第一部セミナーレポート

発想力を上げる3つの視点:比べる、ハカる、空間で観る

K.I.T.(金沢工業大学)虎ノ門大学院 主任教授 三谷宏治 氏

まず、三谷氏は19年間のコンサルティング経験で気づいた問題として、以下の3つを提示されました。

三谷宏治 氏

  1. 企業活動は個人やチームでの意思決定の積み重ねであるが、 そこには圧倒的な思考・議論の非効率が存在している。枝葉末節に入りこんでいるか、 重要だと思っているものがずれているために、大事なものにフォーカスするという重要思考ができていない。
  2. 圧倒的な発想力の不足。問題も解決策も「そこにある」のに、それが何かわからない。
  3. 発展的な議論が苦手。ディベートの得意不得意の問題ではなく、より発展的な答えを出すための議論が苦手。

これらをご説明いただいた上で、発想力を上げるための視点と思考法について、 実際に参加者が手を動かす演習を多数交えてのご講演をいただきました。

グルーピングが凡庸を招く

発想法の決定版として知られるKJ法は発散と収束による発見の方法論ですが、 これは相当の訓練を積まないと失敗します。収束のためのグルーピングをしていく中で、 共通部分ばかりに目が行って最大公約数的なもの、丸まったものを作ってしまいがちだからです。
一方、三谷氏が提案する発想法では、発散(=発見)の後に、一つ選択をします。 そして、集中してその本質を追究し、真実を見出して組み合わることで、新たなアイデアに結びつけます。

しかし、常識が発見を、恐怖が選択を、満足が探求を阻害します。

知識・経験・常識が発見を阻害する

ヒトは錯覚の問題に一度引っ掛かると、二度目からは同様の図形に対して何も考えず同じ答えを期待します。 しかし、現実にそうだとは限りません。これが、知識・経験・常識が身を滅ぼす、発見を阻害するということです。

更に、錯覚の問題をじーっと眺めて悩んでいても仕方がありません。怪しい、おかしいということが分かったならば、 次にすべきは実際にハカってみることです。疑わしきはハカれです。

1.発見演習:夜景写真の都市

夜景写真から都市を推定する課題では、別の都市の写真を並べてみることで、特徴が一目瞭然となることを示し、 発見における比べることの有効性をご説明いただきました。

2.探究演習:グラスの形はなぜ円柱か

グラスの形は誰にとってどう便利なのか、なぜこの形が良いのかを探究する課題を通して、 物事の本質を探究するプロセスをご説明いただきました。

3.総合演習:紙コップのカタチ

ここまでのまとめとして、紙コップ一人2個を配布し、紙コップの形の秘密を探究する課題が実施されました。 疑わしい部分を発見したら次に何をするべきかを、参加者の皆様に実践を通して体験していただきました。

「発想力とは、比べるとか、ハカるということで真実を見出す発見力と、探究心です。
面白い、で終わってはいけません。面白いものはめったにないのですから、 座って悩まず、動いて情報を収集するなりして考え、探究することなくして、 イノベーションはないのです」とまとめていただきました。

参考情報:

※三谷宏治 OFFICIAL WEBSITE → http://www.mitani3.com

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デザイン思考2.0にむけて:アイデアのイノベーションから事業のイノベーションへ

慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科 教授 奥出直人 氏

奥出氏からは、デザイン思考の適用範囲を経営・事業戦略的な領域や、事業化の方法論にまで広げた 「デザイン思考2.0」の考えについて、ご講演をいただきました。

デザイン思考2.0とは

奥出直人 氏 デザイン思考は、デザインコンサルティング会社のIDEOが提起した開発アプローチです。デザイン思考の アプローチにおいては、まずフィールドワークを行い、観察からアイデアを無数に作ります。 そして、アイデアを元にプロトタイプを作っては修正する試行錯誤を繰り返すことで、顧客が求める経験を 提供するモノづくりを実現します。

しかし従来、デザインの領域が、R&Dに必要な戦略と戦術の策定主体であることはめったにありませんでした。 どのような領域でどのようなイノベーションを生み出すのか、という戦略的な思考や、イノベーションを具体的な プロダクトやサービスとして事業化のための方法論に、デザイン思考は関与してきませんでした。

「デザイン思考2.0」は、イノベーションのための戦術にすぎなかったデザイン思考の適用範囲を、 このような戦略的な思考や事業化ための方法論の領域にまで広げたものです。

デザイン思考2.0の構成

フェーズ1:導入(デザイン思考戦略)
新しい分野・商品を想定し、自社の技術や人材といった資源を確認し、事業課題・経営判断を共有し、 新規事業の戦略を練ります。

  • 顧客ニーズの多様化、高い技術開発コスト、短い製品ライフサイクル、 産業技術の高度化といった特徴を持つ現在の成熟社会においては、自社技術に固執せず、異文化の技術や アイデアを有機的に結びつけ、価値を創造するオープンイノベーションが必要になってきます。
  • オープンイノベーションにおいては、何を作るのか、自社技術でどこまで対応可能か、 何を自社のコアコンピタンスに据え、どこを標準化しどこをオープンにするのか、そもそも自社は オープンイノベーションに適したセクターなのか、といった判断が重要になります。
  • このオープンイノベーションの考えによって成功した好例が、インテルのCPUです。

フェーズ2:イノベーション(デザイン思考実践)
デザイン思考の実践として組織横断型チームでのイノベーションワークショップを実施し、 イノベーションパートナーを選定します。デザイン思考の実践は、以下の3つの要素から成ります。

  1. Ideation
    (フィールドワークを行い、自分の経験を拡大し、アイデアを出す)
  2. Tinkering
    (アイデアを元にプロトタイプ作っての試行錯誤を繰り返すことで、コンセプトを具体化する)
  3. Collaboration
    (個々の従業員、サプライヤー、顧客、大学、時には競争相手とのコラボレーションにより、 イノベーションに必要な知識を得る。オープンソースソフトウェア・ハードウェアがこの動きを支える)

フェーズ3:事業化(デザイン思考+オープンイノベーション)
組織横断型チームでの事業化ワークショップを実施し、量産型プロトタイプを作成し、新規事業をより 具体化していきます。新しい工作機器の登場により、顧客が実際に手に取ってみることが出来る レベルのプロトタイプを簡単に、安く作成できるようになりました。 プロトタイプを実際に触ったり使ったりすることで、具体的なプロダクトやサービスのイメージを 事業部内外で確認・共有し、事業化につなげます。

サービス領域でのデザインニーズの高まりと、デザイン思考

コミュニケーションインフラの問題は、今までの人間同士のコミュニケーションが問題から、 モノ・人間・環境を含めた全体のコミュニケーションの問題に変わりつつあります。このような時代において、 デザイン思考はどのようなビジネスイノベーションを実現できるでしょうか。

例えば人が介護を行う一連の流れをデザインし、その各プロセスにサービスを提供し、 ビジネスを構築するサービスデザインという考えがあります。これは、コップや端末といった プロダクトをデザインするのではなく、一連の介護の仕組みをデザインすることで、 ビジネスイノベーションを実現します。

経験から変革へ。21世紀の一大市場

例えばヘルスケア産業なら、患者が求めているものは健康であって、医薬品や医療サービスや 病院での経験ではありません。経験そのものではなく、経験の積み上げた結果を求めているのです。 顧客の変革をデザインし、人生を変えるような経験を提供するための小道具としての場所やプロダクトを提供することも、ビジネスイノベーションを実現します。 例えば、スカンディア保険の能力保険は、ビジネスで求められる能力を保証し、能力維持のためのコーチサービスを提供します。また、MMI社は医者の医療ミスを保険金によって補償するのではなく、医療ミスが起こらないように指導し、告訴されないように証拠をそろえるという形で、医師の医療ミスなどのリスクを引き受けます。

デザイン思考をデザインと言われている領域の外に出し、どういう風に世の中をデザインするか、人の行動を変えるかに自分の責任を持てるようになった時に、デザイン思考は事業イノベーションを実現できるのではないでしょうか。

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