「介護職で入職したばかりだけど、辞めたい…」
「すぐ辞めて、大丈夫なのかな?」
とお考えですね。
結論から言うと、すぐに辞めるのは極力おすすめしません。理由は以下の通りです。
- スキルが身に付かないから
- 辞め癖がついてしまうから
- 失業保険を受け取れない可能性があるから
- 再就職が難しくブラックな職場に入りやすいから
この記事では元介護職で転職コンサルタントの私が、上記の転職事情を詳しく解説していきます。
ただどうしても今の職場は続けられそうにないという方も多いと思いますので、辞める前に試してほしいことも併せて紹介します。
この記事を読めば、職場をすぐ辞める前に知っておくべきことが分かるでしょう。
1.介護職をすぐ辞めるのは避けるべき4つの理由
この章では、介護職をすぐ辞めるのは避けるべき4つの理由をお伝えします。介護職は離職率の高い業界であることは事実ですが、すぐ辞めることはデメリットが多くリスクも高いため、注意が必要です。
早速ご説明します。
1-1.スキルが身に付かないから
一つ目のリスクは、スキルが身につかないことです。
入職直後に任される仕事は、「利用者さんの名前を覚える」「買い物・食事準備などの生活援助」「衣類の着脱などの手伝い(先輩職員のサポート)」などで、介護職固有のスキルを身につけるには至りません。
介護職を続けたときに身に付くスキルの例
- 基本的な介助技術(入浴介助・食事介助・排泄介助)
- 利用者さんやそのご家族とのコミュニケーションスキル
- 介護過程(アセスメント(情報収集)→計画の立案(作成)→介護の実践→評価)
- 感染症対策・衛生管理
- 事故発生防止
- 緊急時対応
- 終末期ケア
→すぐ辞めるとこれらのスキルが全く身についてない状態で、次の仕事を探さないといけなくなる
そのまま辞めてしまうと、何一つスキルがついていない状態で転職市場に出ることになり、同じ介護業界で転職するとしても完全未経験として扱われます。
また、別の業界に転職するとしても、前職の職務経歴に関するアピールができず、転職活動時に困ります。このように、何も身に付かないまま時間だけを無駄にしてしまう可能性が高いのです。
1-2.辞め癖がついてしまうから
仕事をすぐ辞める二つ目のリスクとして、辞め癖がついてしまうことが挙げられます。
辞め癖は単なる根性論ではなく、以下のようなメカニズムで出来上がってしまいます。
- すぐ退職すると、退職に至った不満や原因が分からない
- 次の職場選びの基準を明確にできない
- 原因分析ができないまま同じような職場に転職してしまう
- またすぐ辞めてしまう
このように、負のループに突入してしまい、長く仕事が続けられなくなってしまうのです。
辞め癖がつかないようにするためには、今の仕事で一定期間続けてみて、何が不満なのかを明確にする必要があります。
1-3.失業保険を受け取れない可能性があるから
仕事をすぐ辞めてしまうと、失業保険を受け取れない可能性が高いです。短期間で仕事を辞めてしまい、かつ前職の離職時に失業保険を受給していると、今回の退職では失業保険の受給要件に当てはまりません。
失業保険を受け取る条件【自己都合退職】
- 失業状態である(労働する意思と能力があり、転職活動中である)
- 離職日以前の2年間に雇用保険加入期間が通算12カ月以上ある(自己都合退職の場合)
次の仕事を決めずに退職した場合、転職活動中の生活費に困ることもあるでしょう。
上記条件に該当しない場合、失業保険を受け取れないことは事前に認識しておく必要があります。
1-4.再就職が難しく、ブラックな職場に入職しやすいから
仕事をすぐに辞めた場合、再就職が難しくなり、次の職場がブラック企業になりやすいです。
採用担当者は「採用するからには長く働いてもらいたい」と考えているため、転職回数が多いと早期離職を懸念して採用に躊躇します。結果、なかなか転職できません。
転職回数を気にしない職場もありますが、そういった所は「誰でもいいので入ってほしい」と考えている施設がほとんどです。常に人手不足などブラックな傾向があり、入職後に辛い思いをする可能性が高いです。
このように、仕事をすぐ辞めると再就職が難しく、かつブラックな職場に入職しやすくなってしまいます。
ここまで、介護職をすぐ辞めるのは避けるべき理由をお伝えしました。すぐ辞めることはデメリットが非常に多いです。そこで次章では、介護職が入職後すぐ仕事を辞めたいと思ったとき、続けるために試してほしいことを紹介します。
2.すぐ辞める前に!介護職が職場を続けるために試してほしいこと
この章では、介護職が入職してすぐ辞めたいと感じたときに、職場を続けるために試してほしいことを紹介します。
せっかく入職した職場をすぐ辞めないためにも、以下の内容をまず試してみてください。
それでは、ご紹介します。
2-1.期間を決めて、まずその日まで頑張る
職場を今すぐ辞めたいと思ったとき、例えばまず3ヶ月など期間を決めて、その日まで頑張ってみることがおすすめです。
仕事に限らず、辛いと感じることでも終わりがあると思えば頑張れるという人はとても多いです。自分で決めた期間を頑張って乗り越えれば自信につながりますし、その間に多くの収穫があるでしょう。
決めた期間を頑張ってみても、どうしても辛くてこれ以上続けることが難しいと感じたなら、改めて退職を検討してみてください。もし迷うようであれば、無理して退職を決めるのではなく、再度期間を決めて頑張ってみる、ということも一つの手段です。
2-2.ストレスを溜め込まない癖づけをする
仕事が辛い中で職場を続けるためには、ストレスを溜め込まない癖づけが大切です。
新しい仕事を始めた直後は、仕事を覚えることに加え、職場環境や人間関係に慣れることも仕事の一つです。知らず知らずのうちに無理がたたってしまうと、辞めたいと感じやすくなってしまいます。
ストレスや疲れを溜めないためのコツ(例)
- 規則正しい生活を心がける
- お風呂にしっかり浸かり、十分な睡眠をとる
- 自分に合ったストレス解消法を見つける(運動・外出・旅行・映画鑑賞など)
- 家族や友人とコミュニケーションを取る
また、入職直後はできないことが多くて当たり前です。早く仕事を覚えようという姿勢は大切ですが、できていないことに目を向けて自信を失っていては、本末転倒です。
仕事ができない、慣れないことにストレスを感じる人は、「最初はできなくて当たり前」「8割できていれば良い」と捉え、心に余裕を持たせて働くことをおすすめします。
2-3.同僚とコミュニケーションを取ってみる
せっかく入職した職場ですから、同僚とコミュニケーションを取ってみると良いでしょう。
一緒に働く人と積極的にコミュニケーションを取ることで、業務が円滑に進みやすくなり、仕事を教えてもらいやすく、孤独感を感じにくくなります。
コミュニケーションはどこの職場に行っても求められます。万が一今の職場を辞めることになっても、次の職場で必ず役に立つスキルであるため、積極的に伸ばしていきましょう。
何を話したら良いかわからないという方は、まず「今日は忙しいですね」くらいで構いません。話しかけるハードルが高いのであれば、自分から挨拶をするだけでも良いでしょう。
良好な関係を築きたいという意思を示す意味でも、積極的に自分から声をかけてみてください。
2-4.不満や疑問に感じる点があれば上司に伝えてみる
仕事を続ける中で、不満や疑問に感じる点があれば、上司に伝えてみても良いでしょう。問題点などをきちんと伝えることは、仕事を続けていくうえでとても重要だからです。
上司に伝えると良い要望例(疑問点など)
- 〇〇さんの介助に関する疑問点や提案
- 業務が辛いと感じることについての相談
- ◯◯の業務についてアドバイスが欲しい
このように、毎日の仕事の中で気になる点があれば、確認やアドバイスを求めてみることがおすすめです。
しかし、これらを伝える際は、自分に与えられた業務をしっかりと遂行していることが前提です。まず自分の役割をまっとうし、施設へ要望を伝えるようにしましょう。
3.介護職が仕事をすぐ辞める方法
この章では、「やはりどうしてもキツくて仕事をすぐ辞めたい」と思った場合に、仕事をすぐ辞める方法をお伝えします。最短2週間で退職が可能ですが、そこには注意点も存在します。
入職してすぐの退職なら、退職日までの2週間を欠勤扱いにしてもらう
入職してすぐに退職の場合、退職日までの2週間を欠勤扱いにしてもらいましょう。
失業保険の受給対象(退職日以前の2年間に雇用保険加入期間が12ヶ月以上)の方は、すぐ辞めてもお金に困ることはありませんが、前職の退職時に受け取っているなど、受給条件に該当しない人は、退職直後のアルバイト・パートなどを見つけてからの退職がおすすめです。
正社員など期間に定めがない雇用契約については、民法第627条により、以下のように定められています。
(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。出典:民法(e-Gov)
つまり、「退職したい」と申し入れをした日から最速で2週間を経過した日が正式な退社日となるものの、欠勤扱いにすることで、これ以上出社する必要はなくなります。
【契約社員・派遣社員など期間に定めのある雇用契約の場合】
契約社員や派遣社員などの定めのある雇用契約の場合、原則として契約期間途中での退職は不可です。ただし、やむを得ない理由がある場合は退職が可能となります。
実際に、民法第628条によると以下のとおり規定されています。
(やむを得ない事由による雇用の解除)
第六百二十八条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。出典:民法(e-Gov)
「やむを得ない理由」の内容に関する法律上の決まりはないため、実務上は施設の合意があれば退職が可能です。
後日職場に行かなくてもいいように事前準備が大切
退職届を提出して、そのまま出社をしないつもりであれば、後日職場に出向かなくても良いように、事前準備を抜かりなくおこないましょう。
施設を辞める際は、貸与物の返却や、書類の受け取りが発生します。最終出社日に対応を忘れると、後日施設に出向くことになってしまうため注意が必要です。
退職時の返却物
- 施設・施設からの貸与物
…社員証、名札、仕事着、備品など - 健康保険証
…退職時点で貸与されている場合は要返却
退職時の受取物
- 年金手帳
- 雇用保険被保険者証
…次の職場に提出が必要 - 源泉徴収票
…転職先での年末調整時または確定申告時に提出が必要 - 健康保険被保険者資格喪失証明書
…国民健康保険への加入手続で必要 - 厚生年金基金加入員証
…厚生年金基金に加入していた場合のみ
注意!無断欠勤のまま音信不通で退職はNG
施設を今すぐ辞めたいからと言って、無断欠勤のまま音信不通で消息を絶ってはいけません。
なぜなら、以下のようなリスクがあるからです。
無駄欠勤・音信不通のリスク
- 施設の人が自宅に来る可能性がある
- 身元保証人に連絡が入る(連絡がつかない場合、捜索願が出されることも)
- 離職票に「重責解雇」と記載され、転職時に不利になる
このように、無断欠勤や音信不通は想像以上に面倒が多いため、職場に必ず連絡をしたうえで退職するようにしましょう。
介護職をすぐ辞めた人の口コミ
ネット上に投稿されている介護職経験者の口コミを紹介します。まずは、介護職をすぐに退職した人の口コミを見てみましょう。
人員配置基準の見直しはぜったい必要なんじゃないかと思うよ。時間に追われて介護するのは精神的にほんと辛かったもん。結果たった3ヶ月で介護職を辞めたし!
2016/3/1、出典:Twitter
介護職の仕事自体の辛さや、人手不足による仕事の大変さから、すぐに仕事を辞めてしまったという声が聞かれました。
また、仕事自体はうまくいっていたものの、上司からのパワハラが原因ですぐ退職したという方もいらっしゃいます。
介護職を3ヶ月で辞めた原因はパワハラでした。
私が1ヶ月目には要領良く業務を熟せたことで、上長が私の働きをダシに効率の悪い同僚達をいびり出した。
その結果、人間関係が絶望的になり精神病んでドロップアウト。
給料が良ければ他人をいじめるようなフラストレーションも減るだろうに。
2018/9/13、出典:Twitter
今年初めて介護職に就いて、パワハラ受けて1ヶ月で辞めたけどその時に初任者はとったの
2021/9/18、出典:Twitter
仕事に魅力を感じていたとしても、職場環境が悪いと働き続けることは難しいでしょう。
以下の方のように、人間関係の悪さから施設を1ヶ月半で辞めたものの、次の施設では3年続いているという方もいらっしゃいます。
辞めたいと言ったら、他へ行っても続かないでしょ的な………ええ、お陰様でそこは1ヶ月半で辞めたけど、今の施設は無事1ヶ月半を超え、更には今年の5月で3年目を迎える位に続いてますけどね
2021/2/3、出典:Twitter
介護職という仕事に魅力を感じている場合、次の職場で前職を辞めた理由が解消されれば、仕事を続けられることがわかります。
介護職に未経験で入職してさまざまな面で「想像以上に厳しい…」と感じる人は多いです。続けることで仕事ができるようになる人もいますが、どうしても厳しいと感じるときは退職しても良いでしょう。
さいごに
介護職をすぐ辞める場合のデメリットやリスク、その対処法についてお伝えしました。
すぐ辞めるのは必ずしも悪いことではなく、やむを得ないこともあるでしょう。ただ、短期間での退職はデメリットやリスクが多いため、まずは可能な限り続けてみることをおすすめしています。
この記事を参考に、ぜひ最善の選択をしてください。もし「介護職はどうしても無理そうだから、別の仕事を探したい」というのであれば『介護職からの転職におすすめの仕事16選!介護経験の強みを活かしてキャリアチェンジ』を参考にしながら検討してみてください。
あなたの今後の人生が発展するよう応援しています。
介護そのものの大変さも辞めた理由だけど、「まだ子供のオムツも変えたことないのに、なんで老人のオムツ変えなきゃいけないんだろう…」と空虚感を覚えたのも理由の一つ。