を見つけやすくなるでしょう。
『看護roo!』は、30年以上に渡る転職支援実績のある株式会社クイック(東証一部上場企業)が運営するサービスです。
信頼と実績も十分で、面接時に希望者には専任の女性スタッフが同行してくれるなど、きめ細かいサポートが魅力といえます。
こんな看護師さんにおすすめ
- みんなが使っていて、実績豊富な人気のサイトを利用したい
- 給与や条件、人間関係などが良い職場情報を知りたい
- はじめての転職で不安なのでプロに相談したい
2位.レバウェル看護(旧 看護のお仕事) | 求人多数で選択肢の幅が広い!
『レバウェル看護(旧 看護のお仕事)』は、求人数がトップレベルの転職サイトです。キャリアアドバイザーが、病院や施設を訪問して直接取材を行っており、現場のリアルな情報を提供しています。レバウェル看護(旧 看護のお仕事)の特徴
- 累計利用者数40万人以上
- 友だちに勧めたい転職サイトランキングNo.1
- 総求人数は135,763件と転職サイトトップレベル
「人間関係や施設の雰囲気はどうか」「子育て中の看護師が働きやすい環境か」などの情報を踏まえて、最適な提案をしてもらえるのもポイントです。
また、LINEで「新着求人情報が届く」「担当のキャリアアドバイザーに相談できる」など、気軽に転職活動ができる点も魅力的といえます。
こんな看護師さんにおすすめ
- できるだけたくさん求人が見たい
- 職場の雰囲気や内部情報を知りたい
- 気軽に求人探しがしたい
3位.マイナビ看護師|ペースに合わせて転職できる
『マイナビ看護師』は、大手人材企業マイナビが運営する定番の転職サイトです。数週間で内定を目指す「スピード転職」や、数ヶ月に渡ってゆっくりと職場を探す「じっくり転職」など、求職者の都合に合わせたスピード感でのサポートをしてくれます。
マイナビ看護師の特徴
- 看護師認知度5年連続No1の定番転職サイト
- 求人数は6万件以上
- 大手マイナビならではの情報ネットワークも強み
加えて、面接の日程調整なども、キャリアアドバイザーが代行してくれるサービスも提供しています。自分のペースで転職活動を進めるのに最適な転職サイトといえるでしょう。
こんな看護師さんにおすすめ
- なるべく早く次の仕事を見つけたい
- 数ヶ月かけて余裕を持って転職活動したい
【本音で回答】先輩看護師に聞く!クリニック勤務の働きがいと悩みQ&A
クリニックへの転職を考える際、求人情報や一般的なメリット・デメリットだけでは分からない「実際のところどうなの?」という疑問や不安があるのではないでしょうか。このセクションでは、実際にクリニックで働く先輩看護師たちの生の声をもとに、よく聞かれる悩みや疑問に本音でお答えします。
転職前に知っておきたいリアルな情報を、包み隠さずお伝えします。これらの答えを参考に、クリニック勤務が自分に合っているかどうか、冷静に判断してください。
Q1. 少人数だからこそ…人間関係で気をつけるべきことは?
A. 少人数ゆえに密な人間関係が築ける反面、一度こじれると逃げ場がないのも事実です。ただし、事前の見極めと、入職後の心がけで良好な関係を維持できます。
クリニックの人間関係は、病院とは大きく異なります。スタッフが数名から十数名程度の小規模な職場では、毎日同じメンバーと顔を合わせ、密なコミュニケーションを取ることになります。これは、アットホームで働きやすいという利点がある一方、相性が合わなかった場合に逃げ場がないというリスクも孕んでいます。
実際にクリニックで働く看護師の声
「前職の大病院では、合わない人がいても別のフロアや別の勤務帯で顔を合わせずに済みましたが、クリニックではそうはいきません。毎日同じメンバーと一日中一緒なので、人間関係が悪化すると本当に辛いです。ただ、逆に言えば、良い関係が築ければ家族のような温かい雰囲気で働けます。」(内科クリニック勤務・看護師歴8年)
「院長先生の人柄が職場の雰囲気を大きく左右します。スタッフを大切にしてくれる院長のもとでは、看護師同士も自然と協力的な関係になります。面接の時に院長の人柄をしっかり見極めることが大切だと実感しました。」(整形外科クリニック勤務・看護師歴5年)
人間関係で失敗しないための事前チェックポイント
転職前に以下の点を確認することで、人間関係のトラブルを避けられる可能性が高まります。
見学時のスタッフの表情と雰囲気: 面接や見学の際、スタッフ同士がどんな表情で働いているか、会話の雰囲気はどうかを観察しましょう。ピリピリした空気や、誰も笑顔がない職場は要注意です。
スタッフの定着率: 面接で「スタッフの平均勤続年数」や「最近の離職状況」を質問してみましょう。頻繁に人が辞めているクリニックは、人間関係に問題がある可能性があります。
院長の人柄と経営方針: 院長がスタッフをどう扱っているか、面接や見学の際の態度から読み取りましょう。威圧的、横柄、スタッフに対して冷たい態度が見られる場合は危険信号です。
入職後に良好な関係を築くための心がけ
積極的なコミュニケーション: 少人数だからこそ、挨拶や日常会話を大切にしましょう。自分から声をかけ、相手に関心を持つ姿勢が信頼関係を築きます。
謙虚に学ぶ姿勢: たとえ経験豊富でも、そのクリニックのやり方や文化を尊重し、謙虚に学ぶ姿勢を示すことが重要です。「前の職場ではこうだった」と押し付けるのは避けましょう。
報告・連絡・相談の徹底: 少人数だからこそ、情報共有が重要です。何か気づいたことや困ったことがあれば、すぐに共有する習慣をつけましょう。
適度な距離感を保つ: 密な関係になりやすいからこそ、プライベートと仕事の境界線を意識することも大切です。過度に踏み込みすぎず、適度な距離感を保ちましょう。
それでも合わなかった場合の対処法
もし入職後に人間関係が合わないと感じた場合、無理に我慢し続ける必要はありません。心身の健康を損なう前に、転職を検討することも一つの選択肢です。ただし、次は同じ失敗を繰り返さないよう、事前の見極めをより慎重に行いましょう。
Q2. スキルが偏って、将来病院に戻れなくなるのが不安です。
A. スキルが偏るのは事実ですが、工夫次第でキャリアの幅を広げることは可能です。また、「病院に戻る」以外のキャリアパスも視野に入れることで、不安は軽減されます。
クリニック勤務では、急変対応や高度な医療処置の機会が減り、採血・点滴・問診・生活指導といった限られた業務が中心になります。このため、「将来、もし病院に戻りたくなった時に、スキルが通用しなくなるのでは」という不安を抱く方は少なくありません。
実際にクリニックで働く看護師の声
「クリニック勤務5年目ですが、確かに急性期の対応力は落ちたと感じます。ただ、患者様一人ひとりとじっくり向き合うコミュニケーション力や、生活習慣病の継続的な管理スキルは格段に向上しました。病院に戻ることは今は考えていませんが、もし戻るなら慢性期や外来が向いていると思います。」(内科クリニック勤務・看護師歴10年)
「最初は不安でしたが、クリニックで働きながら週1回だけ派遣で病院の夜勤をしています。これで臨床感覚を維持しながら、収入も増やせて一石二鳥です。」(皮膚科クリニック勤務・看護師歴7年)
スキルを維持・向上させるための具体策
クリニック勤務でもスキルを偏らせない工夫はいくつかあります。
単発・派遣で病院勤務を並行する: クリニックの常勤として働きながら、週1回や月数回、派遣で病院の夜勤や外来を経験することで、臨床感覚を維持できます。
研修や勉強会に積極的に参加する: 院外の研修やセミナーに参加し、最新の医療知識や技術を学び続けることで、スキルの陳腐化を防げます。院長に相談し、研修参加を支援してもらえるクリニックを選ぶことも重要です。
専門性を深める方向にシフトする: クリニックでの経験を活かし、糖尿病療養指導士や認定看護師など、専門資格の取得を目指すことで、キャリアの幅を広げられます。
オンライン講座や医療系動画で学習する: 最近は、オンラインで学べる看護師向けの講座や、実践的な手技を学べる動画コンテンツも充実しています。自己学習でスキルを補完することも可能です。
「病院に戻る」以外のキャリアパスも視野に入れる
そもそも、「いつか病院に戻らなければならない」という前提を見直すことも一つの考え方です。クリニック勤務で培ったスキルを活かせるキャリアパスは、病院以外にも多く存在します。
訪問看護ステーション: クリニックで培った慢性疾患管理や患者様との信頼関係構築のスキルは、訪問看護で大いに活かせます。
健診センター・保健指導: 予防医療や健康指導のスキルを活かし、健診業務や特定保健指導の仕事に進むこともできます。
産業看護師: 企業の医務室で働く産業看護師は、クリニックでの問診や健康相談の経験が直結します。
医療系企業(CRA、医療機器メーカーなど): 臨床経験を活かしながら、企業で働くキャリアもあります。
クリニック勤務は「キャリアの終着点」ではなく、「新しいキャリアの入り口」にもなり得ます。視野を広げることで、不安は前向きな可能性に変わります。
それでも病院に戻りたい場合
もし数年後に病院に戻りたくなった場合でも、クリニック経験が全く評価されないわけではありません。外来部門、慢性期病棟、地域包括ケア病棟などでは、クリニックで培った患者様との関わり方や生活指導のスキルが高く評価されます。急性期の最前線に戻るのは難しくても、医療現場で活躍する道は残されています。
Q3. 給料は低いけど、それに見合う「働きやすさ」はありますか?
A. 給料の低さは事実ですが、それを補って余りある「時間的・精神的な余裕」を得られるかどうかは、職場選びとあなたの価値観次第です。
クリニック勤務の給料は、病院勤務と比べて月収で5〜10万円程度低くなるのが一般的です。特に夜勤手当がないため、夜勤ありの病院勤務と比べると年収で100万円近い差が出ることもあります。この現実を前に、「本当にクリニックに転職して良いのだろうか」と悩む方は多いでしょう。
実際にクリニックで働く看護師の声
「病院時代は年収500万円ありましたが、クリニックに転職して400万円になりました。確かに収入は減りましたが、夜勤がなくなり規則正しい生活ができるようになったこと、土日休みで家族との時間が増えたことを考えると、私にとっては正解でした。お金だけでは測れない価値があると感じています。」(耳鼻科クリニック勤務・看護師歴12年)
「正直、給料の低さは覚悟していましたが、想像以上に厳しいです。独身で一人暮らしだと、生活が少し苦しいと感じることもあります。ただ、残業がほぼゼロで定時で帰れること、有給が取りやすいことは本当にありがたいです。副業やダブルワークを検討しています。」(整形外科クリニック勤務・看護師歴4年)
給料の低さを補う「働きやすさ」とは
クリニック勤務の「働きやすさ」として、以下の点が挙げられます。これらがあなたにとって給料の低さを補うほど価値があるかどうかが、判断の分かれ目です。
時間的な余裕
- 夜勤がなく、規則正しい生活リズムが保てる
- 残業が少なく、定時で帰れることが多い
- 土日祝日が休みで、家族や友人との予定が立てやすい
- 有給休暇が取りやすい
精神的な余裕
- 急変対応や生死に関わる緊張感が少ない
- 患者様一人ひとりとじっくり向き合える
- 複雑な人間関係や組織のしがらみが少ない
- 業務量が適度で、心身の負担が軽い
生活の質の向上
- 子育てや介護と両立しやすい
- 趣味や自己啓発に時間を使える
- 心身の健康を維持しやすい
- ワークライフバランスが実現できる
給料の低さをカバーする工夫
どうしても収入面が不安な場合、以下のような工夫で補うことができます。
単発・派遣の掛け持ち: クリニックの休日に、健診や予防接種、イベントナースなどの単発バイトをすることで収入を増やせます。
ダブルワーク: 夜勤専従の派遣や、週1回の訪問看護など、別の仕事を掛け持ちする看護師も増えています。
配偶者の扶養内で働く: 既婚者の場合、扶養範囲内で働くことで税金や社会保険料を抑え、世帯全体の手取りを最適化することもできます。
生活コストの見直し: クリニック転職を機に、固定費や生活費を見直し、無駄な支出を削減することで、収入減をカバーできます。
お金と時間、どちらを優先するか
結局のところ、クリニック転職が正解かどうかは、あなたが「お金」と「時間・健康・生活の質」のどちらを優先するかによります。
若いうちにしっかり稼ぎたい、貯金を増やしたい、キャリアアップしたいという方には、病院勤務の方が向いているかもしれません。一方で、心身の健康を優先したい、家族との時間を大切にしたい、ゆとりある生活を送りたいという方には、多少給料が下がってもクリニック勤務の価値は十分にあります。
「働きやすさ」は人によって定義が異なります。自分にとって何が最も大切かを明確にした上で、クリニック転職を判断してください。
まとめ
元人事部で看護師の転職にも詳しい筆者が、クリニック看護師の給料事情について分かりやすく解説しました。
クリニック看護師の給料は、病院などに勤務する場合と比べて安いケースがほとんどです。しかし、土日祝日が休みになる、夜勤や残業が少ないなどのメリットもあります。
病院勤務よりもゆとりを持って働きたい方は、ぜひクリニックへの転職を視野に入れてみてください。
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